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クックパッドとクラシルのビジネスモデル比較を通じて 『ビジネスモデルキャンバス』を理解する

みなさんこんにちは林です!
普段は教育系ベンチャーの「POPER」でCOOを務めています。

今回は特定の企業のビジネスモデルの深堀りでなく、「ビジネスモデル分析方法」としてメジャーな、ビジネスモデルキャンバスについて解説する記事です。

特定の会社のビジネスモデルを理解するためには「図解」を用いてビジネスの構造を理解することが有効です。

そのために一番簡易的で取り組みやすい図解のフレームワークは「ピクト図解」と呼ばれる手法です。
登場人物と、その間に発生するお金の流れにフォーカスした図解方法です。

▽こんな感じのやつですね。

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一方でピクト図解は要素を省いた図解のため、ケースによっては「ピクト図解ではその会社の特徴や成功の要因を理解できない」というケースもあります。

そんなときは、より細かくビジネスの構造を分解して図にした「ビジネスモデルキャンバス」が有効となります。
今回は日本における2大レシピサービスである、「クックパッド」と「クラシル」のビジネスモデルを比較しながら、ビジネスモデルキャンバスを用いた分析方法を解説します。

※ビジネスモデルの学び方と基本となる型については先日こちらのnoteにまとめたので、より詳しく知りたい方はこちらもご覧ください

■分析対象サービスのご紹介

・クックパッド / Cookpad

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1998年に開設された料理レシピサービス。
CGM(Consumer Generated Media)と呼ばれる、「ユーザーがコンテンツを作っていく形式のメディア」の先駆け的な存在であり、ユーザーが自身のレシピを投稿できることが特徴です。

2009年に上場し、2021年現在で利用者は5400万人を超え、349万品を揃える日本最大規模の料理レシピサービスとなっています。
売上100億(2020年12月期)、時価総額330億(2021/4/10時点)となっています。

・クラシル

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2016年にdely株式会社によって開設された料理レシピサービスです。
特徴として全てのレシピが動画化されている点が挙げられます。
2020年には2600万回のアプリDL数に加え、利用者数(web・アプリ両方)・SNS総フォロワー数・レシピ動画数のすべてにおいて国内No.1を獲得したと発表されています。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000119.000019382.html

2018年からはヤフーの子会社となっています。

ではまずピクト図解を用いて2社を比較します。


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・収益の柱は有料会員のサブスク、広告収益の2つ

ユーザーは無料でサイトに掲載されているレシピを閲覧することができ、
有料会員になり、月額費用を支払うことで限定機能を利用することが可能です。また、サイトに掲載されている広告でも収益を得ています。

ユーザーは自分でレシピを投稿したり、他人のレシピを参考に作った料理の写真や感想(つくれぽ)をアップすることができます。

・続いてクラシル

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クラシルも同じように無料でレシピを閲覧することができ、有料会員になることで限定機能を利用することができます。広告が掲載されており、そこから広告収益を得ているのも同様です。
ユーザーは掲載されているレシピを作った感想を投稿することができます(食べレポ)


どうでしょうか?
一見すると違いがないように見えますよね。
しかしながら、冒頭のサービス紹介でも記載したとおり、実際はクックパッドは老舗でクラシルのほうが圧倒的に後続でスタートしたサービス。
ということはクラシルはクックパッドとは違う強みや戦略でここまで成長しているはずです。

ということでその中身を理解すべく、ビジネスモデルキャンバスを持ちいて2社を深掘って分析します。

(その前に)ビジネスモデルキャンバスとは?

ビジネスモデルキャンバスとは、ビジネスモデル・ジェネレーションという本で提唱されたビジネスモデル分析のためのフレームワークです。

2012年に発売された本で、今でもビジネスモデル分析・考案の場面で広く参考にされています。

本著は45カ国470人の共著者が28459枚ものポストイットを使って累計4000時間、足掛け9年間にわたり、様々なプロトタイプを分析し、ビジネスモデルイノベーションの手法を体系化したものだ。様々な立場の人間の叡智が詰まっており、汎用性の高いものだと言ってもいいだろう。
https://enterprisezine.jp/bizgene/detail/4001

以下の9つの要素にビジネスを分解し、可視化することでビジネスモデルの分析を行うツールになります。

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それでは早速このビジネスモデルキャンバスを用いて2つのサービスを比較してみます。

■クックパッドのビジネスモデルキャンバス

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・対投稿者への「提供価値」のユニークさが出発点

まずクックパッドの最も大きい特徴として、「ユーザー自身がレシピを投稿する」という点が挙げられます。1998年にサービスが開始してからこれまでに約347万件ものレシピが投稿されています。

