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青い鳥の兄弟のお店。

 昨日読んだニュースで都心のハンバーガーチェーンが値上げをするという記事があった。

 看板メニューのハンバーガーは二十円の値上げだそうである。

 かなり前の話だが平成の半ばころの値下げ合戦ではハンバーガーは一個六十円くらいだったのでいかに物価が上がったのかよくわかる。

 過度の値下げ合戦は企業の体力を削るだけなので適正価格はあると思うが一個二百円のハンバーガーだけではお腹は満足しない。

 セットで頼むと六百円を超えてくるのでなかなかの高級品になったなと思う。

 とはいえ今時ほとんどの飲食店ではワンコインで食べられる料理はない。

 すぐに思いつくのは立ち食いそば位であろうか。

 私が子どもの頃は田舎なりに安価で食べられるお店がいくつかあった。

 その中で一番印象深いのはチェーンのファミリーレストランである。

 このお店の売りは何と言っても安いというところで千円もあれば大豪遊が出来た。

 一番高級なカツ丼でも確か七百円だったと記憶している。

 そのお店の一番人気はチキンカツ定食でご飯の大盛りはサービスで巨大なチキンカツとサラダ、みそ汁、小鉢がついて五百円ぽっきりだった。

 お店はいつも大変繁盛しており並ぶこともよくあった。

 実家から自転車で十分の所にお店があったので高校生時代は週に二度は通っていた。

 部活前の土曜日のお昼に腹ごしらえをしたり、放課後にお腹が減りすぎて晩御飯まで我慢が出来ない時にお店の暖簾をくぐったものである。
 
 チェーン店とは言いつつも県内だけの展開だったので接客もマニュアルチックではなく町の定食屋といった雰囲気でお店のおばちゃんも愛想が良かった。

 定番のチキンカツにソースをビタビタにかけて大盛りのご飯と一緒に頬張ると何と美味いのだろうとウットリしたものである。

 私の行きつけだったお店は大学に行っている間に不景気に煽られたのかギリギリの値段設定に限界が来たのか惜しまれながら閉店していた。

 今では私の知る限りチェーン店自体が無くなったと思う。

 何はともあれワンコインでお腹いっぱい食べられたのはシアワセだった。

 あのボリュームを再現しようとすると今だと千円でも難しいと思う。

 若い頃はおばちゃんがサービスしてくれたマンガ盛りご飯でも余裕で完食出来たなぁ。

 ちなみにお店の名前はメーテルリンクの童話の主人公兄弟と同じである。

 食べ物とお店の人に人情があった懐かしい思い出だ。

 そんな事を懐かしく思い出しながら昨日の晩御飯の話を少し。

 昨日は買い物に行ってから帰宅。

 まずは手洗いとうがいを念入りにする。

 それからお米を研いで浸水させておく。

 鶏むね肉に砂糖と塩を塗りこんでしばらく放置。

 玉ねぎとピーマン、人参を細切りにする。

 醤油、黒酢、砂糖、水を混ぜて調味液を作る。

 それを鍋に入れて火を点けて沸騰したらバットに空ける。

 鶏むね肉を洗ってよく拭いてから片栗粉をまぶしてフライパンでしっかり焼く。

 完全に火が通ったらアツアツのうちに調味液に漬ける。

 刻んだ野菜も加えて軽く混ぜてから常温で二十分くらい置けば鶏むね肉の黒酢南蛮漬けの出来上がり。

 南蛮漬けを作っている間にご飯を炊いておく。

 副菜は温かいものを作る。

 豆腐一丁を八等分に切ってレンジで温める。

 醤油、白だし、みりんで薄めの出汁を作る。

 明太子の腹を切って中身を出しておく。

 小鍋に出汁を入れて沸騰させる。

 そこに明太子を入れる。

 仕上げに水溶き片栗粉でとろみをつけたら温めた豆腐にかけて豆腐の明太子餡掛けの完成。

 汁物はシメジとわかめスープ。

 シメジの石突を落として鶏がらスープの素を入れた鍋で煮込んだら乾燥ワカメをパラリと加えて卵を落としてねぎを散らすだけのお手軽メニュー。

 まあこんなものかなと思って妻を呼ぶ。

 昨日のお酒はビール。

 プルタブをデディと勢いよく起こしてグラスにトットコトッと注ぐ。

 乾杯をしてングングと一息で飲み干す。

 パヒャァ、ウメーと声が思わず漏れる。

 ではつまみに豆腐から。
 
 あんかけなのでアツアツである。

 豆腐をつまんでハクッと食べると明太子あんの旨味と豆腐の静謐な味わいが広がる。

 これは大人の味だなぁと思って丁寧に食べた。

 あっという間にビールが空いたので二本目をピシュッ。

 次はメインの黒酢南蛮漬けを食べる。

 漬け込み時間が少し短かったのかまだほんのり温かかった。

 野菜はしっかり黒酢に馴染んでいて食べやすい。

 鶏肉も片栗粉をまぶしているので表面がトロトロでジューシーだった。

 普通の南蛮漬けに比べて黒酢の風味がよくてお手頃な胸肉もひと工夫で美味しい料理になるなぁと思いつつパクリ。

 合い間にシメジスープを飲んでインターバルを取った。

 さぁてビールのお代わり♪と思って立ち上がろうとしたら妻からやんわりと無言の圧力を受けたのでおとなしく座りなおした。

 一見穏やかそうで実は心に激しいものを持っている妻を怒らせるのは得策ではない。

 健康のためにも二本でビールをやめたのは正解だったと思う。

 南蛮漬けは鶏肉を食べきったので残りの漬け汁を何かにアレンジしたい。

 もったいないお化けが出ないように活用するんだ。

 おおなんと、それをすてるなんてとんでもない!


 

 

 

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