鈴村裕輔

名城大学教員、法政大学客員研究員。主な専門は比較思想、政治史、文化研究。 / Dr. …

鈴村裕輔

名城大学教員、法政大学客員研究員。主な専門は比較思想、政治史、文化研究。 / Dr. Yusuke Suzumura is an associate professor of Meijo University. https://researchmap.jp/suzumura/

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【追悼文】小山内美江子さんについて思い出すいくつかのこと

去る5月2日(木)、脚本家の小山内美江子さんが逝去されました。享年94歳でした。 1960年代からテレビドラマの脚本家として活躍し、これまでにNHK大河ドラマ『徳川家康』(1983年)や『翔ぶが如く』(1990年)などの重厚な歴史物から『3年B組金八先生』(1979-2004年)の連作、あるいは『アイフル大作戦』(1973-1974年)や『バーディー大作戦』(1974-1975年)のような、活劇まで幅広い分野で多くの作品を手掛けたことは周知のとおりです。 私も滝田栄さんの

    • カルロ・マリア・ジュリーニの生誕110年を祝す

      本日、指揮者のカルロ・マリア・ジュリーニが1914年5月9日に生まれてから110年目を迎えました。 ジュリーニというと名声の高さに比べ、世界的な楽団を率いた時期が短く、その経歴の多くの時期を特定の団体に関わることなく送ったということもあり、「孤高の指揮者」とも呼ばれることは広く知られる通りです。 また、3回にわたって来日したものの、1982年を最後にその芸術が完成期を迎えた最晩年は待望されつつ日本を訪れることはありませんでした。 結果として、1998年10月に引退するま

      • 新型コロナウイルスの5類への移行から1年に際してわれわれは何をすべきか

        本日、2023年5月8日(月)に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が2類から5類に移行し、法律の面では従来の結核や重症性呼吸器症候群と同等の扱いから、季節性インフルエンザと同様の枠組みの中に入れられることになってから1年が経過しました。 この間、飲食店などでの新型コロナウイルス感染症への対策が緩和されるとともに、感染症予防として励行されていたマスクの着用や密集、密接、密着のいわゆる三密への対応も事実上撤廃されました。 あるいは今年3月の訪日観光客が1か月の人数とし

        • ベートーヴェンの交響曲第9番の初演から200年目によせて

          本日、1824年5月7日にウィーンのケルントナートーア劇場においてベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」が初演されてから200年目を迎えました。 交響曲の頂点であり、欧州連合の歌として第4楽章が用いられたり、ワーグナーが交響曲は本作で終わり、自らは歌劇における交響曲の創出を志して「楽劇」へと至ったりしたことは広く知られるところです。 ベートーベンの「第九」にはこれまで多くの優れた演奏があり、会場や録音でわれわれに様々な印象を与えています。 一方、初演の際は好評を博すだ

        【追悼文】小山内美江子さんについて思い出すいくつかのこと

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          プラレール博 in TOKYO 2024

          昨日、サンシャインシティのワールドインポートマートビル4階の展示ホールA及び文化会館ビル4階の展示ホールBにおいて、プラレール博 in TOKYO 2024を見学しました。 今年は1959年にプラレールが販売を開始してから65周年の節目に当たるということで、歴代のプラレールを展示したり65編成のプラレールが一斉に走行したりする特別企画や、巨大ジオラマのほか、「プラレールつり」「プラレールあみだくじ」、無地のプラレールに着色して自分だけのプラレールを作ることが出来る「プラレー

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          こどもの日に考える日本の少子化対策の過去・現在・将来

          今日はこどもの日です。 5月4日(土、祝)に総務省が発表した2024年4月1日時点の15歳未満の人口は1401万人となり、比較可能な1950年以降で最少となりました[1]。 岸田文雄政権は少子化対策を政権の重要政策の一つに掲げ、2023年4月1日にこども家庭庁を発足させるなど、「異次元の少子化対策」が単なる題目に留まらないかのような意欲を示しています。 その一方で、これまで行われてきた少子化対策が有効であるか否かは不明であり、現在の対策もただちに効果を上げるものではない

          こどもの日に考える日本の少子化対策の過去・現在・将来

          【旧稿再掲】ユニフォーム着こなし最前線(I)

          2010年4月、私も寄稿者の一人として参加し実業之日本社から実用百科の一冊として『野球道具天国』が刊行されました。 その中の一報に「ユニフォーム着こなし最前線」[1]があり、野球におけるユニフォームの発展の過程と2010年時点における最新の動向を検討しました。 そこで、今回から4回の予定で本論の草稿をご紹介します。 ユニフォーム着こなし最前線 鈴村裕輔 最初のユニフォームは麦わら帽子に白いシャツ 野球選手が全員揃いの服を用意して試合に臨んだ最古の記録は1849年にまで

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          憲法記念日に考える岸田文雄首相の改憲への本気度

          今日は憲法記念日です。 憲法記念日のたびに注目が集まる話題のひとつのは、憲法の改正の可能性の有無です。 確かに、今年1月の施政方針演説において岸田文雄首相が「自分の総裁任期中に改正を実現したいとの思いに変わりはなく、議論を前進させるべく、最大限努力したいと考えています。今年は、条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速してまいります。」と改憲への意欲を示したこと[1]は、改憲の期限について国会で言及するという点で異例の出来事でした[2]。 しかし、歴代首相の中でも特に

