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『his』

◆あらすじ◆
ゲイであることを知られるのを恐れて東京の会社を辞め、静かな田舎町でひっそりと暮らしていた井川迅。そこへ突然、8年前に迅のもとから去っていった日比野渚が、6歳の娘・空を連れて現れる。居候させてほしいという渚に戸惑いつつも、迎え入れる迅。そんななか渚は、離婚協議中の妻と空の親権をめぐって争っていることを打ち明ける。


同性愛が主軸のテーマなのかと思っていたが見終わった感想は【人として、親としての成長】を描いてる印象が強かった。

ただ、もちろん【セクシャルマイノリティへの偏見】と言う視点も濃く、名作『チョコレート・ドーナツ』や『ブロークバック・マウンテン』も彷彿させる同性愛者の家族形成の描き方や【性】と言うものへの考え方や視点にこの作品の意味を感じた。

本当に受け入れられないのか?
はたまた受け入れられない先入観なのか?
この違いへの着目点が良かった。

劇中、何度か主人公の迅(シュン)がカフカの『審判』を読んでいるシーンが描かれてるが(実は読んでるようで顔に被せて昼寝してる)その意味は不条理な状況からの脱出と言う事なのだろうか?彼の立場が似ている。ゲイと言うだけでなぜ正当に扱われないのか?と・・・。
迅のあの小説の扱い方がもう何度も読んでいると捉えるよりやっとそこに辿り着いている様に感じた。
『審判』の主人公の様に理由も分からず、自らの説明も受け入れられず死刑台に乗せられる様な環境から逃れたいのか?

私は職業柄セクシャルマイノリティの人が同僚になる事が少なくない。もしこちらが気付いたらいつも自分の親友がゲイである事を話す様にしている。これは親友にも話して許可を得ているので(もちろん名前までは言わないが)大っぴらに話している。

ずっと以前にカムアウトしてくれたスタッフが1人でも偏見の無い人がいる、理解者が居るってだけで気持ちが違うと言われた事がありそれ以来ずっとそうしてる。

周りの人間が全て偏見をもっているなんて事は無い。
寧ろ無頓着な人の方が多いのかもしれない。
だからこの作品の小さな町の人達の結論が微笑ましくもあり、これから【環境】を作り上げていくんだなって感じた。

藤原季節が演じたゲイでありながら一度女性と結婚し子供を儲け、それが或る意味【気の迷い】だった事に気付くと言う・・・何十年前なんだよ!ってちょっと思っちゃったりもしたんだけどこの時代になってもそういう想いにさせる環境があるって事も背景にある。
異性愛者になれるなら(装えるなら)その方が楽だと言う考え。

そして未熟でフラ付いた考えは結局多くを傷つける。
それはセクシャリティも環境も関係ない!ただ自分の愚かさや未熟さが蒔く種だ。

宮沢氷魚が演じた迅(シュン)も忘れられない男が、忘れようとしている男が、もう会わないと思っていた元恋人が突然目の前に現れその身勝手な振る舞いに怒りはするが抗えない奥底の気持ちが沸々とする。
最初は「そんなアホ面下げてノコノコ出戻って来るテキトーな不埒野郎はとっとと追い出せよ!それも子連れかよ!!ダメダメ!!!アンタが築いてきたモノぶっ壊されっぞ。木っ端微塵だぞ」とこっちが怒り心頭だったがこの映画の優しさはその先にでっかい風呂敷を広げてた。

鑑賞後の何とも穏やかな気持ち。

今泉監督やるなぁ。
今まで観た事なくてごめんなさい。

藤原季節がインタヴューで言ってた。
「この映画はただのゲイの恋愛もの」だと。そう言える彼の気持ちが嬉しいじゃないか。

この映画の後半は法廷シーンが主体になるのだが(この辺が『チョコレート・ドーナツ』が引き合いに出される理由だね)離婚は成立してるが娘の親権争いがテーマだ。
そこでこの作品の重大なテーマが描かれる。

でねぇ、子供苦手なんだけどさぁ・・・やっぱり子供の素直さやピュアさに大人は気付かされるんだわね。自分達のひたすら汚しまくった魂に、ひねくれ曲がった心にね。

そして子供と同じくらい大事な年配者の存在。
鈴木慶一、相変わらずの味だな。迅とまるで親子の様に助け合い時給自足の生活をするおっさん。あの素人感が堪らんのよ、いつも。

で、根岸季衣の存在はデカイ!
ホント彼女の言う通り、もう年取ると男とか女とか関係ねぇのよ。

そんな風にさ皆んなニュートラルじゃダメなのかなぁ?



主演2人のインタヴュー、2人とも『ブロークバック。・マウンテン』が大好きだって言ってる。季節はヒースのファンなんだってさ。

アタシもヒースの大大大大大ファンなんだよぉ〜!1番好きな俳優だよー(⌯¤̴̶̷̀ω¤̴̶̷́)✧
『ブロークバック・マウンテン』は生涯NO.1の作品なんだよぉ〜!



2020/01/30


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