未来の翼

主婦です。美味しいものを食べることと、読書が趣味です。

未来の翼

主婦です。美味しいものを食べることと、読書が趣味です。

記事一覧

映画「羊たちの沈黙」を観て

ジョナサン・デミ監督 クラリス:ジョディ・フォスター レクター博士:アンソニー・ホプキンス ここには、常軌を逸した人間が2人出てくる。並外れた知能を持ち、カニバ…

未来の翼
13日前
6

映画「イコライザー」「イコライザー2」「イコライザー ファイナル」を観て

CIAを退任し、死んだことになっているロバート(デンゼル・ワシントン)は、世界中の市井の民を苦しめる犯罪組織と対峙して民を救う、という筋書きは世界を股にかける水戸…

未来の翼
2週間前
9

「浴槽」ジャン・フィリップ・トゥーサンを読んで

「されどわれらが日々ーー」と並行して読んでいた。 引きこもりのパリジャンの話かと思っていたら、「されどわれらが日々ーー」と同じく青春のさなかにあり、死すべき人間…

未来の翼
2週間前
3

アマゾンプライムビデオでG.W中の特別企画で「ゴジラ-1.0」が観れます。
ゴジラは日本人にとって破壊神なのでしょうか。
恐怖とともに畏怖を、そしてその死には崇高を感じさせる何かがあります。
あとはネタバレになるので控えます。

未来の翼
4週間前
2

「されどわれらが日々――」柴田翔著を読んで

柴田翔の滋味あふれる文章に私はかつて気づかなかったのだ。「そうね、そういうこともあるわよね」という自分の同棲時代を回顧するような感想しか十数年前には抱けなかった…

未来の翼
1か月前
6

「されどわれらが日々-」柴田翔著を読みながら回想した。

それは、1997~8年の出来事だったと思う。 夫が私の単身赴任先に遊びに来て夜になった。自衛隊の基地のあるその町の古本屋の店先で夫はハンナ・アーレントを選んで買い求…

未来の翼
1か月前
5

土砂降りでも構わず飛んでいく その力が欲しかった

人が宣う地獄の先にこそ わたしは春を見る

繋がれていた縄を握りしめて しかと噛みちぎる

口の中はたと血が滲んで 空に唾を吐く

生まれた日からわたしでいたんだ 知らなかっただろ

米津玄師の「さよーならまたいつか!」の歌詞

未来の翼
1か月前
3

このところ、心が温まるような投稿をしていないことに気づいた。
戦争は終わらないし、日本は円安で物価高が止まらないし、春だというのに心は浮き立たない。
せめて私生活は優しく暖かくありたいと思う。

未来の翼
1か月前
2

雑誌「世界」5月号「ガザ攻撃はシオニズムに一貫した民族浄化政策である」早尾貴紀著をメモした(少し感想)

(以下本文抜粋)〈10.7〉以降もおよそ半年にもわたり、世界の衆目を浴びながらも、なぜ大虐殺と大規模破壊が止められないのだろうか。逆に、このイスラエルの暴虐なガザ侵…

未来の翼
1か月前
3

保阪正康氏著「近代日本の地下水脈」(2)を読んで

第4章 戦争が「営利事業」だった日本型資本主義 軍事が先導する日本型の資本主義は国家社会主義に近い性質のものであり、その地下水脈は現代の日本経済にも流れている。…

未来の翼
1か月前
2

雑誌「世界」4月号「米中東政策の綻びはどこに向かうか イスラエル もうひとつのトランプ旋風」を読みながら

この論考を読んでいて私の脳裡に立ち上がったイメージがあった。 それはバイデンのようにイスラエルにエスカレートさせないような忠告なしに、トランプはイスラエルをスポ…

未来の翼
1か月前
2

雑誌「世界」4月号「トランプふたたび」を読んで

この鼎談(遠藤乾氏、渡辺将人氏、三牧聖子氏)で述べられている「もしトラ」は文字通りもしもトランプが当選したらであるが、「ほぼトラ」とは、バイデンが当選してもほぼ…

未来の翼
1か月前
4

愛について考えたこと

私はフラワー・チルドレンの名残で、ずっと若い頃から愛こそすべてだと信じてきた。 愛が人間を開放し、愛の中でこそ人間は完全に自由になると信じてきた。 古今東西、恋…

未来の翼
1か月前
8

ワタシ的三島由紀夫像

三島由紀夫は結局のところ、太宰治著「斜陽」に出てくる弟なのだ。 「太宰治のような女々しい奴」と三島は嫌っていたようだが、それは自身の女々しさを見るようで嫌だった…

未来の翼
1か月前
3

「ポスト・キャピタリズム」 ポール・メイソン著 を読んで

とても経済の歴史の本としては興奮するトピックスが描かれている。 コンドラチェフの波、シュンペーターの波、マルクスの波の比較は私がもっと理解力があればもっと面白く…

