見出し画像

ずらして、ひねって、妄想する DESIGN #29 「メソトロジー3」(検証編)

 新たなアイデアを生み出すための「ずらして、ひねって、妄想する」事例を紹介します。

 ずらして、ひねって、妄想する DESIGN #26 「インスピレーション6」(目的再定義編)において、「枠外」の新たなアイデアを導出するためには、「ずらして、ひねって、妄想する」の「ずらす」と「ひねる」を行うことにより、目的を再定義する必要があると説明しました。

 そして、特に「ずらす」のフェーズにおいて、アブダクションの事象より、法則(事例)を抽出し、仮説を導く場合、導き出すことができる仮説は、はじめから大きく異なる仮説を導き出すことは困難であるため、一度カテゴリーを「ずらす」ことにより、最終的に大きく異なる仮説を導き出すというプロセスを経る必要があることを説明しました。

 しかし、ずらして、ひねって、妄想する DESIGN #27 「メソトロジー1」(「枠内」編)において確認したように、「枠外」のアイデアを導出する上で、「ずらす」を行った場合であっても、大きく異なる仮説を導き出すことはできず、目的を再定義することはできませんでした。

 それでは、目的を再定義する上で、「ずらす」のフェーズと「ひねる」のフェーズにおいて、どうようにずらせば、目的を再定義することができるのでしょうか。

 今回は、ずらして、ひねって、妄想する DESIGN #27 「メソトロジー1」(「枠内」編)と#28 「メソトロジー2」(「枠外」編)を比較することにより、目的を再定義することができる特性を確認することとします。

【「ずらす」のフェーズにおける検証結果】

 「枠内」のアイデアの事例と「枠外」のアイデアの事例を比較した結果、「枠内」のアイデアを導出した事例の場合、究極的状況を想起し、類似事例を知覚した際に「ずらす」を行っていました。

 一方で、「枠外」のアイデアを導出した事例の場合、究極的状況を想起し、類似事例を知覚することにより、脳内において比較機能が働いた際(アブダクション(事象))に「ずらす」を行っていました。

 このように、「枠内」のアイデアを導出した事例の場合、類似事例のフェーズで「ずらす」を行いましたので、「ナイフで切る」から「ガラスで切る」、「オムツ」から「便」、「パン」から「飲み物」というように、究極的状況を想起した内容に類似する(同じ)カテゴリーに「ずらす」を行なっただけとなりましたので、目的を再定義することができませんでした。

 一方で、「枠外」のアイデアを導出した場合、アブダクション(事象)のフェーズで「ずらす」を行いましたので、究極的状況を想起した内容に対して、比較することにより、「日本」から「発展途上国」、「オムツ」から「便」、「デブリ」から「人工衛星」というように、異なるカテゴリーに「ずらす」を行いましたので、目的を再定義することができました。

 その結果、類似事例のフェーズにおいて「ずらす」を行うのではなく、批判的思考が働いたのちのアブダクションの事象・法則(事例)のフェーズにおいて「ずらす」を行い、カテゴリーを転換してから「ひねる」を行うことによって、カテゴリーが異なる仮説を抽出することができることから、目的を再定義できることを確認しました。

【「枠内」のアイデアの「ずらす」のフェーズ】

(「折る刃式カッターナイフ」の思考プロセス)
・「ナイフを砥がなくてもきれいに紙を切ることができないのか」 究極的状況想起
・「ガラスで革をきれいに切るとき、砥がずに割っている」 類似事例 ※ずらす(「ナイフ」→「ガラス」)
・「ガラスがきれいに割れない」 固定観念 アブダクション事象
・「本当にガラスをきれいに割ることができるのか」 本質探究の問い
・「板チョコは割れ目が入っているのできれいに割れる」 新機会 アブダクション法則(事例)  ※ずらす(「ガラス」→「板チョコ」) ※ひねる(「割れない」→「割れる」)
・「ナイフに折れ目を入れるときれいに折れる」 虚構的機能 アブダクション仮説 ※妄想する
・「折る刃式カッターナイフ」 アイデア

