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氷見は「海乃美月」と言う名に相応しい海の美しい漁師町だった。

富山県氷見市。

果てしなく広がる美しい海、向こうには立山連峰が見える漁師町。

「海乃美月」と言う芸名そのものの美しい海が広がる町だった。

全国的には「氷見の寒ブリ」で有名な町だが、宝塚ファン的には月組トップ娘役・海乃美月さんの生まれ故郷。子供の頃からブリが大好きな私は、宝塚ファンになる前から「いつか氷見で寒ブリを食べたい」と思い続けていた。寒ブリのシーズンはとっくに終わっているけれども、氷見にはいつか行ってみたかった。

高岡からJRで向かう。海のすぐ横を通る電車に揺られ、いつか訪れたい町へ着いた。雨晴海岸あたりの風景も良かったな。ここまで海に近い線路ってなかなか無いんじゃないかってぐらいに近い。

まず、海沿いをのんびり散策しながら朝食を。


ここは有名どころで、休日は何十分待ちともなる場所。所狭しと車が走っていて、実際に競りが行われている中にある食堂。氷見浜丼の「ちょっこし盛り(小盛)」小盛りとは言えお刺身はいっぱい入っている。お刺身はもちろん美味しいんだけど、米!!ご飯が美味しかったな。さすが富山県と唸った。観光地価格と言われたそうかもしれないが、土鍋で漁師汁まで付いての値段は財布にも優しい。

腹ごなしに橋を渡って海を眺めつつ、ひみ番屋街でお土産を物色。どこからいらっしゃったんですか?兵庫県です、あぁ兵庫県!~と言う会話の流れで、海乃美月さんの話になった。

「海乃美月って素敵な芸名ですよね。この海に浮かぶ月が本当に綺麗なんですよ。うっすらと月の光が海面に映る時があって。芸名はそこから来るのかな。本当に綺麗なので是非見て欲しいです」

雲一つない真っ青な空、果てしなく広がる穏やかな海。きっとここから見える月も美しいだろうなぁと想像し目を細めた。



氷見は漫画家・藤子不二雄Aさんの出身地。生家のお寺を始めあちこちにキャラクターのモニュメントがある。私の世代にはとってもエモい町でもある。ハットリくんや怪物くん、プロゴルファー猿に笑ぅせぇるすまん等を見て育ったまさにその世代。UBやビリケンも懐かしいなぁ、全部見て育ったよ。それぞれの主題歌が脳内でリフレインする。全部歌える。確かパーマンとハットリくんの2本立ての番組があったなー、あのテーマソングも覚えている。愉快なー愉快なーってあの歌ね。藤子不二雄ワイドだった。

観光地ナイズされていないよくある地方のアーケード街。人はまばらだ。そのアーケードのあちこちにハットリくんやビリケンのモニュメントがある。

そのモニュメント達を追いかけていると、魚屋さんの軒先に干されている干物が目に飛び込んだ。地元のスーパーなんかじゃお目に掛かれないような立派な干物だった。常連客と店のおばちゃんが談笑している中、干物の値段を聞くと「1枚500円だよ」500円とはとても思えない立派な干物だった。その奥に何十年と使われていそうなフライヤーに、無造作に揚げられた小アジ。あれはいくら?と聞いたら「あー、それ350円」と、パックに無造作に入れてくれた。そんなところも飾らなくていいな。

ここでも海乃美月さんの話が出て、お客さんのおばあちゃんが「海乃美月ちゃんは孫の同級生なの。ここから宝塚までバスを出してみんなで観に行くんだよ」「孫は何度も応援に行ったよ」と教えてくれた。

小アジは小骨までそのまま食べても美味しくて、パックに沢山入れてくれたので食べきれなかった分は南蛮漬けにしてみた。鯖の干物はとてもじゃないけど1枚食べきれる大きさではなく、ふっくらジューシーでこれで500円は破格だわ。さすが海の町。

この土地が、この海が「海乃美月」を生んだのだ。

美しい山と海を眺め、美味しい魚とご飯を食べて(笑)、この飾らない町の空気で育ったのだ。海乃美月さんの魅力は月組トップ娘役としての眩いオーラはもちろんあるけれども、どちらかと言うと人間らしさが好きなのだ。少女のような純粋さと言うよりも、海乃美月さんにしかない「強く」そして「しなやかな」な部分。タカラジェンヌと言う職業であるだけで、私達と同じ働く女性である事。地に足が付いた年齢相応の女性らしさと言うか。

この海だっていつも美しい訳ではない。時として自然の牙を剥く事もあるだろう。人の命を脅かすぐらいに荒れ果てる事もある。厳しい寒さに晒される事もあるだろう。海乃さんだって決して順風満帆ではなかった宝塚人生だった。ケガで休演もあったし、ヒロイン故の重圧もあっただろう。表には出さない・口にはしない色々な思いを抱えて月組のトップ娘役になったはずだ。就任してからもコロナ禍で思い通りにいかない日々。だけど、舞台に立つ姿は美しく凛としていて毎回感動を与えてくれる。今日、この日見た美しい海のように。写真に収めた美しい風景のように心に残るものを届けてくれる。

大好きな町が1つ増えた。皆さんも是非訪れて欲しい。

氷見駅から日帰りで歩いて行ける範囲だと、漁港の市場食堂で海鮮丼を食べて番屋街でお土産を買った後にあちこちのモニュメントを見るぐらいかなぁ。月組ファンはミュージアムでハガキ買ってハットリくんのポストからお手紙書いて投函すればいいと思う!遊覧船の時期が合えばいいし、レンタルサイクルで足を伸ばして「氷見きときと寿司」や「海津屋」でランチしてもいい。ロードバイクも良さそう!海沿いをサイクリング出来たら素敵だなぁ。寒ブリ以外にも四季を通して美味しいお魚やお酒もあるし、駅から離れるが温泉宿もある。ゆっくりと羽を伸ばしたい。

そしていつか、海を照らす美しい月を眺めたい。