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【病院行ってみた編】胃カメラを回避したいアラサーの悲哀

(よければ前編からご覧ください)


数ヶ月前から黒っぽい便が出るようになった僕。
しばらく様子を見ていたが状況は変わらず、いよいよ不安になってきたので病院を探すことにした。

住んでいるところの近隣エリアに絞って「苦しくない 胃カメラ」で検索してみる。いくつか出てくるが、どこにすればよいかよく分からない。

奥さんがおもむろにスマホを差し出してきた。とある消化器クリニックのホームページが表示されている。

やたら胃カメラの説明が詳しい。患者さんに応じてなるべく苦しくない胃カメラ検査を提案してくれるとのこと。

デカいたぬきみたいな医院長の顔写真がスマホに表示されている。ぎこちない笑顔でこちらを見てくる。

このくらい愛想をふりまかないと個人経営のクリニックに患者は来ないのだろう。血の滲む経営努力である。クリニックなのだからなるべく血は流さないでもらいたいが。

覚悟を決めた僕はクリニックに電話予約をした。もう後戻りはできない。まさに背水の陣である。


予約日当日。症状や質問をまとめたメモ書きを握りしめて、クリニックまでクルマを走らせた。

ドキドキしながらクリニックのエントランスに入る。愛想の良さそうな受付のお姉さんが対応してくれる。

たとえ年下であっても病院やお店の接客担当の女性を「お姉さん」と認識してしまうのはなぜだろうか。色々とお世話してくれるからだろうか。
などと考えているうちに名前を呼ばれた。ついにたぬき医院長と遭遇するのだ。


診察室に入ると、想像の倍でかいたぬき医院長が座っていた。身体とイスのサイズが合っていない。写真で見た通り丸刈りだが、撮影当時より少し毛量が寂しい。

写真ではあんなにぎこちないチャーミングな笑顔を作っていたのに、目の前の彼はやたら目が鋭い。撮影当時から君に何があったんだよ。もっと笑ってくれよ。


「メモ書き見させてもらいました。まず黒っぽいっていうのはどれくらい黒いですか?これより黒いですか?」

そう言うと彼は僕の青黒いサイフを指差した。
言うまでもないが、記憶の中の自分の便と目の前のサイフを脳内で比べるのは初めてだった。そんなもん咄嗟にできるかよ。
ぼくはすぐに判断ができず苦しい声を出した。

「いやぁ、、これよりは茶色、、こげ茶に近いかも、、しれないですね、、」


「なるほど。まぁ、、メモ書きの内容含めて考えるとねぇ、多分問題ないと思いますけどねぇ」

「メモ書きに検査についての質問も書いていただいてますが、まぁこれは失礼な言い方になってしまいますが『やる意味ある?』って感じなんですよねぇ」


おっしゃる通り失礼な言い方だな。
なに患者にカマしてきてんだよ。

得意技の「心の扉を閉める」を発動しそうになる。


たぬきが続ける。

「でもせっかく質問をメモ書きに書いていただいているのでひとつずつお答えすると、、、」

「黒っぽいって言っても本当に病的な時は〇〇みたいになりまして、、、」

「検査するとしても〇〇くらいが妥当かと思うんですが、、、」


おや?

このたぬき、意外と丁寧に教えてくれるぞ?

少女マンガに出てくる、最初印象悪いけど優しい言動や過去の同情を誘うエピソードを通じて実は良いヤツなのが判明するパターン?
ヒロインを振り回すSっ気全開ツンデレクール男?

あれ?何だかたぬきのまつ毛が長く見えてきた。髪の量が増えてサラサラだ。鼻筋そんなに通ってたか?


一通り話を聞き終わり、最後に僕は言った。

「本当にありがとうございました。また何かあったら必ずこちらに伺います」


たぬき、もといSっ気全開ツンデレクール男は
「また伺う?こんなとこ絶対来るんじゃねぇぞ。お大事にな」
と言った(ような気がした)。












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