未来の翼

主婦です。美味しいものを食べることと、読書が趣味です。

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最近の記事

映画「イコライザー」「イコライザー2」「イコライザー ファイナル」を観て

CIAを退任し、死んだことになっているロバート(デンゼル・ワシントン)は、世界中の市井の民を苦しめる犯罪組織と対峙して民を救う、という筋書きは世界を股にかける水戸黄門のようである。 ただ、ロバートは恰もパソコンゲーム「ディアブロ」の戦士のように容赦なく激しいバトルを繰り広げ、犯罪組織の中枢に迫って行く。 ピューリタン的几帳面さを忘れない生活態度は見習わなければならないと思う反面、その几帳面さで相手を殺していくシーンは何度も中断しなければならない程、目を覆いたくなる惨状が繰

    • 「浴槽」ジャン・フィリップ・トゥーサンを読んで

      「されどわれらが日々ーー」と並行して読んでいた。 引きこもりのパリジャンの話かと思っていたら、「されどわれらが日々ーー」と同じく青春のさなかにあり、死すべき人間の長い猶予期間をもて余すという物語だ。 「浴槽」の主人公は、自分がいずれ死ぬことで、死刑囚の死刑執行までの猶予期間のようでありながらそれは長すぎると感じている。何事にも意味を見出だせない。「どうせ死んでしまうのだから」 彼はバスタブで一日の大半を本を読んで過ごす。 崇高なき日常を生きる 大文字の他者の不在 自由

      • アマゾンプライムビデオでG.W中の特別企画で「ゴジラ-1.0」が観れます。 ゴジラは日本人にとって破壊神なのでしょうか。 恐怖とともに畏怖を、そしてその死には崇高を感じさせる何かがあります。 あとはネタバレになるので控えます。

        • 「されどわれらが日々――」柴田翔著を読んで

          柴田翔の滋味あふれる文章に私はかつて気づかなかったのだ。「そうね、そういうこともあるわよね」という自分の同棲時代を回顧するような感想しか十数年前には抱けなかった。青春時代の何たるか、学生運動の何たるかを知らず、物語の解像度が低かったのだ。その間どういう新たな経験をしたというわけでもなくただ馬齢を重ねただけの私に彼の文章の豊かさが染み渡るのである。 大江健三郎の帯文はこう書いている。「そして今日の日本文学は この真摯な秀作を必要とするばかりか この作品に別れを告げ 現実と未来

        映画「イコライザー」「イコライザー2」「イコライザー ファイナル」を観て

        • 「浴槽」ジャン・フィリップ・トゥーサンを読んで

        • アマゾンプライムビデオでG.W中の特別企画で「ゴジラ-1.0」が観れます。 ゴジラは日本人にとって破壊神なのでしょうか。 恐怖とともに畏怖を、そしてその死には崇高を感じさせる何かがあります。 あとはネタバレになるので控えます。

        • 「されどわれらが日々――」柴田翔著を読んで

          「されどわれらが日々-」柴田翔著を読みながら回想した。

          それは、1997~8年の出来事だったと思う。 夫が私の単身赴任先に遊びに来て夜になった。自衛隊の基地のあるその町の古本屋の店先で夫はハンナ・アーレントを選んで買い求めた。そのときの店主の眼が「されどわれらが日々-」の古本屋の店主の佇まいとそっくりだったのだ。一言「ハンナ・アーレント」と言って夫と私の顔を眼鏡越しに一瞥した。それ以上何も言わず、顔も何も語っていなかった。 自衛隊の基地の町とハンナ・アーレントのそぐわなさは、基地の町と古本屋のそぐわなさにもつながっていた。異世

          「されどわれらが日々-」柴田翔著を読みながら回想した。

          土砂降りでも構わず飛んでいく その力が欲しかった 人が宣う地獄の先にこそ わたしは春を見る 繋がれていた縄を握りしめて しかと噛みちぎる 口の中はたと血が滲んで 空に唾を吐く 生まれた日からわたしでいたんだ 知らなかっただろ 米津玄師の「さよーならまたいつか!」の歌詞

