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5年たったら正社員というルールについて

契約社員は5年経てば正社員にしなければならない。
無期労働契約になるだけなので正確に言えば正社員じゃなかったり、本人からの申請がなければ適用されなかったり等、色々ある詳細は省くが、とにかく会社による「雇い止め」を解消するためのルールである。

何でこんな話をするかというと、お手伝いしているとある企業さんがこのルールに直面しているからだ。

次年度で5年を迎える職員が正社員化を希望している。本人からの申請がある以上、上記のルールに向き合わねばならないのだが、相当に困っているらしい。

まず組織の仕組みとして正社員を必要としていない。誰でもできる業務を請け負い、それを一人の正社員が数人の契約社員をもって回しているのがこの組織のスタンスである。

正常な経済活動が行われている組織なら、これを機に…となるのかもしれないが、残念ながらそこは自治体にべったりな組織。変わろうと変わるまいと一定のタイミングで一定の金がふってくるだけである。当然、自身で前に進む力はとうの昔に失われてしまっているし、その気もない。

問題を更に厄介にしているのは正社員化を申請し、待遇アップを望む当の本人もコバンザメする気満々である点だ。

本人は何もするつもりはないが、ルールに基づき待遇アップのみを主張する。組織として、そのような人間を抱え込むメリットよりデメリットの方に意識がいくのは自然なことだろう。

組織がその個人がと言うつもりはないが、どちらも不健全ここに極まれりな様相である。と同時にこのような状況は特に珍しいものでもないのかもしれないと思ってしまった。

「雇い止め」を解消する法律は真っ当な「願い」かもしれないが、進化を望んでいない者からすると「呪い」でもある。進化しないものはいずれ滅ぶと考えるのが妥当かもしれないが、滅びのきっかけが「願い」となるのは、何とも言い難いものである。

改めて考えてみると、あらゆる「願い」は対象が健全であること、健全になることを前提としているように思う。ただ、進化を望んでない個人・組織は決して少なくない。善意に押しつぶされてしまうものは相当数いるのではないだろうかと、目の前の喧騒を見て、感じてしまった。

とにかく私たちの周囲は長い歴史の中で培った善意に満ちている。ただしそれらは弛んだ瞬間、牙をむくことがある。私たちにできることは健全であり続けることだけだ。健全でなければ私たちは優しさに押しつぶされてしまうのだ。

時間:15分




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