いつまでも あると思うな 親とローカル線【編集後記】
こちらは編集後記になります。本編については下記リンクより動画をご視聴ください。後悔はさせません。
約2年ぶりのお伊勢参り。今回は、2023年6月限定で販売されていた、近鉄の「2日間乗り放題切符」を使いまして、三重県南部を中心に旅行をしてきました。
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さっそく「大阪難波駅」からスタート。特急大国の近鉄電車では、大阪難波から京都、名古屋、伊勢志摩各方面への特急電車が数多く運行していて、その間を縫うように普通電車や急行電車などが運行されている。そのためどうしても通過待ちなどが発生する。
できるだけいろんな駅で降りたいので、鶴橋の次の駅「布施駅」で一度目の下車。駅前と商店街だけグルっと早足で徘徊して終了。ばかだね そんなに急ぐなんて。まぁ、なんていうか、THE・大阪の街という感じ。
電車は早速奈良県に入り、次は「大和高田駅」で下車。ここではちょっと寄りたいところがある。大和高田というと、FMCoCoRoリスナーの私からすればスーパードーム大和高田のイメージしかない。奈良県にはあまり足を運ぶことがないので新鮮だ。
しかし大和高田でお目当てのお店に行けなかったので、次は「大和八木」で下車。喫茶店でアイスコーヒーを飲む。それだけ、すぐ行く。
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そろそろお昼時。今日のランチはどこにしようかと考えていた。時刻はちょうどお昼の12時ごろ。ここから一気に松阪あたりまで行くとなると確実にランチタイムを過ぎるし、かといって大阪の隣県のここ奈良県で食べるのもあまり旅行感がない。ということで、友達でも恋人でもないその中間地点で、ランチにしよう。
大和八木より先、主要な街としては桜井、榛原、名張あたりだろうか。と、ここでグーグルマップで見覚えのある駅名を発見。名張駅の一つ手前、「赤目口駅」。
JR西日本が去年まで発売していた「関西1デイパス」というものがある。JR大阪駅を中心に、関西圏内のJR線のある程度の範囲が1日3600円で乗り放題になるというものだ。その切符の特典として、他社路線(南海、神鉄など)の一部区間も乗れるというものがあり、近鉄はというと、桜井駅から赤目口駅までの区間と、赤目口から赤目四十八滝までのバス乗車が特典として付与されていた。そのときに行きそびれて以来ひそかに気になっていた場所だ。
名張は平井堅やカベポスター永見の出身地だし気にはなるのだが、今回はパスだ。赤目口駅に行ってみよう。
駅前は大きな広場になっていて、お迎えらしき車が2台停まっている。ほかに小さな休憩スペースとバス停があり、お食事処と喫茶店と個人の電気屋さんがある。いずれも営業中とは書いているが、人の気配はない。しばらくボーっとしていると、背後を特急電車が轟音で通過していった。その音でハッと我に返る。余韻が青空に消えたころ、私は駅前広場から歩き始めていた。
都会に暮らしているとこんな大量の緑を見ることもあまりない。前も後ろも山に囲まれながら、とりあえず南の方へと歩く。それにしても田舎の車はやたらと飛ばしている。歩行者の私に気付いているのか否かわからないが、減速の素振りを原則見せない。
ランチタイムも終わり、いよいよ赤目口ともお別れ。ここからは一気に山を越えて三重県の中心部へと入っていく。名張、青山町、榊原温泉口と、急行電車はあの子の住む街を通り過ぎてく。ちなみにダイヤは全く乱れていない。
山を越えたあたりでひと眠りしてしまったようで、気が付くと「松阪駅」の手前くらいまで来ていた。JR紀勢本線と交わるあたり、左手に住友理工の工場が見えてきたら、松阪ももう近い。
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ということで約2年ぶりの松阪に到着。近鉄の車両に並んで、JR東海の特急南紀や快速みえなどが停車している光景はなんだか震える。関西の空気と東海地方の空気が絶妙に混ざり合った雰囲気がここ松阪駅にはある。
