【短編小説】言葉術の魔女に恋したし、人生救われたんですが?

※この物語はフィクションです。
今回は、いきなり本編スタートです。

「自分は、もう終わった男だ。」
ファミレスで愚痴っていた。
それも女子に。

「なーに言ってんのよ!やり直せるって。」
「励ましはうれしいが、現実はなぁ・・・。」
「あんたなら大丈夫よ。」

自分の名前は、影野 航太。
無職だ。
世間的には、ニートって言われちゃうんだろうなぁ。
一応色々あって治療中なんだけど。

そんで、ずーっと励ましてくれてる女子が明野 春紗(あけのはるさ)。
こう言っちゃなんだが、幼なじみだ。
ずっと相談に乗ってくれる。
自分の現状を重く見たんだろう。
真摯に向き合ってくれる。

「でも、私が何言っても無駄なのかな・・・。」
「そんなことない!そう思わせちゃって本当に申し訳ない。」
「うん・・・。また相談に乗るから。時間になっちゃった。またね!」
「お、おう・・・。」

女子を悲しませた。
ああ、クズだ。
そう思いながら、残りのハンバーグに食らいついた。

それから数日たって、自分は海辺を散歩していた。
真夏の15時半過ぎ。
エグイくらいに暑い。
でも、変に焼けたくなかったから長袖のパーカーを羽織った。
その中で、日陰になっている腰が若干下せそうな階段横に腰かけた。
砂浜はとんでもなく暑いだろうから。
自分みたいな陰キャは、まぁ浮くわけで。

前から、イチャつくカップルがやってくると彼氏の勝ち誇った顔。
輩がこちらを見ると、ヒソヒソ話してにやけながら去っていく。

もう言わせてくれ。
ほっとけ!
そう思ってしまう。

でも、海を見てるとまぁ眠くなるわ、ボーっと出来るわ。
不思議な魅力があった。
海を眺めていると、声をかけられた。

「あ、すみません・・・。」
振り向くと、女性が立っていた。
何この人!すごくキレイ。
真っ白なワンピース。
黒髪ロングに大きめメガネ。

「写真撮ってもらっていいですか?」
「えっ?あぁはい。」
「ありがとうございます。」

海をバックに写真を何枚か撮る。
「これでいいんでしょうか?」
「ばっちりです。ありがとうございます。」
「じゃあ、すみません。」
「あの・・・。隣いいですか?」
「と、となり?!」
「あなた、悩んでらっしゃったので。」
「そう見えてましたか。まぁたいしたことではないので。」
「聞かせてください。」
「あぁ。はい・・・。」
自分は、これまでのいきさつを話した。

「そうだったんですね。辛かったですよね?」
「いえ。自業自得ですから。」
「そんなことありません。一緒に頑張りましょう。」
「一緒に!?どういう意味ですか?」
「出会えたのも、何かの縁ですし。」
「ですが、クズの独り言なので・・・。」
「まず、1歩歩き出してみたらどうですか?何かヒントがあるかもですよ。」
「で、ですが・・・。」
「私は、正直なあなたに惚れました。クズじゃないですし。」
「いや、でも・・・。」
「自分は自分ですよ。」
その言葉は、魔法のようだった。

「はぁ。」
「あなたが人生リスタートし始めたら、来年の花火大会に一緒に行きましょうね。」
「ふぇ!?」
「楽しみにしてます。」
「いやいやいや!!」
「目標達成できたと思ったら、1年後の15時半。駅前のショッピングモールのシンボルあの像の前で待ってます。では。」
呆然としたまま、ミカエルは去っていった。
やばい。名前聞いてねぇ!!

そこからしばらく経った。
また、春紗とご飯を食べる機会があった。
「あんた。どしたの?」
「いや、別に?」
「浮足立ってるわね。なんか。」
「そ、そーう・・・?」
「何かあったんなら言ってよ!」
「実は、告られちゃってさぁ・・・。」
「う、噓も方便よ。」
「ウソじゃねぇの!その人が天使の助言をくれてさぁ。」
「そ、そう・・・。」
「人生変えられるかもしれないんだわ。」
「そんな?」
「そいで、むっちゃべっぴんさんでかわいいんだよなぁ。」
「女子の前でよく言えるわね。」
「悪かった。ただ名前聞いてないんだよなぁ。」
「ああ。じゃあもう無理だ。残念!」
「ひどい言い方だな。」
「無茶はいかんて。」
「無茶じゃねえし!」
「まぁ。頑張ってみたら?」
「お、おう。」

それから、トントン拍子で話が進み無事自分の条件も容認してもらえる企業に内定を頂けた。
それで働き始めた。
人生リスタートは順調に切れた。

約束の1年後。
花火大会を明日に控えた時に、春紗に呼ばれた。
「よし釣れたー。ホントこのスイーツ好きよね。」
「釣れたとかちょっと嫌なんだけど。」
「ふふ。」
「で、話って?」
「明日の花火大会。一緒に行ってあげてもいいけど?」
「悪い。明日は先客がなぁ。」
「先客って?」
「1年前の約束だよ。あの人と会う。」
「覚えてないって。絶望するかもよ。」
「まぁ。行くだけ行くさ。」
「そ、そう。」
「ただなぁ。なんか会ったことある感じするんだよなぁ。」
「気のせいでしょ。」
「だよな。」

翌日。
マジで緊張する!!
どうすんだ。これ。
深呼吸をした。

15時半。
約束の時間になった。

光刺すように導かれるように彼女を見つけた。
「お待たせしました。」
「いえ。待ってないです。」
「では、行きましょうか。」
「はい!」
それでまさかの浴衣だと!
美しすぎるわ!!

春紗マジでごめん!
来たわ!!
心中でそう思っていると、女性が苦しんでいるようだった。
「だ、大丈夫ですか。」
「も、もう限界かもです。お手洗いいいですか?」
「ええ。無理しないでくださいね。」

15分ほど待った。
女性が戻ってきた。
「ごめんなさい。息苦しくなっちゃって。」
「大丈夫ですか。座りますか?」
「ええ。はい。」

近くのベンチに座る。
「あのぉ・・・。」
「なんでしょうか?」
「じ、実は私隠してたことがありまして・・・。」
「隠してたこと?」

おもむろに女性がかつらを取る。
「ちょっあぁ・・・。へ?」
そこには、春紗がいた。
「ごめん!ずっと、私だったの!」
「い。意味が分からない。何で?」
動揺しまくりだった。

「話、まともに取り合ってくれないかもって思って。」
「それで、別人に扮装したと。」
「そう。ホントごめんなさい。」
頭を下げる。
散歩コースを話していたし、探りを入れるメッセージとか駆使し、どうやら待ち伏せしてたらしい。

「最低よね。私・・・。恋を使ってこんなことするんだもん。」
「いやいや!ビックリはしたけど、自分の人生を変えてくれたんだから。」
「ごめんね。」
あきらかに落ち込んでいる。

「これが最後の疑問。返答次第でどうするか決めていい?」
「うん。」
「あれは、本心?ただの発破?」
「本心です・・・。」

「そっか。じゃ花火楽しもうか。」
「えぇ!?いいの?」
「うん。縁日食べ過ぎるなよ~。」
「うん!」

春紗のかわいすぎるヘアスタイルと浴衣姿にキュンとしてしまった。
人生リベンジできたし、灯台下暗しの恋人もできたし。
結果オーライだな。

終わり。













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