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エッセイ:大ちゃんは○○である38

全員の視線が一斉にその講師の男に向かったかと思うと
まるで息を合わせたかのように一人一人がすっくと席を立ち
「おはようございますっ!」
と大きな声で挨拶をした。
自分も含めてではあるが、見事なもんだなと思った。
全員が同じ気持ちで同じ行動をとったことに対してだ。
どの世界にも共通していることではあるが挨拶は本当に大事だと思う。
気持ちのよい挨拶に不快感なんてあろうはずがないし、
礼に始まり、礼に終わる。素晴らしい習慣じゃないか。
簡単なことなのに意外とできてない人というのは多いような気がする。
学校でも、職場でも、知り合いでも、身内でも。
挨拶一つで変わることって、きっとたくさんある。
気持ちの良い挨拶を!
と、少し話が逸れてしまったが…話を戻そう。
講師は恰幅のよい大柄な男だった。
髪は七三に分かれ、くっきりとした目鼻立ち。
年は見たところ50前後ぐらいで、若い頃はさぞかしイケメンだったんだろうなあと思わせる容姿をしていた。
「はい、おはようございます。元気いいねー、みんな。まあ、とりあえず座って下さい。」
講師の声に全員が着席する。
「皆さんはじめまして。半年間、みんなのレッスンを担当させてもらいます、竹村と言います。
よろしくね。」
とてもよく通る声をしている講師の男は竹村という名前だった。
爽やかな笑顔を浮かべながらの自己紹介は、場の緊張感を幾分和らげてくれたような気がした。
「えーっと、ここにいるみんなは先日のオーディションを通過したメンバーだと思うんだけど
最初にはっきり言っときます。
チャラチャラした奴、やる気が見えない奴は容赦なく帰します。
それは見た目がどうこうとか、そういうことじゃなくてね。やっていけば自然と分かるんで。
甘い世界じゃないよ。自分達は夢を売る商売やるわけだから。
生半可な気持ちの奴はいらないからね。」
つい先程、竹村の雰囲気と声色で幾分和らいだ場の空気は、
竹村の雰囲気と声色ですぐさま緊張感に包まれた。

つづく

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