とりあえず駅前に出る。お腹も空いていないし時間も時間なので行くところもないが、松阪に来たら寄っておきたい場所があるのだ。
2年前にも一度訪れて気になっていた場所だ。前回も閉まっていたのだが今回もまたそうだった。あらら残念と思いつつ写真を撮っていると、近所で飲食店をやっているという女性に不審がられたのか声をかけられ、ありがたいことにこのお店のお話を聞かせてもらった。
どうやらお店は閉業しているわけではなく、店主の方のご都合で現在は臨時休業という形だそうだ。ご存命なことにとりあえず安心した。確かに2年近くも営業していない割にはお店の建物周囲は掃除されているようだし、人の手が入っている様子だ。また、店主の長男さんはこの近くで働いているようで、近々一緒にこのお店を再開されるかもしれないとのことだった。これは嬉しいニュース。この情報を仕入れられただけでも相当嬉しい。これでまた松阪再訪のきっかけが出来たってもんよ…。
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松阪もほどほどに、今回の宿泊地である伊勢へと向かう。関西や名古屋から観光客で満席になった特急電車が引っ切り無しにやって来る。みな伊勢へお参りにやってきたのだろうか。
伊勢市駅で降りる。そういえば前回は、四日市方面から伊勢市を通り過ぎて五十鈴川まで行き、歩いて伊勢神宮に参拝。帰りは伊勢市から観光特急しまかぜに乗って帰ったので、伊勢市駅で降りるのは実は初めてなのだ。2年前に来た時よりも確実に観光客の数も増えて、街が活気づいているのがわかった。
伊勢市駅近くの喫茶店でコーヒーをすすった後、今日の宿にチェックインを済ませ、暮れだした伊勢の夜へ繰り出す。この時間にもなると伊勢市駅前にはあまり観光客の姿は見当たらない。
が、観光施設や物産店のある中心地から少し離れて、商店街などがある住宅街エリアに来ると、急に人が増えてきた。チラッと通りかかった商店街にはめちゃめちゃ多くの人や露店が溢れているではないか。これは…?伊勢エビ祭りか…?のちのち調べてみると、高柳商店街というところで毎年行われている伊勢市民のお祭りだそうだ。確かに家族連れや少年少女の姿が目だつ。
さて、今宵私がいただくのは、伊勢市民の間で親しまれている名店です。グーグルマップで何気なく見ていて気になったお店。旅行に来てまでチェーン店居酒屋やおしゃれ系のところに行くのもアレなので、どうせなら地元民が集うような名店に。
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JR名松線は、JR松阪駅から三重県と奈良県の県境近くの「伊勢奥津(いせおきつ)駅」までを繋ぐJR東海管轄のローカル線。深い山々の合間を川に沿って進んでいく全線単線で非電化の趣ある路線だ。松阪駅を出たら、近鉄大阪線と少しばかり並走したのち、内陸のほうに入り込んでいく。途中の「家城(いえき)駅」にて対向車とすれ違いをしたのち、えっちらおっちらと終着駅まで向かう。
名松線はいわゆる盲腸線と呼ばれ、終着の伊勢奥津駅は他の路線に接続していない。松阪市街から津の山奥まで行ったきりになる路線だ。しかし、この名松線という名称はもともと「名張」と「松阪」を繋ぐ予定だったことに端を発していて、計画途中で名張までの路線建設がとん挫してしまった、いわゆる未成線でもある。そのためこんなに中途半端な場所で電車が止まる。
伊勢奥津駅周辺には集落が形成されてはいるが、コンビニは1軒もないし、商業施設などもない。とはいえ、伊勢奥津駅周辺の一帯はかつて、京阪神地区から伊勢神宮へお参りする人たちが行き交った伊勢本街道の宿場町のひとつ「奥津宿」としても知られており、今でも伊勢奥津駅付近には宿場施設の建物が多く残っている。鉄道や道路網が発達した今、参宮街道としての機能は完全に失われてしまっているが、往時の残り香を感じ取ることはできる。
