マイクロモノづくりとは?
マイクロモノづくりとは?
少量のニーズにあわせて、高付加価値、高利潤のモノづくりを行い、だれかに売ってもらうのではなく、自ら販路をつくり、販売を行う考え方です。
マイクロモノづくりの概念は、これまでの大量生産、大量消費とは対極する概念です。(※対立はしない)
少量のニーズにあわせて、高付加価値、高利潤のモノづくりを行い、だれかに売ってもらうのではなく、自ら販路をつくり、販売を行う考え方です。 これまで、製品開発をしたことがない、中小製造業の方でも、一定の手法で製品開発の手法を身につけることができます。 また、製品デザインも、外部のデザイナーに外注する際の管理の方法などを身につけることで、コストをおさえつつ製造者とデザイナーがWIN-WINの関係性を創り上げることが重要になってきます。
大きな特徴としては、
●少量生産
●高付加価値、高利潤
●低い環境負荷・4R(Reduce,Reuse,Recycle,Repair), サステナブル
●自社による企画、デザイン、設計、試作、生産
●「作者」と「作品」の関係が1:1
●リーン・プロダクトアウト
●ソーシャルメディア活用をしたブランディング
●クラウドファンディングによる資源確保
●自社で販売
●大量生産と共生
というものが挙げられます。
マイクロモノづくりの流れ
マイクロモノづくりには、中小製造業が自ら製品企画を行い、自らデザインをし、自ら販売して行くという物になりますが、その過程で経営者がいくつものハードルに直面することになります。
当社は、マイクロモノづくり企業を数多く取材した経験から、どの段階で、どのようなハードルが存在し、経営者がそれをどのようにして乗り越えてきたのかということを、事例として調査をしています。
当社はそれらの事例をベースとした方法論をコンサルティングやセミナーを受講していただく方にお伝えすることによって、中小の町工場がこれからの時代に、新たなイノベーションを起こしていけることを追求する「マイクロモノづくり」を世の中に広めるために、設立されました。
マイクロモノづくりの要諦は「商品企画」にあり
このマイクロモノづくりの流れで、もっとも重要なのが「企画」の部分です。どのような自社製品を生み出すのか、そこに自社製品の成功の可否が込められているといっても良いでしょう。
しかしながら、これまで下請け的な仕事をしてきた、町工場や中小企業がいきなり自社製品をうみだせといわれても、非常に困難であることが通常です。
通常は、大まかな商品企画をした上で、マーケットリサーチなどを大規模にかけ、ユーザーの反応を見ながら、製品の企画・開発を行うのが通常の流れです。
しかし、今般このような製品開発の手法「マーケットイン」といいます。大手メーカーの製品企画・開発はほぼこのようなアプローチをとっています。
しかし、すべての大手メーカーが同じ手法を用いて製品開発をおこなった結果、ほとんど同じような商品が市場にあふれる事になってしまったのです。その結果、大手メーカーが十分な準備と、大規模な開発資金を投入して開発した製品が全く不発に終わる事例が増えています。
完全にオリジナルで、人々を驚かせるような全く新たな製品は、開発者自身の心の中に眠っているというのが、「製品開発トレジャーハンティング理論」です。
トレジャーハンティングとは日本語でいえば、「宝探し」なのです。開発者が自分の心のワクワクの声に従い、自分が一番のユーザーになって、自分の心の中の「宝物」を掘り当てることができれば、その製品開発の90パーセントは達成したと言っても良いでしょう。
自分の本当にやりたい事に目覚めた開発者は、どんな金銭的なインセンティブも太刀打ちできないほどの、集中力を持って、製品開発に執念を燃やします。そして、24時間、365日その製品開発をし続けることが出来ます。
継続した開発を続けるためには、「リーン・プロダクトアウト」という考え方に基づき、極力自社の持っている技術のみで開発をおこない、外注などを使わないように心がけます。
製品開発は途中であきらめてしまえば失敗ですが、開発し続けることができれば、次第に製品のクオリティはは徐々に向上し、半年、1年も経てばそのクオリティは驚愕するほど向上しています。そして、それをクラウドファンディングなどを使い、マーケットリサーチをすれば、何らかの成果を手にする事が出来ます。