投稿したレシピを閲覧したユーザーから、調理した感想をもらったり、うまくいくとアンバサダーとして運営に認定されてメディア出演につながったりします。

つまり「レシピ投稿を通じて私が認められる」がユニークな提供価値(UX)なわけです。

クックパッドは複数のレシピを比較して自分にとって最適なレシピを選ぶ形であるため、比較的料理に対して時間を割いている人がターゲットになっていると考えられます。そのため、レシピを自己流にアレンジして投稿するユーザーが多いとも考えられます。

・投稿されたレシピが増えれば増えるほど検索エンジンからの流入が増える

投稿されたレシピが増えると、サービスの魅力が上がるだけでなく、GoogleやYahooなどの検索エンジン上からの評価が高くなるため「カレー 作り方」のようにレシピを探している人の検索結果の上位に表示されやすくなります。

結果ユーザーが増え、「レシピ投稿」(パートナー/主要活動)→「承認体験によるヘビーユーザー化」(提供価値)→「コンテンツの増加による新規ユーザー獲得力向上」(リソース/チャネル)というサイクルが生まれることになります。

また、2012年からはYahooと業務提携を行い、検索エンジンの最適化が行われたりYahooプレミアム会員の流入が行われるなど、集客力が強化されました。(現在クラシルがYahooの子会社となっている点については後述します)

つまり、「レシピを投稿してくれるユーザー」という資産を武器に展開しているのがクックパッドのビジネスモデルであると考えられます。

■続いてクラシルのビジネスモデルキャンバス

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・クラシルは異なる顧客層を狙い、レシピの形式と作り方を変えた

クックパッドが、いわゆる「家庭の料理担当のママ」のような料理上手/中級者以上を主な対象としたのに対して、クラシルはよりライトな「とにかく手軽に美味しいものを作れれば良い」というユーザーを初期の主な対象としました。

こうした層は、クックパッドに掲載された数百万件のレシピから自分にあったものを検索することは適切でなく「本当に必要なごく一部の鉄板レシピだけ見せればいい」という仮説のもと厳選されたレシピ数万件を自社で動画化する方針をとりました。

・大型調達で獲得した資金をユーザー獲得広告とコンテンツ作成予算にまわして短期即効で成長

そしてレシピサービスで後発となるクラシルは資金調達で得た資金をレシピ動画作成と広告宣伝費に投下し、ユーザー数を爆発的に伸ばすことに成功しました。

※クックパッドのようにレシピ数が多くないため、ユーザーを獲得するチャネルとして検索エンジンが適切でありませんでした。
また、対象とするユーザーにとってWebサービスよりもアプリのほうが適していると考えたのです。

つまりクラシルは「資金調達によりレシピ開発のノウハウやリソースを確保」(リソース/主要活動/コスト構造)、することで「ターゲットのニーズを的確に満たし」(顧客セグメント/提供価値)、「広告宣伝費を投下して一気にユーザーを獲得」(コスト構造/チャネル)する戦略を取っていると考えられます。

さらには2018年にはYahooの子会社となったことで検索エンジンからのユーザーの流入も増えていると考えられます。

■2社の比較

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最後に2社のビジネスモデルキャンバスを比較してみます。
これを見ると、ピクト図解で表現すると全く同じビジネスモデルであった2つのサービスが実は様々な面で違いがあり、異なる戦略を描いて実行していることがわかります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
クックパッドとクラシルのビジネスモデルの比較は以上です!

冒頭でも述べましたが、ピクト図解はとても馴染みやすく誰でも簡単にはじめられることがメリットです。

それに比べるとビジネスモデルキャンバスはちょっと難解ですが、「似たように思えるこの2社の違いはなんなのだろう?」という場面、あるいは「一見すると別に大したことない普通のビジネスに思えるけどなぜかあの企業だけが成功しているんだ?」
といった場面では非常に有益な分析手法です。

「ピクト図解にもなれてきたし、ビジネスモデルの基本形はだいたい理解してきたぞ」という方は一度自分でビジネスモデル・キャンバスを利用した企業分析をしてみてください。

以上です。
それではまたお会いしましょう!

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Edtechスタートアップ「POPER」のCOOのハヤシです。もっとビジネスに詳しくなりたいので趣味で色んな会社のビジネスモデルを分析してます。あとは普段会社でみんなに教えた内容をまとめます。これからもっと活躍したいっていうITベンチャーの中間層を特に意識して書いてます。