未来の翼
2か月前
4

映画「ある男」 石川慶監督 2022年制作 を観て

平野啓一郎氏原作 原作を読んだときには、驚くエピソードの連続で翻弄されストーリーを追いきれなかった。この映画は骨格を整理してミステリー仕立てに作り直されていて判…

未来の翼
2か月前
8
映画「羊たちの沈黙」を観て

映画「羊たちの沈黙」を観て

ジョナサン・デミ監督

クラリス:ジョディ・フォスター

レクター博士:アンソニー・ホプキンス

ここには、常軌を逸した人間が2人出てくる。並外れた知能を持ち、カニバリズムという罪を負った精神科医レクター博士と猟奇殺人鬼バッファロー・ビルだ。

そして猟奇殺人の解決に白羽の矢が立ったのがFBI捜査官実習生のクラリスだった。

高い知能を持った同士のためかレクター博士とクラリスは奇妙な魂の交流のよう

もっとみる
映画「イコライザー」「イコライザー2」「イコライザー ファイナル」を観て

映画「イコライザー」「イコライザー2」「イコライザー ファイナル」を観て

CIAを退任し、死んだことになっているロバート(デンゼル・ワシントン)は、世界中の市井の民を苦しめる犯罪組織と対峙して民を救う、という筋書きは世界を股にかける水戸黄門のようである。

ただ、ロバートは恰もパソコンゲーム「ディアブロ」の戦士のように容赦なく激しいバトルを繰り広げ、犯罪組織の中枢に迫って行く。

ピューリタン的几帳面さを忘れない生活態度は見習わなければならないと思う反面、その几帳面さで

もっとみる
「浴槽」ジャン・フィリップ・トゥーサンを読んで

「浴槽」ジャン・フィリップ・トゥーサンを読んで

「されどわれらが日々ーー」と並行して読んでいた。

引きこもりのパリジャンの話かと思っていたら、「されどわれらが日々ーー」と同じく青春のさなかにあり、死すべき人間の長い猶予期間をもて余すという物語だ。

「浴槽」の主人公は、自分がいずれ死ぬことで、死刑囚の死刑執行までの猶予期間のようでありながらそれは長すぎると感じている。何事にも意味を見出だせない。「どうせ死んでしまうのだから」

彼はバスタブで

もっとみる

アマゾンプライムビデオでG.W中の特別企画で「ゴジラ-1.0」が観れます。
ゴジラは日本人にとって破壊神なのでしょうか。
恐怖とともに畏怖を、そしてその死には崇高を感じさせる何かがあります。
あとはネタバレになるので控えます。

「されどわれらが日々――」柴田翔著を読んで

「されどわれらが日々――」柴田翔著を読んで

柴田翔の滋味あふれる文章に私はかつて気づかなかったのだ。「そうね、そういうこともあるわよね」という自分の同棲時代を回顧するような感想しか十数年前には抱けなかった。青春時代の何たるか、学生運動の何たるかを知らず、物語の解像度が低かったのだ。その間どういう新たな経験をしたというわけでもなくただ馬齢を重ねただけの私に彼の文章の豊かさが染み渡るのである。

大江健三郎の帯文はこう書いている。「そして今日の

もっとみる
「されどわれらが日々-」柴田翔著を読みながら回想した。

「されどわれらが日々-」柴田翔著を読みながら回想した。

それは、1997~8年の出来事だったと思う。

夫が私の単身赴任先に遊びに来て夜になった。自衛隊の基地のあるその町の古本屋の店先で夫はハンナ・アーレントを選んで買い求めた。そのときの店主の眼が「されどわれらが日々-」の古本屋の店主の佇まいとそっくりだったのだ。一言「ハンナ・アーレント」と言って夫と私の顔を眼鏡越しに一瞥した。それ以上何も言わず、顔も何も語っていなかった。

自衛隊の基地の町とハンナ

もっとみる

土砂降りでも構わず飛んでいく その力が欲しかった

人が宣う地獄の先にこそ わたしは春を見る

繋がれていた縄を握りしめて しかと噛みちぎる

口の中はたと血が滲んで 空に唾を吐く

生まれた日からわたしでいたんだ 知らなかっただろ

米津玄師の「さよーならまたいつか!」の歌詞

このところ、心が温まるような投稿をしていないことに気づいた。
戦争は終わらないし、日本は円安で物価高が止まらないし、春だというのに心は浮き立たない。
せめて私生活は優しく暖かくありたいと思う。

雑誌「世界」5月号「ガザ攻撃はシオニズムに一貫した民族浄化政策である」早尾貴紀著をメモした(少し感想)

雑誌「世界」5月号「ガザ攻撃はシオニズムに一貫した民族浄化政策である」早尾貴紀著をメモした(少し感想)

(以下本文抜粋)〈10.7〉以降もおよそ半年にもわたり、世界の衆目を浴びながらも、なぜ大虐殺と大規模破壊が止められないのだろうか。逆に、このイスラエルの暴虐なガザ侵攻を、さらには占領そのものをいかに止めることができるのか。