自らが欲しいものを開発することが、これからの新しい時代のモノ作りの主流になるでしょう。
この理論に従い、開発した手法がワクワク・トレジャーハンティングチャートを用いた、製品開発手法です。
マインドフルネス瞑想を用いた発想法(ワクワク・トレジャーハンティングチャート)
ワクワクトレジャーハンティングチャートとは、「zenschool(マイクロモノづくり講座)」の中で、新規事業創造の過程で生み出されたツールで、これまでに数々の新規事業を生み出してきた、きわめてシンプルでかつ強力なツールです。
人間には、本来「ワクワク」する心が備わっています。
これまでの右上がりの経済的成長を前提としたビジネスでは、自分が「ワクワク」することをビジネスとすることはある種のタブーとされてきました。
なぜならば、個別の個人のワクワクを取り組むより、分かりやすいニーズに対して、会社全体としてモノづくりやサービスの構築をしたほうが効率良く、製品が生み出せ、大きな売り上げにつながったからです。
それぞれ個人の感じる「ワクワク」を追求する事は、趣味の領域として、ビジネスとは違ったカテゴリーに追いやられたのです。
しかし、世界の経済の流れは変わりつつあります、特に日本を代表とする先進国においては、「モノ」や「サービス」が満ちあふれています。
これまで、「頭の良い」一部の人間が企画したり、計画した製品やサービスを、組織的に生産し販売する事は、革新的な製品やサービスにつながることが少なくなり、ビジネスの成功にもつながりにくくなってきています。
むしろ、そのような製品開発の仕方は、「会社」という大きな組織の中で、納期や予算にがんじがらめにされた技術者・開発者が非常に強いプレッシャーの下で生み出した製品は、知らず知らずのうちに、「イヤイヤ」のマイナスのオーラーを含んだ製品になってしまったのです。これが、今の日本の製造業が「ワクワク」のオーラーを身にまとったすばらしい製品を生み出せない大きな理由だと考えています。
それぞれの個人が心から「ワクワク」する本当にやりたことを、自社あるいは自分の持っている技術で製品化することによって、ずっと情熱を傾けることができる、持続可能な製品開発をおこなうことができるのです。それは、「ワクワク・トレジャー・ハンティングチャート」の秘密なのです。
ワクワクト・レジャーハンティング・グチャートは非常にシンプルです。
これが、すばらしい製品やサービスを生み出すチャートとは信じられないというほどシンプルなチャートです。
チャートの書き方のコツ
●まず最初に左側に自分がワクワクすること、趣味などを付箋などに書きだしてみる。(個数は限定しない)
●書き出したワクワクの中から上位3つに絞り込む
●本当の「ワクワク」とは、誰が止めても、止めることができないほどの情熱をかたむけられる自分の「心の叫び」である。
●うまく取り出せない場合は自分が10歳の時の夏休みになににワクワクして遊んでいたのかを思い出してみよう。
●上記を念頭に、書きだしたワクワクが「つくられたワクワク」なのか、本物の「ワクワク」することなのかを検討してもう一度確認してみる。そして、本当のワクワクのみを残す。
●次に、自社の持つ、もしくは自分個人の持っている技術・技能を書き出してみる。(個数は限定しない)
●次に、それらの中から上位3つに絞り込む。
●3つに絞り込んだ、技術・技能をのチャートの横軸に書き出してみる。
●取り出した「ワクワク」から水平に横線を引いてみる。 自社・自分の技能・自分の能力から線を上方向に引いてみる。
●「ワクワク」と、自社のもつ技術、自分の持つスキルに複数の「交点」が生まれる。それらの交点を1点1点確認してみる。
●それぞれの交点から生み出される商品、サービス、事業を1点1点検討してみる。実現可能性をみるのではなく、どの点が1番ワクワクするのかということを確認してみる。
●複数の交点の中で、最も自分の心が最も「ワクワク」する1の交点に、自社製品、自分の事業になる「宝」が埋まっている。
●その交点から生み出される可能性のある、自社商品、自社サービス、事業を文章で簡単に書きだしてみる。
●チャートを書くときは、手書きで、ボールペンや、シャーペンなどよりも、筆ペンや毛筆などがオススメ。