          土砂降りでも構わず飛んでいく その力が欲しかった 人が宣う地獄の先にこそ わたしは春を見る 繋がれていた縄を握りしめて しかと噛みちぎる 口の中はたと血が滲んで 空に唾を吐く 生まれた日からわたしでいたんだ 知らなかっただろ 米津玄師の「さよーならまたいつか!」の歌詞

          このところ、心が温まるような投稿をしていないことに気づいた。 戦争は終わらないし、日本は円安で物価高が止まらないし、春だというのに心は浮き立たない。 せめて私生活は優しく暖かくありたいと思う。

          このところ、心が温まるような投稿をしていないことに気づいた。 戦争は終わらないし、日本は円安で物価高が止まらないし、春だというのに心は浮き立たない。 せめて私生活は優しく暖かくありたいと思う。

          雑誌「世界」5月号「ガザ攻撃はシオニズムに一貫した民族浄化政策である」早尾貴紀著をメモした(少し感想)

          (以下本文抜粋)〈10.7〉以降もおよそ半年にもわたり、世界の衆目を浴びながらも、なぜ大虐殺と大規模破壊が止められないのだろうか。逆に、このイスラエルの暴虐なガザ侵攻を、さらには占領そのものをいかに止めることができるのか。 この白人至上主義・ヨーロッパ中心主義は、自らを「進んだ文明」と位置づけることで優越性を訴え、外部を「遅れた野蛮」とみなし、その支配を正当化した。 ※(感想) 遅れた野蛮の人びとがなぜ支配されなければならないのか、理屈が分からない。「支配の正当化」?どこ

          雑誌「世界」5月号「ガザ攻撃はシオニズムに一貫した民族浄化政策である」早尾貴紀著をメモした(少し感想)

          保阪正康氏著「近代日本の地下水脈」(2)を読んで

          第4章 戦争が「営利事業」だった日本型資本主義 軍事が先導する日本型の資本主義は国家社会主義に近い性質のものであり、その地下水脈は現代の日本経済にも流れている。 日本企業の終身雇用、年功序列は多分に藩による武士の禄を食むという風潮を継承したものと思われる。 しかし、明治期の新政府は全国の武士を召し抱える金銭的余裕はなく、不満をなだめながら、リストラをし、一時金にて雇用関係を清算した。 一時金はすぐに生活費に消えてしまったが、それを元手に商売を始める者が出現した。その大

          保阪正康氏著「近代日本の地下水脈」(2)を読んで

          雑誌「世界」4月号「米中東政策の綻びはどこに向かうか イスラエル もうひとつのトランプ旋風」を読みながら

          この論考を読んでいて私の脳裡に立ち上がったイメージがあった。 それはバイデンのようにイスラエルにエスカレートさせないような忠告なしに、トランプはイスラエルをスポイルドチャイルドのようにすべてを肯定するので、トランプは米国内のカトリック教徒や福音派のみならず、あるとすれば世界ユダヤ資本のようなものまでも味方につけているのだ。これがトランプの手強さなのだ。 ではイスラエル版「トランプ旋風」とは何か。それは、イスラエル国内にもトランプのような暴言・煽動をする政治家が支持を拡大して

          雑誌「世界」4月号「米中東政策の綻びはどこに向かうか イスラエル もうひとつのトランプ旋風」を読みながら

          雑誌「世界」4月号「トランプふたたび」を読んで

          この鼎談(遠藤乾氏、渡辺将人氏、三牧聖子氏)で述べられている「もしトラ」は文字通りもしもトランプが当選したらであるが、「ほぼトラ」とは、バイデンが当選してもほぼトランプとおなじような政策しか取れない(社会情勢や有権者の動向によって)可能性があるということだ。例えば、メキシコ国境からの移民で溢れかえるテキサス州やフロリダ州の共和党の知事が移民をニューヨークやシカゴにバスで送りつけたりするようなことがあった。また、穏健派を固持できない世界情勢に対処せざるを得ないことがある。 こ

