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宙組OGに「私の黒歴史」を笑い飛ばされた日の事

あの日の12月、武庫川の冷たい風は容赦なく私の身と心を突き刺した。

宙組のアナスタシアを観劇した帰り道に泣いた。

劇中に出てくる、グレゴリー伯爵(星月梨旺さん)とその夫人(小春乃さよさん)のとても仲睦まじい夫婦の演技を見て、婚活が上手く行かず精神ズタボロだった私は惨めになり観劇帰りに泣けて来た。大好きな宙組の好きな人のお芝居なのにとても辛かった。

とにかくやさぐれていた。ただでさえ世の中から突き放されている気がしているのに、武庫川の風まで冷たいんかい!と思ったら余計に悲しくなった。

コロナ禍真っただ中で、様々な不安に苛まれていた。

「とにかく漠然とした不安」だった。もっとちゃんと自分に向き合わず、何に対して不安かを整理する事もなく、とにかくこの状況を変えようとしてみたが全て空回っていた。無理なダイエットをしていたのもこの時期で、”周りに”一人前の人間として認めて欲しかった。

30代も終わろうとしてので焦って婚活を始めてみた。

ただ焦っていたからだった。何とかして状況を変えたくて、何故結婚したいのか?どう言う結婚観なのか?どんなマインドセットで臨むのか?も全く理解していなかった。それよりもネット上で婚活テクニックだけを熱心に探し「アラフォー女性は高望み」「需要が無い」「年齢を弁えよ」と言われていたので出来るだけ弁えようと思いながら始めた。

最初に申し込みが来たのが「60歳バツイチ・子供が大学を卒業して独立しました」と言う男性でショックを受けた。あぁやっぱりアラフォーはその程度の立ち位置なのだと落ち込んだ。余程住まいや年齢が離れている事が無ければ、こんな私程度に申し込んでいただいているので申し訳ないから…と言う消極的な理由でお見合いを受けていた。今思うと態度に出ていたんだと思うが、仲人から「喋り方がきつい」「怒ってるように見える」と言われてもどう改善していいのか分からなかった。出来るだけ頑張って愛想よく相槌を打つように努力してみたが消耗するだけだった。そのうち段々と仲人と険悪になり嫌気がさして退会した。

私には愛する伴侶を得るような価値が無いんだ。

子供が欲しいには応じられる年齢じゃないかもだけど、年収1000万円のハイスぺイケメンを望んでいる訳じゃない。結婚しても今の仕事を変わらず続けたいし取りたい資格もある。お互いに病気や怪我の時に支え合えて、月に1~2回、休みの日にワイン1本を2人で開けて美味しいものでも食べたい。イオンモールでもサイゼリヤでもいいのにな。

それすらも叶わない私は…みたいな事を思いながら阪急電車に揺られた。

アナスタシアの曲を聞くと、僕の心のやらかい場所を締めつけるようで辛かった。いい曲なんだけどね~。ブルーレイを買ったけどしばらく未開封のままビニールすら破らずに放置していた。

と、言うアラフォー女性の痛すぎる黒歴史を、2年の時を経てまさかご本人達に話すことになるとは思わなかった。

ある日、フェモネのポップアップイベントに、グレゴリー伯爵を演じた星月梨旺さんとアナスタシアに出演されていた綾瀬あきなさんが立たれていた。

フェモネの商品の事など取り留めない話の中、どんなきっかけか忘れたけどあの日の12月の黒歴史を話す流れになった。今だから言えるんですけどね、私あのアナスタシアを観た帰りに泣いたんですよ~。あの時婚活が上手く行っていなくて、グレゴリー伯爵夫婦を見てたら泣けて来てね~と。あくまで笑い話っぽく伝えたつもりだったが…

グレゴリー伯爵夫妻を見て落ち込んで泣いて劇場を後にしたファンが居た。なんて聞かされて、演じた当人は笑いながらも若干リアクションに困っていたように見えた。そんな風にあの演技を見られてるなんて思わないよね…言うんじゃなかったかな…申し訳ないなと思った。

が、その横で「えっ!アナスタシアですよね??アナスタシアって泣く話じゃないですよね!!」えび様が大笑いしていた(笑)

小さな身体を仰け反らせて、ちょっと笑い過ぎじゃないですか?って位に笑い飛ばしてくれた。マスク越しだけど笑い声が大きかった。

えび様の余りにも豪快な笑い声に釣られて3人でひとしきり笑った。

散々笑った後に「で、どんな人と結婚したいんですか?」と聞かれ、咄嗟に神々の土地のガリツキー将軍みたいな人!と答えた。節子、それ結婚したい人やない、星月梨旺さんが演じられた役の中で一番好きな役や。

ガリツキー将軍!!とまたえび様は大笑いされた。そして当のガリツキー将軍を演じたご本人から「ガリツキーは60歳ですけど年齢差は大丈夫ですか?」と真顔で聞かれた。「ロシア人と結婚するの今はちょっと難しいですよね~出会いがねぇ」とえび様は笑い続けていた。

いや、私別にロシア人と結婚したい訳ではないんだけど…

えび様に笑い飛ばされた事でやっとあの日の涙を笑い飛ばせた気がした。黒歴史の恥の上塗りともいえるけど…薄々と「もう1度婚活やってみるかな」と言う気持ちにはなっていたが、えび様の豪快な笑い声が後押しをしてくれた気がした。

あの日の12月とは違う。

今の私は武庫川の風に泣く事はない。

まずは自分を大切にその上で出会いとご縁を繋いでいきたい。婚活に限らず友人関係や宝塚ファンの人も含めこれから出会う人すべてに思っている。

コンプレックスだった喋り方がきつい。その時は大体緊張している時だと気づいた。あとお前は嫌いだ!と言う態度に出ている時(笑)私はこう見えて人見知りだしビビりだけど怖がりはお互い様。初対面でいい印象を持って欲しいし緊張する。人間を必要以上に怖がる事は無い。威嚇したり態度の大きい人って案外小心者だったりするしね。

あれからスペースで人の前で喋るようになったのも大きいな。あんなにコンプレックスだった喋り方や声が「聴きやすい」「声がいい」と言われてビックリした。でもよくよく考えてみたら「キツい・態度がでかい」とも言われるけど「ハッキリしている・分かりやすい」とも言われる。みんながみんなキツいと思ってる訳じゃない。声って生理的な好みがあるもの仕方ないよね。(スペースに誘ってくれたあっぽーさんや聞いてくれているみなさんに感謝したい)

会いたい人に会ってみて色んな人の価値観に触れてみる。その先に続くご縁があれば良いなと思っている。価値観の合わない人・ご縁が無い人は深追いしない。そう言った人達からも「世の中色んな人がいるなぁ」と学ぶことにする。そう思って生きていこうと思う。

そうそう、1番大事な「条件」がある。私の人生には宝塚歌劇がある!

生涯独身だったとしても、老後だって観劇を楽しみに杖を付きながら張り切って花のみちを歩くおばあちゃんでありたい。さっき食べたご飯を忘れてもスターの名前は忘れないおばあちゃんで居たい。パートナーが出来たら、独身の今みたいなペースではなく家庭の負担にならない程度のバランスを考えるから。とにかく観劇はさせて欲しい!

出来れば宝塚大劇場から一時間以内の場所に住めたらいいな〜(笑)