「いつまでも あると思うな 親とローカル線」
JR名松線はかつて、2009年に大雨による甚大な被害を受け、2016年まで一部区間を運休していた。このまま廃線になってしまう可能性もあったようだが、沿線住民の方や市町村などの協力もあり、全線再開するに至っている。ローカル線は儚い。いつ廃止になってこの世から消えてしまうかわからない。せめてもの協力といってはなんだが、電車に乗ってその沿線の町で経済消費活動をすることが私たちにできる数少ないことだと思う。
松阪駅を11:33に発車予定の電車は、私を含めて7人ほどの乗客を乗せていた。6つあるボックス席に、父と息子の家族連れ、母と娘の家族連れ、そのほかのひとり客はおそらく鉄道オタクだろう、首からカメラをぶらさげている。ロングシートに座っていても落ち着かないので、ボックス席のひとつに座った。前にリュックがひとつ置いてあるが、大方鉄道マニアが発車時刻まで写真を撮っているのであろう。進行方向に背を向ける形で私はボックス席に座った。発車3分前に私の前に座った男性は、もうそれは鉄道オタクであった。リュックしか置いていなかったので私はボックスシートの窓側の席にいたのだが、あろうことかその男性も窓側に座ってきた。ボックスシートの窓側席で男性二人が膝を付き合わす光景。車窓の外にはこんなにも広々とした景色が広がっているというのに…。
途中の一志(いちし)駅で、他のボックス席にいた家族連れが降りたため、席が空くやいなや私はそこに滑り込んだ。進行方向右側、電車はさらに奥地へと進んでいく。
途中の家城駅で松阪行きの列車とすれ違う。家城駅は鉄道オタク的には結構物珍しい駅で、非電化ローカル単線ならではの光景が見られる。詳しくは帰ってwikipedia!
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終着の伊勢奥津駅が近づいてくる。初めの方に一志駅で降りた家族以外、道中で誰も下車していないので、本当にローカル線乗り通しオタクしか乗っていないのだろう、私含めて。なんだか恥ずかしい。
伊勢奥津駅に着く。駅舎を出ると地元の家族連れの方が散歩していたり、鉄オタが写真を撮っていたり。私はとりあえず、2時間後の電車までこのあたりを散策することにしていた。
駅前の坂を下って、かつての伊勢本街道に出る。歩道のない細い道が続いていて、脇には宿場の跡が残っている。普段は歩行者がいないからか、たまに通る車はかなりのスピードを出していて危険だ。線路を挟んだ向こう側にある国道は、たまにツーリングのバイク集団が轟音を立てながら爆走している。閑静な山奥の町だと思っていたが、存外に来訪者は多いようだ。
行こうと思っていたカフェはこのタイミングで臨時休業。もう1軒、目星をつけていたお店で遅めのランチ。地元民らしき人たちの会話に耳を傾けるのが楽しい。帰りの電車の時間が迫っている。居心地はとても良いが、いつまでも長居はできない。
駅までの道中、近所のおばあさんと少し世間話をしたり、染物店をやっているご夫婦とお話したり、駅隣接の物産展で近所の方の井戸端会議に加わったり、ここに生きる人たちと少しだけ繋がれたような気がする。また来てね、って言われたけれど、ホントは私帰りたくなかった。もう1本あとの電車でも良かった気がするな。
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書を捨てよう町に出よう。ともかく、Twitter中毒者は外に出た方がいい。そこだけは正論マスクだと思う。
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旅のしおり【編集後記集】
私のYoutubeチャンネルでUPしている旅行動画の編集後記として執筆した記事をまとめています。マガジンの購読自体は無料です。
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