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哀情廃棄

いつも1人にならぬよう、笑顔と元気を絶やさない。

その度心の荷が増えてって、体と心が重くなる。

重い、辛いと口にすると、周りからの愛が消えていくのではないかと怯えてしまう。

心を軽くしてくれる人は誰もいない。

だけども誰にも持たせたくない。

そうやって見えない荷物を増やすたび、歩くので精一杯。

最初は夢に溢れていたファンタジーは終わりを迎え、殺風景が出迎える。

歩くうちにたどり着いたのはただ広い海と砂浜。

飾らず、無表情でほんの少しだけ寒い。

春は始まっているのに何もかもが遅い気がする。

私も皆んなからすれば似たようなものなんだ。

だけども海はただゆっくりと砂浜を押し上げるだけで、誰の目も気にしちゃいなかった。

見ているのが私だけだったからかもしれない。

そんな海を羨ましく思った。

どうしてこんなに単純なのだろうと。

私から自然と笑みが溢れると、手に持っていた荷物が消えていた。

いつの間にか海に流されていた。

あれは大切な荷物だ、早く取りに行かないと。

そう思って海に近づいて気がついた。

荷物を持ったままだと泳げない。

生まれた時は何も持っていなかったのに、今じゃ重くてはしゃぐ事も出来ない。

海に浮かぶ落とした荷物が、あの単調なリズムで遠のいていく。

距離が遠くなるたび不安に襲われた。

何故か不安の先に、安らぎを感じた。

あの荷物が遠くなって1分、5分、10分と過ぎても、私には何も起こらなかった。

土砂降りの雨が降る事も、日光が私を焼く事も、海を眺めて冷やかされる事も、泣く事もなかった。

あんなに大事にしてたのに、別に大事ではなかった。

そうだ、気が変わらないうちに捨てよう。

悲しみを捨てよう。

無理も頑固も、ついでに重圧も。

大きな海と砂浜、ごめんね。

捨てるのは良くないけど、捨てた分だけ歩いてみるから。

これを罪と呼ぶならば全力で償うよ。

神様、ごめんね。

試練を与えてくれたのに、乗り越えられなくて。

そのかわり誰よりも正直になるから。

そう誓うと私は誰よりも軽くなった。

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