見出し画像

オレンジとの再会 / 2010.02.14.

あたしの中にずっとオレンジがある。
特にオレンジが大好物なわけではないのに、気がつくと、あたしのみえない一番奥の方に、オレンジはころがっている。15才くらいのころ、オレンジは強く香った。そして10代の終りになり、オレンジは次第に腐敗していったのだ。やがて、あたしから香りは消え、体中が固い石でいっぱいになった。

オレンジが帰ってきたのは、ふとしたきっかけからだ。
おととしの春、あたしは新しいカメラを手に、新宿へ向かった。その時のあたしは、風化したパラフィン紙のようだった。小さな風が吹いても散りそうなカラダで、新宿の地下道に座り込み、瞬きをするように写真を撮っていた。いくつもの人の流れを横切り、地上に出たあたしは、昔からある果物屋を思い出したのだ。

くり返されるオレンジという出来事

「そうだ、オレンジを撮らなければ」
そのようにして再会したオレンジだったが、少女時代のオレンジのように強く香ることはなかった。でも、時間をかけ、すこしずつ、そう、初めは半透明だったその果実は、消えたり現われたりしながら、あたしの中で増殖をはじめた。

これから、大量のオレンジを買いに行く。渋谷の果物屋に、オレンジは何個くらい売っているのだろう? あたしはそれを抱えてホテルへと向かう。

くり返されるオレンジという出来事



2010年「リズの移動遊園地」という写真と言葉ブログを始めた。
これはその最初の投稿である。
2008年4月カメラ(RICOH R8)を買って2回目に撮った写真。



2022.11.20. 「文学フリマ東京35」に「本のまち 双花町」で出店します。最近の写真集の他、むかしの詩集も持って行こうかな。他の作家さんの写真集などもお預かりします。ご希望の方はご連絡くださいね。
くわしくはFacebookイベント⇒ https://fb.me/e/5gnELaa6A


この記事が参加している募集

404美術館

文学フリマ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?