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わたしにみえること

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文章を書く練習がしたいので、ここで書いてみようかなと思います。私は私の気持ちを言葉にするのはそんなに大変じゃないんだけど、状況を描写するのはとても苦手。そんな所が上手くなったらな…
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#エッセイ

年齢を重ねるのは悪いことではない

年齢を重ねるのは悪いことではない

11月の終わり、名古屋での研修に参加するべく金曜の仕事を午前で切り上げ、中目黒の駅から東横線に飛び乗った。研修は土曜だったが、早朝に家を出るような体力はないので、夫に無理を言って前泊すると決めたのだ。

横浜線に乗り換え、新横浜を目指す。道中で一杯ひっかけると決めていた。平日昼間に飲むビールは、あくせく働く人間の最高到達点だ。考えるだけで胸が高鳴る。

階段を降りて、新幹線の改札を目指す。東京に出

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朝5時、渋谷スクランブル交差点にて

朝5時、渋谷スクランブル交差点にて

 無職になって気づいたのだが、私の人生には“無駄”が多い。

 8月の初旬、今朝も朝の5時から渋谷のスクランブル交差点で映画のエキストラに参加した。ちなみに謝礼はなかった。

 映画といっても有名な俳優は誰ひとりとしておらず、極端に顔の小さい女子高生姿の女の子2人と男子高校生3人。男の子のうちひとりはダサい感じ、でも多分主役の子に想いを寄せていて、あとの2人は所謂イケてるグループの男の子。そして私

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手浴

手浴

祖父が亡くなる直前、ちょうど年末年始の帰省と重なったこともあって、母と娘と私は毎日面会に行った。祖父がいる病室が状態の悪い人が入る部屋だということは、病院で働いている私でなくてもすぐにわかるような部屋だった。頻繁にアラームの鳴るモニター、気管切開の穴から送り込まれる酸素のシューシューという耳障りな音、いくつもの管に繋がれて、顔や首、肩も腕もパンパンに浮腫んで艶やかな皮膚をして、母が肩を揺すっても少

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朝食はエモーショナル

朝食はエモーショナル

時々、朝ごはんをお腹いっぱい食べたくなる時がくる。そういう時はたいてい牛丼屋さんか立ち食い蕎麦屋さんに行く。この気持ちはパンでは満たせないので、必ずご飯か麺類のような、温かい食事が必要だ。

今日は少し足を伸ばして隣町のやよい軒に行くことにした。

注文するのは目玉焼きとウインナーのセット。席に着くなり、
「目玉焼きの両面焼きってできますか?」
と白身の中にぽってりと黄色い丸が浮かんだ幸せのフォル

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仮通夜の喜劇

仮通夜の喜劇

1月のあまり寒くない夜、祖父が亡くなった。
正月明けで斎場が混み合っている影響で、葬儀は亡くなってから一週間後。火葬はその前に済ませることになったのだが、その前夜に祖父の生家で仮通夜が行われた。

3歳の娘を連れて帰省したはいいものの、彼女が大人達の思い通りになるはずはなく、祭壇の前に横たわる祖父の亡骸をくすぐって起こそうと試みたり、熱を計るから体温計を持ってこいと大騒ぎしてみたりと暴君と化してい

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