地域の居場所づくり
教員をやめ、地域づくりのNPOに転職したのは、「居場所づくり」をしたかったからです。
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約2年間、NPOで少しずつ「地域の居場所づくり」の取り組みをしてきました。
前提として、「居場所づくり」といっていますが、居場所と思うかはその人がどう感じるかによるとおもっています。
取り組んできたことをまとめてみようと思います。
なぜ「居場所づくり」がやりたいのか
学生、教員時代に学校の息苦しさを感じていたからです。
学校が地域に開き、教員だけではなく、子どもたちが地域の多様な大人と関われたり、年齢を越えたつながりができたり、教室が自分の全ての居場所でなかったりしたら、もう少し生きやすくなるのではと思ったからです。
地域にはいろんな大人がいます。
学校で職業講話を地域の方々にしていただいたとき、子どもたちの目はキラキラして楽しそうにお話を聞いていました。
いろんな経験をした大人と出会えるって素敵ですし、学校内にこもりがちの教員である私にとっても学びばかりの時間でした。
地域内で多世代がつながりあえたり、一緒に学んだりできる場づくりができたらいいなと思うようになりました。
また、不登校生徒と関わる中で、学校が居心地の良い場になるような努力をすることが一番だと思いますが、加えて地域に多様な場があると良いと思っていました。
まずは、地域から学校を見てみたい、できることを考えたい!という思いで、地域づくりNPOに転職しました。
古民家を拠点に「居場所づくり」スタート
約2年前に地域づくりのNPOに転職しました。
「やさしくつながる地域づくり」を大切に活動しています。
人口規模2万人のまちで、8割は森林で、自然が豊かで歴史も面白く、まちづくりが比較的活発、周辺地域からの移住が多い地域です。
団体の事務所は古民家にあります。
10年前に人気のカフェだった古民家は、現在私たちの事務所、美容院、アトリエ、地産地消のお店、フリースペースとなっていて、団体が運営しています。
体験活動やフィードワーク、対話、マルシェなどをしたり、商品を仕入れに来る事業者さん(農家や多様な商品を取り扱っている方)、ショップや美容室のお客さん、絵を習いに来る方・・・と世代をこえ、多様な方が集う場となっていました。
私は元々別事業の担当スタッフがやめたことで、引き継ぐために入りましたが、どこかで居場所づくりに関わることができたらいいなと思いながら働いていました。
きっかけは2021年のコロナ禍にはじまった、県からの委託である「女性のサポート事業」でした。
当時、女性の貧困をなんとかしたいと県から生理用品の配布先、女性の居場所を提供してほしいと委託を受けました。
これまで、福祉的な事業はなかったのですが、このことを機に動きはじめました。
まちの実態をみていくと、高齢化がすすむ、独居世帯が増えている、孤独死のニュースをよくきく、不登校の増加、ひきこもりの実情が近くできこえてくる、など身近でさまざまなことが起こっていると知りました。
社会的孤立を防ぎ、やさしくつながる地域になるように。
そんな思いで、女性に限らず、居場所づくりをすすめていこう!とはじめていきます。
自分が過ごしたいように過ごせる、家でも学校でも職場でもないふらっと立ち寄れる地域の「もうひとつの家」。
心が休まるやさしい居場所で、人と人、人と地域が紡ぐ場を目指して。
企画書や予算書をかきまくり、必死にプレゼンをし、なんとか助成金を得て、わからないまま、試行錯誤を繰り返しすすめていきました。
具体的な取り組み
①フリースペースの解放
火曜日〜土曜日の10:00-17:00 フリースペースを開放しています。
ゆったりしたり、昼寝をしたり、本を読んだり、おしゃべりしたり、勉強やお仕事をしたり、ゲームをしたり、それぞれ過ごしたいように過ごしています。継続して来訪される方が増えてきました。
高校の授業の場として使ってもらったり、放課後に宿題をしにきたり、近所の小学校の特別支援学級の子達がお買い物の授業できてくれたり、、、
子どもたちもふらっと寄ってくれる場に少しずつですがなってきているように感じます。
②女性限定日
女性スタッフが対応し、金・土曜日を中心に実施しています
女性同士でおしゃべりしたり、女性限定イベントや生理用品の配布をしたりしています。
「女性限定だと安心していける」
「Instagramで女性限定日と書いてあったのできました」
「実は男性がいると安心して話せないからこのような場はありがたいです」
という多くの声をいただき、思っていた以上にニーズがあったのだと実感しています。
③地域資源を生かしたイベントと対話の場
ふらっときてくださいね!といくら言われてもなかなか一歩を踏み出す勇気がいると思います。
イベントがあると目的ができて、来訪やすくなると思いました。
地域の豊かな資源を使い、地域内の講師の方にお願いしています。
気軽に参加でき、ゆるやかに人とつながれるきっかけになる、そんなイベントを目指しています。
【イベント例】
・地産地消のお野菜を使った夏野菜カレー作り
・地産地消のひのきを使ったフローラルウォーターづくり
・精油でオーガニックコスメづくり
・映画上映会&対話会
・アロマハンドマッサージ&頭皮ケア教室
・地産地消みそづくりワークショップ
・ヨガ&ストレッチ教室
・農業体験
・地産地消の小豆を使ったアイピローづくり
・陶芸置物づくり
・ハーブでお料理教室 等
企画・運営を今はスタッフ中心にしていますが、今後は地域の方やボランティアさんと一緒に考えたり、自発的にイベントがうまれたりするといいなとおもっています。
少しずつ自発的にイベントがうまれつつあり、嬉しい限りです!
