映画感想『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』
原題「SUMMER OF SOUL (...OR, WHEN THE REVOLUTION COULD NOT BE TELEVISED)」
1969年…こんな巨大な熱量を含んだライブ映像が地下で50年も眠ってたなんて!
過去に観たどんなライブより観たかった・・・。
いや、その十数年後NYCハーレムに何度も足を運ぶ事になる身としては是非そこに居たかったと思わせるライブ映像だ。
出演者の顔ぶれがとにかく凄過ぎてずっと涙が流れっ放し。
【MUSICIANS】
スティーヴィー・ワンダー
スライ&ザ・ファミリー・ストーン
マヘリア・ジャクソン
B.B.キング
グラディス・ナイト&ザ・ピップス
ザ・フィフス・ディメンション
ニーナ・シモン
ステイプル・シンガーズ
デヴィッド・ラフィン(初代テンプテーションズ ヴォーカル)
チェンバースブラザーズ
モンゴ・サンタマリア
ソニー・シャーロック
アビー・リンカーン&マックス・ローチ
ヒュー・マセケラ
他・・・
ミュージシャンの他にジェシー・ジャクソン牧師と当時のNY市長ジョン・リンゼイが出演。
ジャクソン牧師はこのコンサートの少し前に暗殺されたキング牧師について語り、リンゼイ元市長は彼の公平な言動で黒人にも受け入れられた白人市長だ。
他にも出演していたミュージシャン達が当時を振り返り思い出しながら涙するシーンもあったりとただライブ映像を流すだけではなく当時の社会情勢やニュース、出演者やジャーナリスト、観客等が記憶を呼び戻し語る映像を挿し込みながら構成された非常に貴重なドキュメント映画だ。
ウッドストックと違いハーレムの街中にある【マウント・モリス・パーク】で行われた。
NY中の黒人が集まったのでは?と思えるほどの迫力ある観客サイドの映像も圧巻だ。
当時のファッションやカルチャーが見て取れる。これがまた楽しい!!
夏の期間の日曜に数回行われた様で入場料も無料。だから観客も純粋にライブを楽しんでる様子で、至って平和的に家族でこぞって来ている感覚に見えた。
ライブ中に語られているが前述した様に差別を強いられた黒人たちにとってキング牧師、ケネディ大統領、マルコムXと次々に彼等の指導者や擁護者の暗殺が重なり悲嘆続きで暴動が起きかねない事も予測されその沈静を計る意味もあったと言われてる。
黒人擁護派の市長が協力体制だったにも関わらずNY市警は警備を拒否し、その代わりにブラックパンサー党が警備を担当した事も映像に残されている。
"ブラックパワー"を叫ぶ運動が全盛と言う時期でもあり黒人解放運動の象徴アフロヘアーが見事なまでに溢れ、この後【二グロ】から現在使われている【ブラック】と言う呼び方への変遷の理由等がジャーナリストへのインタヴューで語られるのも興味深い。
ステージ上はスティヴィ―・ワンダーのドラムソロがいきなり始まると言うかなり珍しい映像記録からスタート。
グラディス・ナイト&ザ・ピップスが盛り上げる。
ゴスペルの女王マヘリア・ジャクソンとメイヴィス・ステイプルズのキング牧師に捧げる掛け合いは鳥肌モノだしニーナ・シモンのカッコ良さにはシビレル。
そして改めてSLY&THE FAMILY STONEの『EVERYDAY PEOPLE』『Want To Take You Higher』に胸がバクバクした。圧巻過ぎたわ!!
アメリカ黒人にとって絶望的な出来事が次々と起こった後の変革にも繋がるライブ。
「スクリーンで必見!!」としか言いようが無い。
この貴重なフィルムを、50年間眠っていたライブ映像を発掘し世に送り出してくれた製作の人達に感謝。
ホントに有難うと言いたい。
2021/11/20
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