千一歩(ちかずあゆむ)

はじめまして。 つい最近、小説投稿をはじめた千一歩です。 よろしくお願いします。

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  • シーナ町のしいなさん

    短編連作小説です。 西武池袋線椎名町に住みはじめたしいなさんの日常を縦糸に、過去の思い出を横糸につむがれる物語。

記事一覧

シーナ町のしいなさん① おとうふのはな

 ある日、上司がいったのだ。すんごい、軽い感じで。 「東京に転勤しない?」  言い方が、昔観た再放送の昭和のドラマのナンパシーンに、似ていた。「ちょっとそこで、お…

黒猫トムの帰還 〜ある魔法猫とそのお友達の物語〜

ー挨拶もなしかや?そこのこんまいのー  黒い毛並みの艶々とした小さな猫は、周囲をキョロキョロと見回した。まるで「ぼくのことですか?」とでもいいたげに小首を傾げる…

シーナ町のしいなさん① おとうふのはな

シーナ町のしいなさん① おとうふのはな

 ある日、上司がいったのだ。すんごい、軽い感じで。
「東京に転勤しない?」
 言い方が、昔観た再放送の昭和のドラマのナンパシーンに、似ていた。「ちょっとそこで、お茶しない?」みたいな。
 その日はとっても寒い日で、上司の背後にある大きな窓から見える景色は、一面が雪で白かった。反して、この会社に入ってから二回しか会ったことのない、東京本社常勤のその上司は、普通に日本で暮らしていたらありえないくらい、

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黒猫トムの帰還 〜ある魔法猫とそのお友達の物語〜

黒猫トムの帰還 〜ある魔法猫とそのお友達の物語〜

ー挨拶もなしかや?そこのこんまいのー
 黒い毛並みの艶々とした小さな猫は、周囲をキョロキョロと見回した。まるで「ぼくのことですか?」とでもいいたげに小首を傾げるさまは、どこか人間臭さを感じさせる。
 ーはじめまして、お稲荷さん。お世話になっていますー
 黒猫は言うと同時に、トン トトンと展示台に軽やかに跳躍すると、その上に置かれた明神堂の中を覗き込んだ。
 陶製の明神堂には、素焼きに着色が施された

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