いつかイベントカレンダーが自主企画でうまっていくことを想像し、それも「一人一人がまちづくりの主役になれる場」であると思います。
その他、不登校・ひきこもりの当事者同士の対話の場づくりを通して、つながりづくりをしています。
当事者、ご家族の方、地域の方とクロストークをする場となっています。
「なかなか話せる場がないからありがたい、、」
「こういう思いをしているのは自分だけじゃないんだね、吐き出せてよかった」
などの声をいただいています。
2か月に1度ほどのペースですが、今後も継続していきたいです。
④地域とつながる就労体験
働きたいけれど一歩がなかなか踏み出せない方に、就労体験を実施しています。
一人一人との対話を通して、やりたいことや得意なことを踏まえた就労体験先を紹介します。
「はたらく」ことより、地域や人との「つながり」を大切にしています。
これまでは、得意なデザインを活かして、チラシづくりをされたり、土を触ることが好きな方には農家さんの所で働かれたり、自分が住んでいる以外の地域だと働きやすいと隣町の団体に繋いで働かれたり、、
一人一人に応じて、声を聞き、受け入れ先を調整しました。
今後はさらに受け入れ先を増やし、多様な働き方が当たり前のように尊重されるように、アドボカシーのひとつとしてこの活動をしていきたいと思っています。
地域のつながり・仲間づくり
目的は、居場所づくりだけではなく、「居場所づくりを通したやさしくつながる地域づくり」です。
さまざまなネットワークづくりを大切にしてきました。
役場、社会福祉協議会、そのほか居場所づくりのNPO、学校、周辺地域の行政、専門家(保健師、社会福祉士など)、長年福祉分野に取り組んできたNPO、さまざまな居場所…などさまざまな主体と連携できるよう取り組みました。
さらに多くの方に知ってもらったり、応援してもらえるように、居場所紹介のチラシを作成(地域のデザイナーさんに依頼)し、行政や教育委員会、社協に後援をいただき、新聞や小中学校、関係各所に配布しました。
Instagramやfacebook、公式LINEなど様々なSNSで紹介しつづけたり、イベントのときにお知らせしたり、来訪者に地道に紹介したりしました。
また、視察依頼を受け入れたり、様々な場で発表させていただいたり、学ぶために実践されている団体に伺ったりしました。
また、居場所づくりをする仲間を増やすために、「サポーター研修」を行いました。
地域の多様な講師から学び、サポーター同士のつながりがうまれ、居場所を通してなにができるのかを考えていく研修です。
役場や社協、専門家の方に講師をお願いしましたが、お願いしたり打ち合わせをしたりする中で、地域の現状を知ることができ、顔が見える関係になることができました。
【目的】
居場所づくりを通したやさしくつながる地域づくり
【目標】
①地域の実態を知り、自分ごととして考えられるようになる。
②居場所づくりの必要性を理解し、地域住民の孤立を防ぐためのサポーターとしてのあり方を考える。
③居場所づくりを通した地域をよりよくする取り組みを考え、行動に移せるようにする。
思っていた以上に、地域でなにかできることをしたい!という方は多いのだとびっくりしました。
高齢化で人手不足とききますが、関わりたくても関わり方がわからない、、ということもあるのかもしれません。
居場所づくりを通した「地域づくりの担い手」として一緒に取り組む仲間になれたことを嬉しく思います。
嬉しいこと・悩んでいること
【嬉しいこと】
・「安心できる場だね」、「良い雰囲気で居心地が良い」といわれること
・今まで団体の活動を知らなかった人にも知ってもらえたり、参加してもらいやすくなったこと
・来訪者の変化を感じたこと、居場所にくることが外に出るきっかけになったといわれたこと
・地域内のほかの居場所につながったこと
(居場所同士のネットワークをひろげてよかった!)
・「ここにいったら?」といろんな方から紹介してもらえるようになったこと、県内の居場所マップにのせてもらったこと
・イベント後もおしゃべりする姿がみられたこと
(イベント後もおしゃべりしたい、居続けたいというのは、イベント成功の証拠だと思っています)
・活動の協力者が増えたこと
【悩んでいること】
・継続の仕方(資金調達、人手など)
・どうしたらみんなが主体となれるような運営ができるか(一人一人のやりたいが実現できる場にしたい)
・ボランティアさんのかかわりかた
・さらに来訪しやすくするためにはどうしていくか
今後の展望
①安心、安全な場づくり
過ごしたいように過ごせる場とはどんな場なのかを考え、地域の人たちと一緒につくっていきたいです。
②地域の人が主体で、スタッフは黒子として
一人一人のやりたいこと、強み、弱み、つながりなど「自分らしさ」を活かした居場所づくりをしていきたいです。自発的なイベントや対話の場づくりがうまれたり、人が新たな人を呼び、繋がりを広げたりなどです。
③地縁組織との関係性
NPOだからできることもあれば、自治会などの地縁組織だからできることもあります。それぞれ別物ではなく、一緒になって、地域づくりをしていきたいです。
④継続性
助成金で事業をはじめることはできても、継続することが難しいのがNPOの難点。寄附やサポーターを募るなど、仕組みを整え、継続できるようにしたいです。
NPOの成果は、収益などの数字ではなく、「人の変化」だと言われます。
いかに継続性を担保しながら、関わる人の変化を生み出していくか、広げていくかを今後考え、実践していきたいと思います。
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