スズメの巣 第27話

第27話 ほら貝が鳴る時

2月中旬。
リーグ・ザ・スクエア初の入れ替え戦。
ジャッジメントトーナメントの決戦が始まろうとしていた。

「ついに来たね。」
「はい。布崎さん。」
橋口と布崎が話していた。

「1部昇格のチャンスですけどね。いつも通りの戦法でお願いいたします。」
「はいよ。でも、1年目でここまで行くとはねぇ。」
「そうですね。みなさんのお力添えもあって、ここまで来れました。」
「でも、終わりじゃないからね。気を引き締めよう。」
「ありがとうございます。じゃあ、チームミーティングを始めるので。」

布崎を、チームルームに促す。

改めて、ジャッジメントトーナメントのルールを確認しておこう。
ジャッジメントトーナメントは、本来ならば2ステージ制で実施予定だった。
各ステージともに、1人1試合は出場しなければならない。
1回戦は、1部リーグ7位・8位チームと2部リーグ2位・3位チームで4試合行い、合計ポイント上位2チームがファイナルステージ進出となる。
下位2チームは2部降格または残留が確定。

ファイナルステージは、2日間行われる。

1回戦勝利チーム2組に、1部リーグ6位と2部リーグ優勝チームを加えて行い、勝ち抜き戦を実施。
各試合2人勝ち残り、敗退者のチームはメンバー入れ替えて次戦に臨む。

全員敗退により、チームが全滅したらステージ終了。
全滅チーム以外の上位3チームが1部昇格か残留となる。
同率で全滅した場合。
ポイントが高いほうが1部残留か昇格を決める。と言ったところだ。

今回は、特例でファイナルステージのみ。
1部最下位 六本木桜花隊
2部から乃木坂アイロンマレッツ。
夕暮れポセイドンズ。
そして、JOY V-deers。の4チームで1部の枠を争う。

このリーグ・ザ・スクエアで1部リーグの在籍チームと戦うのは初だ。
まして、昨季優勝チームだ。
チームも、緊張感に包まれる。

早速オーダーを決める。
今回は、先鋒→次鋒→中堅→大将となる。
ベンチに座れるのは、その次の出番者のみとなる。
リレーの順番もカギとなる。

橋口は、ミーティングで太平に迫っていた。
「とりあえず、今日はみくちゃん次第で作戦を練ります。」
「わ、私ですか!?じ、自信ないです・・・。」
太平は、ひどく首を横に振る。
意地でも「NO!」と言ったところか。

「理由があるの。みくちゃんは実践するほど強くなれる気がして。」
「そうですか・・・?」
太平は、困り果てる。
チームのメンバーも、渋めの顔だ。

「これには、きちんとした理由があります。」
橋口は、まっすぐ言い放った。

「このプレーオフ。ジャッジメントトーナメントは、次のシーズンと見ています。厳しいことをたまには言わせてください。」
「珍しいですね。」
日ノ出さんが相槌を打つ。

「今シーズン。チームの方針としては、ばっちり決まりました。」
「だったらいいんじゃ・・・。」
太平は、まだ不安そうだ。

「ただ、課題もあります。それは目覚めることと、軌道に乗せるのが若干遅かったかなと思うんです。」
「はぁ。」
「トップを取ることも、多くありました。しかし、みなさん通じてトップの次戦は3着・最下位ということが多かったんです。」
「そうでしたっけ?」
思い出す。
「一応、金洗さんに分析をお願いしました。さくちゃん。」

「うん。4人のレギュラーシーズンを分析しました。」
金洗が話し出す。
「連対率という意味では、かなり高水準でした。それは全体通じての話です。いいことではあります。」
チームは、静かに聞き続ける。

「ただ。うーみんの言う通りでした。トップ直後の3着・4着を取ることが多かったんです。つまり安定というよりか、爆発でまかなえたと言えます。」

金洗は、話し続ける。
「現在の爆発力。そこに安定を加えたら1部リーグ。ジャパングランプリもかなり戦えると考えます。」
「その先も考えてるのか・・・。」
布崎は、感心した。

「そして、特にみくちゃん。トップを取った後、ラスが続くことが多くありました。その割合は、7割・・・。いやもうすぐ8割に届く勢いです。うーみん、以上です。」
「す、すみません・・・。」
太平は、しょんぼりした。

「みくちゃんは、謝ることないよ。でも、みくちゃんには燃え尽きちゃうのかもしれない。だから決断力。そして、強い意志が必要と考えました。」
チームにどよめきが起こる。

「そして、チームの皆さんにも意識して頂きたいと思い言わせて頂きました。1着に越したことはありません。が、レギュラーシーズン最終戦で沖村さん、そしてみくちゃんに言ったこと覚えてますか?」

「あれかな?どこでもいいですだっけ?」
「そうですそうです。目標に焦る必要はありません。だからこそ、素点も意識しつつゆっくり狙いましょう。」
チームは、柔らかい空気感になった。
「ただ、行動だけは早いに越したことはありません。このジャッジメントトーナメントは、次のシーズンの実証実験のような感じです。納得いただけますか?」

「そこまで考えてくれてるとは。」
「すごいじゃん!」
「見事だ。」
太平を除き、賛成が相次ぐ。
太平は、困っていたという方が正しいだろう。

「ありがとうございます!みなさん頑張っていきましょう!」
「はい!」
力強い声だった。

「では、早速ですがみくちゃんに2択で質問します。どっちか選んでね?」
「ええ、はい・・・。」

「一つ目。今日先鋒で全員ぶっ倒す勢いがありそうか。そのあと布崎さんたちの出番なしの勢いで完封できそうか。もしそれを成功したら、来年1部リーグでジャパングランプリ出るときは最低試合数で大丈夫。」
「二つ目。大将として大事なところで決めるか。ただ、1部リーグ昇格してジャパングランプリ進出できた時。今日の分も合わせてかなり頑張ってもらうことになるわね。」

「えぇ・・・。」
「どっちがいい?」
「えぇっと・・・。前者の方で・・・。」
「うん。分かった。じゃあみくちゃん先鋒ね。」
「・・・。はい。」

この後は、オーダーがスラスラと決まった。
「ミーティングは以上です。ありがとうございます。」

元気が無くなったとみた橋口が、太平にヒソヒソと話した。

「みくちゃん、ああは言ったけど無理しないで。いつも通りの戦い方でいいんだ。もし勝ったらみくちゃんの好きなパフェ。一緒に食べ行こっ?」
「えっ?いいんですか?♡」
「もち。私のわがままだから。」
「精一杯頑張ります!」

元気を取り戻した。

ついに決戦が始まる。






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