(「便意感知オムツ」の思考プロセス)
・「大人(人間)は、便を漏らすことはないが、赤ちゃんはどうして便を漏らすのか」 ※ずらす(「オムツ」→「便」) 究極的状況想起
・「赤ちゃんは自分の意思を周りの人に伝えることができないため、便を漏らしているのではないのか」 類似事例 ※ずらす(「便」→「便意」)
・「どうして赤ちゃんは、自分の意思を伝えることができないのか」 固定観念 アブダクション事象
・「(本当は)大人が気付いていないだけではないのか」 本質探究の問い
・「大人がいつもそばにいるわけではないので、その予兆に気付くことができない場合があるのではないのか」 新機会 アブダクション法則(事例)
・「オムツとお腹が接している箇所に便意の予兆となる動きがあるのではないのか」 アブダクション仮説 ※ひねる(「予兆できない」→「予兆できる」)
・「便意の予兆となるお腹に動きを活用する」 虚構的機能 ※妄想する
・「お腹の動きを感知する」 新技術
・「便意感知オムツ」 アイデア

(「朝食文化」の思考プロセス)
・「日本では朝食をあまり食べずに会社や学校へ行く人が多い」 究極的状況想起
・「ご飯やパンなどの食べ物は時間がかかるので食べない」 固定観念 アブダクション事象
・「本当に時間がないため、朝食を食べないのか」 本質探究の問い
・「コンビニでコーヒーをテイクアウトし歩きながら飲んでいる」 新機会 ※ひねる(「栄養補充」から「水分補給」) アブダクション法則(事例)
・「朝食を食べないのは、食べるのに時間がかかるからである」
・「短時間で栄養補充できる飲み物にする」 類似事例 ※ずらす(「飲み物」から「豆乳」)  アブダクション仮説
・「豆乳により短時間で栄養補充することができる」 アイデア

【「枠外」のアイデアの「ずらす」のフェーズ】

(「検診不要薬」の思考プロセス)
・「発展途上国では不衛生な中でも健康診断をすることなく健康に育っている」 究極的状況想起
・「発展途上国では不衛生であることもあり免疫力が高い」 類似事例(推察)
・「日本では衛生面に配慮しすぎるため免疫力が低下している」 固定観念 ※ずらす(「発展途上国」→「日本」) アブダクション事象
・「日本においても発展途上国と同様の環境を作ることはできないのか」 本質探究の問い
・「(発展途上国のように)ある一定のレベルまで衛生面のレベルを低下させることにより免疫力を高めることができる」 新機会 アブダクション法則(事例) ※ひねる(「不衛生」→「免疫力を高める」)
・「予防接種的な発想を活用できる」 ※ひねる アブダクション仮説
・「赤ちゃんに対してあえて菌(常在菌)を投与することにより免疫力を高めることができるのではないのか」 虚構的機能 ※妄想する
・「検診不要薬」 アイデア

(「簡易検診オムツ」の思考プロセス)
・「夜の間に排泄物をした場合、排泄物はオムツの中に入ったままである」 究極的状況想起
・「赤ちゃんが不快に思い、夜泣きをすると赤ちゃんは適正な睡眠時間がとれない」 類似事例
・「オムツの中にある排泄物はどうしようもなく、不快なものである」 固定観念 ずらす(「オムツ」→「便」) アブダクション事象
・「オムツの中にある排泄物はどうすることもできないのか」 本質探究の問い
・「排泄物である便は大腸がん検査に使っている」 新機会 ※ひねる(「役に立たない(臭い・汚い)」→「役に立つ(情報入手)」) アブダクション法則(事例)
・「排泄物の情報を上手く利用することはできないのか」 アブダクション仮説
・「先日、センサーが組み込まれた慢性創傷を監視し、薬物治療を促進するスマート包帯の記事を見た」 ※妄想する
・「センサーで医学的な情報を入手することにより、常時健診を受けていることになり、デバイス化することにより、排泄物がでた場合に親に知らせることで、いつもきれいな状態に保つことができる」
・「簡易検診オムツ」 アイデア