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          【評伝】フジコ・ヘミングさん--様々な困難を乗り越えた「魂のピアニスト」

          去る4月21日(日)、ピアノ奏者のフジコ・ヘミングさんが逝去されました。享年92歳でした。 幼少期からピアノ奏者として頭角を現していたものの16歳の時に病気で右耳の聴力を失い、29歳で渡独し、バーンスタインやマデルナの知遇を得て本格的な演奏活動を始めようとしたものの風邪が原因で一時的に左耳の聴力をも失うなど、ヘミングさんは様々な困難に見舞われます。 その後、一時はピアノの教師をする傍らで清掃員を務めるなど、演奏活動からは遠ざかります。 しかし、一見すると遠回りに見えた過

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          制定から5周年目を迎えた「令和」によせて

          本日、2019年5月1日(水)に明仁陛下が遜位され皇太子徳仁殿下が当極されるとともに元号が平成から令和に改まってから5年が経ちました。 国内的にはバブル経済の崩壊から長期の経済の低迷、さらには阪神・淡路大震災やオウム真理教による地下鉄サリン事件、あるいは東日本大震災など、従来の日本が経験してこなかった類の様々な困難に直面し、国際的には冷戦の終結による超大国としての米国の登場とその後の多極化の進展という過渡的な時代となったのが平成という時代でした。 そして、この5年間を振り

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          青山フィルハーモニー管弦楽団第9回定期演奏会の開催から30年によせて

          本日4月30日、1994年4月30日(土)に世田谷区民会館において東京都立青山高等学校の部活動である青山フィルハーモニー管弦楽団(青フィル)の第9回定期演奏会が行われてから、30年目を迎えました。 この公演での演奏曲目は以下の通りでした。 ベートーヴェン/歌劇『フィデリオ』序曲(指揮:鈴村裕輔) シュトラウス2世/皇帝円舞曲(指揮:和田義之) チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」(指揮:鈴村裕輔) ブラームス/ハンガリー舞曲第6番(アンコール、指揮:鈴村裕輔) 当時、

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          青山フィルハーモニー管弦楽団第39回定期演奏会

          本日、たましんRISURUホール(立川市民文化会館)において、青山フィルハーモニー管弦楽団の第39回定期演奏会が行われました。 今回は前半にエルガーの『威風堂々』第1番、スッペの喜歌劇『軽騎兵』序曲、チャイコフスキーのバレエ組曲『くるみ割り人形』が、後半にドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」が、そしてアンコールとしてシュトラウスの『ラデツキー行進曲』が演奏されました。 いずれも広く知られた作品であり、聞き手がそれぞれの印象をもって耳を傾けることが出来るのが、今回の公

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          衆院3補選の結果の持つ意味は何か

          本日、衆議院東京都第15区、島根県第1区、長崎県第3区の3選挙区で補欠選挙の投開票が行われ、全選挙区で立憲民主党の候補者が当選する一方、自民党は唯一候補者を擁立した島根県第1区で落選するなど、全敗しました[1]。 今回の補欠選挙について、東京都第15区は柿沢未途氏が江東区長選を巡る公職選挙法違反の罪に問われ、長崎県第3区は谷川弥一氏が政治資金パーティー収入を巡る政治資金規正法違反で立件されてそれぞれ辞職したことに伴い実施されました。そのため、両氏が所属していた自民党は独自の

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          『クラシックの迷宮』の特集「指揮者・井上道義の世界」が示唆する井上道義の特徴と後世への価値

          今日放送されたNHK FMの『クラシックの迷宮』は、2024年12月31日をもって指揮者を引退することを表明している井上道義を特集した「指揮者・井上道義の世界~NHKのアーカイブスから~」が放送されました。 独創的な企画や意欲的な演奏によって日本の指揮者界を牽引する一人である井上道義の芸術がどのように形成されてきたかを探るため、青年時代から中堅時代にかけての演奏を中心にNHKが収蔵する録音を取り上げるのが今回の企画の趣旨です。 紹介されたのは、井上が初めてNHK交響楽団の

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          鬼龍院翔氏が定めたNHK FMの新番組『マイ・フェイバリット・アルバム』の基礎

          今年4月1日(月)から、NHK FMの平日夜の時間帯はAM放送の停波を見据え、ラジオ第二放送の語学番組を放送するようになりました。 これを受け、23時台の番組は日本のポップス音楽を中心とする枠となっていたものが変更され、従来の番組は毎週水曜日の『THE ALFEE 終わらない夢』が日曜日の13時に移動したのを除き、全て終了しました。 その代わりに始まったのが22時30分から23時20分まで放送される、各界の著名人が5日間にわたり1日1枚ずつ気に入ったアルバムを紹介するとい

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          石橋湛山の没後51年を記念し石橋湛山研究のこれからを考える

          本日4月25日、石橋湛山が1973年4月25日に88歳で逝去してから51年が経ちました。 昨年6月に国会に議員連盟である超党派石橋湛山研究会が結成されたり、「もし現在石橋湛山が首相であったら」といった話題が提起されたりと、近年石橋湛山の事績に対する注目の度合いが以前にも増して高まっています。 過去の事例を参照すると民主党政権時にも同様の現象があったため、政治に対する国民の信頼が揺らぐ際に批判の手掛かりとして石橋湛山が取り上げられる傾向にあると推察されます。 それでは、何

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