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ゴキブリーディングブック

ゴキブリ、読書タイム。

聞き覚えのないワードだろうが、とある家の片隅にその言葉がぴったりと当てはまるゴキブリがいた。

全長、見た目、素早さ、どれをとっても普通のゴキブリとは変わらない。

強いて言うなら、そいつだけいつも本を読んでいる。

仲間からは「読んでどうなる。」と冷やかされるが、そのゴキブリは意に返さない。

皆が今日の残飯は美味かったと喋っても、仲間の恋愛について語っても、興味はまるでないのだ。

いつも真面目に本を読み漁り、周りからは勤勉というイメージがついた。

そいつはいつしか本好きのゴキブリ、変な略称だが「ゴキ本」とあだ名がついた。

ある日1匹のゴキブリが恐る恐るゴキ本に話しかける。

「なぜ毎日本を読んでいるのか。」と。

基本陽気なゴキブリ達にとってゴキ本は、話しかけ辛いほど異端なのである。

するとゴキ本は本を閉じ、笑顔でこう返した。

「ゴキブリが本を読む。これがゴキブリーディングブックさ。」

それを聞いたゴキブリは鼻で笑いながらこういう。

「お前、さては陽気だろう。」

これがとある家の隅で繰り広げられた、ゴキブリ同士のくだらない会話のひとつである。

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