文庫版『子牛ブンバッポブンバッポ』レビュー

文庫版になって大幅に改変された名作『子牛ブンバッポブンバッポ』。
原著版のファンだった私は、今作の出来は正直かなり心配だった。
榎田伝伝三郎が生み出す独特なニヒリスティックな世界観。
それが改悪されているのではないかという不安がつきまといながら読み進めた。
読み終えて思ったことは、マジでクソだったということだ。

原著版と比べてとにかく明るい。
大学デビューで無理して明るく振舞ってるやつみたいになっている。
読みながら「マジか!」「マジか!」と何度も口に出して言ってしまった。
文庫版をなぜみんな絶賛しているのかが全く理解できない。
これが時代というやつなのか。
私は受け入れられない。

最悪だったのはエンディングの変更だ。
本当にやめてほしかった。
原著版にあったエンディングの首チョンパ祭りがごっそりカットされている。
あの場面がない『子牛ブンバッポブンバッポ』はもはや『子牛ブンバッポブンバッポ』ではない。
あの場面にこの作品の全てが詰まっていると言っても過言ではない。
人間という生物の素晴らしさ、しょぼさをどの作品よりも鮮烈に表現した重要な場面なのだ。
代わりのエンディングがただの飲み会になっていたのが本当に許せない。
榎田伝伝三郎はいったいどうしてしまったのか?
なぜこんなにも丸くなってしまったのか?
人は偉くなるとロクなことにならないということを再確認した。