この白人至上主義・ヨーロッパ中心主義は、自らを「進んだ文明」と位置づけることで優越性を訴え、外部を「遅れた野蛮」とみなし、その支配を正当化した。

※(感想) 遅れた野蛮の人

もっとみる
保阪正康氏著「近代日本の地下水脈」(2)を読んで

保阪正康氏著「近代日本の地下水脈」(2)を読んで

第4章 戦争が「営利事業」だった日本型資本主義

軍事が先導する日本型の資本主義は国家社会主義に近い性質のものであり、その地下水脈は現代の日本経済にも流れている。

日本企業の終身雇用、年功序列は多分に藩による武士の禄を食むという風潮を継承したものと思われる。

しかし、明治期の新政府は全国の武士を召し抱える金銭的余裕はなく、不満をなだめながら、リストラをし、一時金にて雇用関係を清算した。

一時

もっとみる
雑誌「世界」4月号「米中東政策の綻びはどこに向かうか イスラエル もうひとつのトランプ旋風」を読みながら

雑誌「世界」4月号「米中東政策の綻びはどこに向かうか イスラエル もうひとつのトランプ旋風」を読みながら

この論考を読んでいて私の脳裡に立ち上がったイメージがあった。
それはバイデンのようにイスラエルにエスカレートさせないような忠告なしに、トランプはイスラエルをスポイルドチャイルドのようにすべてを肯定するので、トランプは米国内のカトリック教徒や福音派のみならず、あるとすれば世界ユダヤ資本のようなものまでも味方につけているのだ。これがトランプの手強さなのだ。

ではイスラエル版「トランプ旋風」とは何か。

もっとみる
雑誌「世界」4月号「トランプふたたび」を読んで

雑誌「世界」4月号「トランプふたたび」を読んで

この鼎談(遠藤乾氏、渡辺将人氏、三牧聖子氏)で述べられている「もしトラ」は文字通りもしもトランプが当選したらであるが、「ほぼトラ」とは、バイデンが当選してもほぼトランプとおなじような政策しか取れない(社会情勢や有権者の動向によって)可能性があるということだ。例えば、メキシコ国境からの移民で溢れかえるテキサス州やフロリダ州の共和党の知事が移民をニューヨークやシカゴにバスで送りつけたりするようなことが

もっとみる
愛について考えたこと

愛について考えたこと

私はフラワー・チルドレンの名残で、ずっと若い頃から愛こそすべてだと信じてきた。
愛が人間を開放し、愛の中でこそ人間は完全に自由になると信じてきた。

古今東西、恋愛論は数多あれど読むまでもなく先に書いた通りの素朴な愛に関する信念を長年抱いてきた。

愛は自己犠牲である。でも本当の愛ならばそれが喜びなのではないか。森崎和江氏の詩の本の表紙にだって「愛することは待つことよ」と書いてあったし。

でも「

もっとみる
ワタシ的三島由紀夫像

ワタシ的三島由紀夫像

三島由紀夫は結局のところ、太宰治著「斜陽」に出てくる弟なのだ。
「太宰治のような女々しい奴」と三島は嫌っていたようだが、それは自身の女々しさを見るようで嫌だったのだろう。
民主化の流れに抗い、貴族的な文化・生活へのノスタルジーを捨て切れず、最後の貴族の砦が天皇だったのだ。
ところが貴族的なものを破壊する、ある種乱暴な民衆のエネルギー(戦後民主主義・60年安保・70年安保)を前にして、彼は最後の譲歩

もっとみる
「ポスト・キャピタリズム」 ポール・メイソン著 を読んで

「ポスト・キャピタリズム」 ポール・メイソン著 を読んで

とても経済の歴史の本としては興奮するトピックスが描かれている。

コンドラチェフの波、シュンペーターの波、マルクスの波の比較は私がもっと理解力があればもっと面白く読めただろう。

哀しいかな、私の能力の限界でマルクスの労働価値説の援用で未来は無料の世界と労働が最小限に抑えられ自由な時間を満喫できる世界になるという説は理解できなかった。

そして、資本主義は無料の世界ではなくサブスクリプションの世界

もっとみる
映画「ある男」 石川慶監督 2022年制作 を観て

映画「ある男」 石川慶監督 2022年制作 を観て

平野啓一郎氏原作

原作を読んだときには、驚くエピソードの連続で翻弄されストーリーを追いきれなかった。この映画は骨格を整理してミステリー仕立てに作り直されていて判りやすかった。

謎解きをする弁護士城戸は妻夫木聡、ある男の妻里枝を安藤サクラ、ある男を窪田正孝が演じる。

町の外からやってきた男(窪田正孝)は、善良な男で林業の見習いをしながら、里枝の文房具店に絵を描く道具を買いに来たのが馴れ初めで孤

もっとみる