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特別な音色

10月24日、野上八幡宮(和歌山県紀美野町)で、清水武志さんのピアノによるジャズコンサートが開かれました。
拝殿の前にYAMAHAのグランドピアノが置かれ、客席は境内の青空の下。椅子に置かれた温かな座布団のお心遣いがありがたかったです。
秋晴れの明るい陽が降り注ぎ、この日は絶好のコンサート日和でした。

私はあまり音楽には詳しくなく、ことにジャズはほぼ未経験です。有名なナンバーすら知らないので、楽しめるのかどうか、少し不安を感じていました。
でも、演奏が始まったとたん、やわらかなピアノの音色と軽快なリズムに、ふわっと気持ちが上がります。
最初は3曲続けての演奏だったのですが、その終盤、不意に強い風が吹き抜け、一斉に境内の大木から大きな葉擦れの音が。そのざわめきに包み込まれるようにピアノの調べが終了。
お祀りされている神々からの拍手とも感じられる、不思議な響きの重なりでした。

野上八幡宮は自然豊かな神社です。境内にはたくさんの野鳥がおり、コンサートの最中にも、ヒヨドリさかんに鳴き交わしていました。
時にそれがピアノの音色と重なって、絶妙な不協和音を醸し出したり、枝を渡る鳥の羽音が調べの後ろで心地よく響き合ったり……。
「ピアノの音って、自然のものと違和感なく、こんなになじむものなんだ」
と、これは大きな発見でした。
客席の近くに飛んできたツマグロヒョウモン蝶、空を流れてゆく雲も、ゆるやかにジャズのリズムとシンクロ。

この日、清水武志さんが演奏されたものは、ほぼすべてがオリジナル曲だとのこと。
中でも『紀伊の音(key note)』では、急峻な岩場に砕ける荒波や、古道の巨木の木もれ日が目の前に広がるような気持ちになりました。
ピアノの音色は、ひとの心に大きな風景を描くことができるのですね。

素晴らしいジャズと自然とのコラボを体感できた野上八幡宮でのコンサート。今まで数ある楽器のひとつでしかなかったピアノですが、これからはその音色が、私にとって特別なものとなりそうです。

チケットをくださったSさん、どうもありがとうございました。

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