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『薬の神じゃない!』

原題「我不是薬神/DYING TO SURVIVE」

◆あらすじ◆
上海でインドから輸入した強壮剤を販売する店を営むチョン・ヨン。家賃も払えないほど金に困っていたある日、慢性骨髄性白血病の患者リュ・ショウイーからインドのジェネリック薬を購入してほしいとの相談を受ける。国内で認可されている治療薬は非常に高額な正規品のみで、多くの患者には手が届かなかった。最初は断ろうとするが、大きな儲けになると気づき、ジェネリック薬の密輸・販売に乗り出すことに。やがて白血病患者らでチームを組み、急速に販路を拡大していくチョン・ヨン。そんな中、ニセ薬が出回っているとの情報を嗅ぎつけた警察に目を付けられ始めるチョン・ヨンだったが…。 




「この世の病はただ一つ、貧困だ」

終盤で放たれるこの一言が強烈に胸に突き刺さる今作だが・・・

かなり面白かった!
思い立って観に行ったが拾い物だったよぉ。

本国では2018年に公開されてかなりのヒット作だった様だがここに来て恐らくハリウッドなどの新作公開が延期延期で各映画館が色々過去作を上映してるんだろうね。


超高価な白血病薬のジェネリック版をインドから密輸して貧困層の患者に安価で売ると言う実話ベースなんだがなかなか上手く作られててちょっとビックリしたわ!

なんか、邦題変じゃね?って思ってたらどうやら直訳らしくて他では「ニセ薬じゃない!」って訳されてるみたい。そっちの方がしっくりくるし直訳で意味解らんの付けるくらいなら意訳しろよ!って思うわ。
英題は必死に生きてる感あるからそっちの方がこの映画にはドンピシャっすな。


内容的には人情ものでもあり社会性も伴い検閲の厳しい中国映画なのに反体制っつーか完全に体制批判てのも『鵞鳥湖の夜』から続けて意味深さを感じる。

テンポもイイし重い題材なのにコメディ要素もあり、人間の喜怒哀楽をフルに活かした作品になってる。

それに加え、アクションやカーチェイスの要素もあって盛り沢山なのにちゃんと纏め上げてるのが凄い!ラストの目頭が熱くなる演出が憎いわぁ!

まぁ、つくづく医療保険のしっかりした国に生まれて良かったって思うわけだが今や日本もどうなる事やらって不穏な雰囲気になって来てるからそういう意味でも将来に不安は多少なりともあるよね。自分はその頃この世に居るのか居ないのか解らんがこの映画を観てやっぱ庶民の苦しみを取り除くのが政治の役割じゃないの?って改めて思うね。

あの治療薬を独占的に高価で販売してる製薬会社の連中がイケ好かないったらないんだな。あんな奴等マジでギャフンて言わせてやりたいって思ってたから法廷シーンはグッと来た。


コイツよコイツ!こんな風貌の奴が善人な分けないじゃろが!

初めは父親の治療代欲しさに密輸を始めるがその内この薬が高価過ぎて生活に苦しんで来た人達の事を知り仲間を作り【義賊】になる過程とその後の【仲間】としての彼等の絆がホント楽しくて・・・

確かに、この映画凄く観易いって思うんだ。
登場人物達の感情が観る側のこちらにもすんなり浸透してくる感覚があるんだよね。
俳優陣の演技が物凄く自然でね・・・だから凄く深く感情移入出来ちゃったんだなって思う。

彼等がジェネリック薬を正規薬よりかなり安価で闇販売を始めたら今度は全くのニセ薬を売るアホが登場したりして、このニセ薬を売るおっさんがまた気持ち悪いヤツで途中ムカつき過ぎた!

でもねそのムカつきもラスト間近、チャン・ユー(章宇)演じる金髪青年・ボン・ハオがホント胸を突き刺すような演技するんだよね。濱田岳を中年にした様な兄貴分チョン・ヨンとの2ショットシーンがまたこの演出に最大の効果を齎してて・・・涙腺緩み症のおばちゃんには酷だわぁ~。

あとね、チョン・ヨンの義弟で刑事のツァオ・ビンがこの事件の背景を知れば知るほど自分の正義が揺らいで行く姿がまた切ないんだよね。
この辺りも真正面から反体制を表現しててイイんだな。

上級国民ばっかり優遇されるかの様な現日本政府に当て嵌めてもこの作品は色々考えさせられる内容だし香港の中国(社会主義)化も真剣に近隣国に住む1人として気になる所ではある。ワタシが知っている香港はもう既になくなってしまったけれど【自由】と引き換えに出来るモノって果たしてあるのか?と私はなんだか思ってしまうんだよな。

本来の共産主義の【国の基に平等】と言う思想がちゃんちゃら可笑しい体制批判を真向から描く秀作だと思う。



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