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ショートフィルム

私がショートフィルムと出会ったのは、20歳のとき。その日家の近所をブラブラ歩いていたところ、とあるカフェでショートフィルム鑑賞会なるものをやっており、おもしろいもの好きな当時の彼が、入ってみようと意気揚々とし、しぶしぶ私も入ることにした。

お酒を頼み、着席。

少し古びた建物の2階にあり、外観は昭和の喫茶店のように見えたが、内装はおしゃれなバーだった。

お酒のカウンターがあり、確かカシオレを頼んだと思う。

その頃、カシス系のお酒にハマっていて、家では飲まないが、外でカシス系のお酒を飲むのが好きだったからだ。

その日ちょうど最後の喫茶店の営業日だったらしく、その偶然も驚いた。上映されたのは、


『ミッキーの蒸気船ウィリー』

ミッキーの映像に合わせて、サックス奏者の方が目の前で演奏してくれたのも面白かった。当時のアニメーションや映画は、オーケストラが演奏し、映像に音を当てはめるという手法だったのと、無声映画の場合、映画館にオーケストラが居て、目の前で演奏してるのを聴きながら鑑賞する、という、実にとても裕福な気持ちで映画を鑑賞していた時代にタイムスリップした気持ちだった。


『TEXTISM』

さて、平林勇さんの映画を初めて見た私は、新鮮なトラウマを植え付けられたようだった。

今では、あの時平林勇さんを知っておいて、とても良かったと思っている。

この『TEXTISM』は、ショートフィルムだが長い。私は初めて観た時、とても長く感じた。それぞれ物語が違って、三部作から成り立っている。

ダイレクトな映像からの視覚的要素と、ナレーションが文字として画面に映し出されていく、文学的要素を持ち合わせており、これがショートフィルムなんだ、と謎の刷り込みがなされたのだが、後に他のショートフィルムは全く違うことを知り、少し愕然とした。

特に時計にクローズアップした、死を連想する場面が印象に残っているのと、遺体を埋めた土の上に桜の木を植えていたという、日本古来の話をモチーフにした話はとてもインパクトがあった。

平林勇さんの作品は、予備知識のない状態で観たためか、脂っこいナポリタンをズルズルと噛まずに飲んで食べたような、消化しきれないものがあった。当時の私にはとても刺激が強すぎて、頭から離れるまでややしばらくかかったのを、今でも感覚として残っている。

その後平林勇さんについて調べるうちに好きになり、違う作品も繰り返し観ては、この人の世界観はなんて良いのだろうとハマるようになった。とても人間味があり、良い意味で人間くさく泥臭い部分を、ユニークな形で切り取り、映像に起こせる人なのだと。

現在もショートフィルムフェスティバルが毎年開催されているが、今年のショートフィルムはどういうものが出てくるのだろうとワクワクする。

ショートフィルムというものに興味を持たせてくれたキッカケに、感謝したい。

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