          雑誌「世界」4月号「トランプふたたび」を読んで

          愛について考えたこと

          私はフラワー・チルドレンの名残で、ずっと若い頃から愛こそすべてだと信じてきた。 愛が人間を開放し、愛の中でこそ人間は完全に自由になると信じてきた。 古今東西、恋愛論は数多あれど読むまでもなく先に書いた通りの素朴な愛に関する信念を長年抱いてきた。 愛は自己犠牲である。でも本当の愛ならばそれが喜びなのではないか。森崎和江氏の詩の本の表紙にだって「愛することは待つことよ」と書いてあったし。 でも「虎に翼」で寅子が「結婚は罠だ!」と叫んだのを聞いてから、私は愛も「支配のための罠

          愛について考えたこと

          ワタシ的三島由紀夫像

          三島由紀夫は結局のところ、太宰治著「斜陽」に出てくる弟なのだ。 「太宰治のような女々しい奴」と三島は嫌っていたようだが、それは自身の女々しさを見るようで嫌だったのだろう。 民主化の流れに抗い、貴族的な文化・生活へのノスタルジーを捨て切れず、最後の貴族の砦が天皇だったのだ。 ところが貴族的なものを破壊する、ある種乱暴な民衆のエネルギー(戦後民主主義・60年安保・70年安保)を前にして、彼は最後の譲歩をする。 東大全共闘との討論会で、天皇を認めてくれれば手を組もうと。 そこにはア

          ワタシ的三島由紀夫像

          「ポスト・キャピタリズム」 ポール・メイソン著 を読んで

          とても経済の歴史の本としては興奮するトピックスが描かれている。 コンドラチェフの波、シュンペーターの波、マルクスの波の比較は私がもっと理解力があればもっと面白く読めただろう。 哀しいかな、私の能力の限界でマルクスの労働価値説の援用で未来は無料の世界と労働が最小限に抑えられ自由な時間を満喫できる世界になるという説は理解できなかった。 そして、資本主義は無料の世界ではなくサブスクリプションの世界を創り出し、この本の出版から数年経っているが私たちはいまだに払い続け、そのために

          「ポスト・キャピタリズム」 ポール・メイソン著 を読んで

          映画「ある男」 石川慶監督 2022年制作 を観て

          平野啓一郎氏原作 原作を読んだときには、驚くエピソードの連続で翻弄されストーリーを追いきれなかった。この映画は骨格を整理してミステリー仕立てに作り直されていて判りやすかった。 謎解きをする弁護士城戸は妻夫木聡、ある男の妻里枝を安藤サクラ、ある男を窪田正孝が演じる。 町の外からやってきた男(窪田正孝)は、善良な男で林業の見習いをしながら、里枝の文房具店に絵を描く道具を買いに来たのが馴れ初めで孤独だった男は里枝に友達になってください、と申し込み名前の交換をした。男の名は谷口

          映画「ある男」 石川慶監督 2022年制作 を観て

          映画「怪物」クイアをめぐる批判と是枝裕和監督の応答(記事)を読んで

          是枝裕和✕坪井✕児玉鼎談(抜粋) 朝日新聞デジタルRE RONより 【是枝】あの少年たちと同じような状況の子たちへの勇気づけとか、寄り添って肩を抱くみたいなスタンスはおこがましいと思ってしまう。それはテレビのドキュメンタリーをやっている時からそうで、むしろ弱者に寄り添って分かったつもりになることを回避したいと思ってきた。 【坪井】けれど、「マイノリティ当事者を描いた作品をつくる」のであれば、本編に描かれた者と同様に弱い立場に置かれている者たちが作られた映画をどう受け取るか

          映画「怪物」クイアをめぐる批判と是枝裕和監督の応答(記事)を読んで