(「発電デブリ」のアブダクションのプロセス)
・「デブリを除去する方法として、捕獲する、粉砕する、融解することを検討した」 究極的状況想起
・「デブリを金属板に当て軌道修正をし、大気圏に突入させるということを検討した」 類似事例
・「デブリを除去するためのアイデアは物理的(強度)に困難であることが分かった」 固定観念 アブダクション事象
・「人工衛星の太陽光パネル発電から新たなアイデアがでないか検討した」 新機会 ※ずらす(「デブリ」→「人工衛星」)  アブダクション法則(事例)
・「衝突の振動を活かせないか」 本質探究の問い ディダクション
・「振動を電気に変える技術がある」 ※ひねる(「衝撃」→「発電」) ※妄想する アブダクション仮説ディダクション
・「発電デブリ」 アイデア

【「目的」「機能」のレイヤーにおける検証結果】

 「枠内」のアイデアの事例と「枠外」のアイデアの事例を比較した結果、「枠内」のアイデアを導出した事例の場合、新たな機会を抽出した際、物理は転換したものの、当初の目的・機能がアンカーとなったため、機能は転換できなかったことから、目的・機能のレイヤーにおいて、新たな機能を抽出したのちも、当初の目的・機能が最終アイデアまで継続することとなりました。

 一方で、「枠外」のアイデアを導出した事例の場合、新たな機能を抽出した際、物理が転換すると共に機能も転換できたことから、目的・機能のレイヤーにおいて、新たな機会を抽出したのち、目的・機能は転換しました。

 このように、「枠内」のアイデアを導出した事例の場合、当初の目的・機能が最終アイデアまで継続しましたので、「切れ味良く」がアンカーとなり「きれいに分割」「切れ味良く」、「漏れ防止」がアンカーとなり「知らせる」「漏れ防止」、「健康増進」がアンカーとなり「健康維持」「健康増進」というように、新たな機会を抽出したものの、目的、機能を大きく転換することはできませんでした。

 一方で、「枠外」のアイデアを導出した事例の場合、新たな機会を抽出したのち、異なる目的・機能へ転換することができましたので、「健康診断」から新たな機会である菌により「感染拡大」「病気予防」、「漏れ防止」から新たな機会である大腸がん検診により「健康診断」「健康管理」、「人工衛星破壊」から新たな機会である太陽光発電により「エネルギー」へ、目的・機能を大きく転換することができました。

 その結果、新たな機会である物理を抽出した際、目的・機能のレイヤーにおいて、当初の目的・機能とは全く異なる目的・機能となることにより、カテゴリーの異なる仮説を抽出することができることから、目的を再定義できることを確認しました。

【「枠内」のアイデアの「目的」「機能」のレイヤー】

(「折る刃式カッターナイフ」のenabler framework(※))

画像1

※enabler framework
 enabler frameworkとは、確実に機能する「意味ある多視点」を見つけ出すための枠組みであり、最上位の視点を「目的」とし、目的を実現するために必要な「機能」を設定する。更に「機能」の視点を実現するために、「物理」を設定する。そして、「物理」「機能」「目的」を行き来するなど、多視点で捉えることにより、新たな価値を創造することができる。

(「便意感知オムツ」のenabler framework)

画像2


(「朝食文化創造」のenabler framework)

画像3


【「枠外」のアイデアの「目的」「機能」のレイヤー】

(「検診不要薬」のenabler framework)

画像4


(「簡易検診オムツ」のenabler framework)

画像5


(「発電デブリ」のenabler framework)

画像6


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?