「カメレオン」

人に飼われてから、
生活が変わった。

かつては森に住んでいたが、
偶然にも人に出会い今は檻で暮らしてる。

決まった時間に飯は出るし、
飲める水も綺麗だ。

何より天敵がいない。
もう空の化け物や、
地を這う長い奴に怯える事はない。

しかも人の子が来ては、
興味津々にこちらを覗く。
これもまた心地いい。

他の仲間には申し訳ないが、
俺はこの上なく贅沢な暮らしをしている。

だが「贅沢」なのに「嬉しく」はない。
生きている感じがしないからだ。

どうしてだ？
今こうして飯を食い水を飲み、
檻から平和を眺める。
仲間が羨む生活のどこに不満があろうか？

そういえばここに来てから
何日経っただろう？
1日？1週間？いやそれ以上か？

そうだ、思い出した。

人に飼われてから、
力を使わなくなった。

俺は姿を変えられる。
周りと同じになり、
敵から隠れてやり過ごす。

俺は何度も力を使っては、
森の中で生き延びてきた。

「今日も生きてる！」
力を使うたびそう感じられた。

今は、力を使う必要がなくなった。
もしかしたら俺は「死」から逃れる毎日に、
「生きる意味」を見出していたのかもしれない。

死にたい訳じゃない。
でもこうして生きていたくもない。

あと一度でいいから、
俺は「生きるため」に力を使いたい。