実際のワークサンプル
実際に生み出されたサービス「想い出タクシー」
卒業生たちの生み出した製品(一部)
2019年現在の卒業生
zenschoolテキストより一部抜粋
マイクロモノづくりを漁業で例えると
マイクロモノづくりをもう少し分かりやすくするために、漁業に言い換えて説明をしたいとおもいます。
これまでの大量生産では、大掛かりな投資と生産設備が必要でした。その結果、大量の製品を製造し、それを薄利で販売するビジネスモデルが成り立っていました。
それを漁業に言い換えれば、大きな船で、一気に、あまり「すばしっこくない」魚を漁獲してしまう。大規模設備型の漁業に例えられます。
ここでいう、魚とは求められている「ニーズ」を意味します。底引き網方式では、「すばしこい」魚は逃げてしまいますので、単純なニーズを満たす、例えば、今まで「手洗い」だった洗濯物を、「洗濯機」を作れば、そのニーズを満たすことが出来るので、作れば売れるという時代です。 ニーズと製品が単純にリンクできるような時代にはこのやり方の方が効率がよかったはずです。
それに対して、マイクロモノづくりは、「一本釣り」的なスタイルです。
この場合の魚である「ニーズ」は、個人により非常に多種多様になっています。ニーズが(すばしこい魚)ころころ変わってしまうので、大規模な設備投入をおこなって、一気に魚を漁獲する方式よりは、少量だけれども、高付加価値の魚。たとえば、マグロや「○○鯖」などのブランド魚の高級魚を一本釣りをおこなう方式です。
ブランド魚は取れる漁獲量がそう多くはないので、単価も利潤も大きくなります。それほど大量に漁獲(生産)する必要もなく、そこそこの漁業者(町工場)はそこで食べていけます。
このように、一つ一つのニーズの量はそう多くないので、大規模な生産設備をするほうが、効率が悪くなり、投資の回収が難しくなりますので、すでに漁船と漁具(工場と設備)をもっており、減価償却費が済んだ設備で生産できるマイクロモノづくり製品が利益を生むことになるのです。
すべての場所に「モノ」が満ち足りた時代、現在の日本におていは、大量生産、大量消費の「モノ」はどこにでも溢れており、魅力がありません。
今のような世の中だからこそ、必要とされる、「マイクロモノづくり」なのです。
大企業がマイクロモノづくりを取り入れるには。(※2012年当時の提案であり、その後ソニーなどで似たような開発手法を取って新製品開発を実現している)
※以下「マイクロモノづくりはじめよう」のオリジナル原稿(発行された本とは異なります)より抜粋
なぜ、大手メーカーは、既存のプロダクトの焼き直しばかりで、革新的なプロダクトを生み出せないのだろう。
その答えを、一言でいってしまえば、リスク犯せない組織構造にあるのだ。
メーカーが事業計画を作るとき、もしくは全く新たな製品を生み出すとき、参考にするのはどんな情報だろう。
そう、参考にするのは、他社がすでにやっている製品か、もしくは自社の製品のバージョンアップからのデータである。
これまでに無かった製品を生み出すときは、過去のデータを積み上げることはできないからだ。
大手メーカーはその組織構造上、意思決定が階層段階になっているのが通常だ。もし若手のエンジニアが自分の自由な発想でプロダクトを発想し、同僚エンジニアと自由闊達な意見を戦わせて、苦労して書き上げた企画書を準備したとしよう。
そして、その企画書を上司に持ってゆくと、出てくる反応はおそらくこんなものではないだろうか。
「◯◯君、たしかに君の言っていることはわかる、そしてそういうニーズがあるのもわかる。しかし、想定される市場は当社がやるべき、◯◯億円以上の市場規模ではない。第一、このようなこれまでに無かった商品コンセプトをどうやって役員に説明すればいいだね?」
そう、大手企業はその持っている経営リソースを維持するため、一定以上の収益が見込めない市場に対して参入は出来ないというジレンマをもっている。
しかし、時代はマイクロ消費の時代に突入しつつある。そのような巨大な市場は中国などの、まだモノが十分に行き渡っていない新興国以外には見込めないのだ。当然のことながら、先進国に大きな市場を見込むことは現実的ではない。
そのような巨大市場向けの製造設備は持っているだけで不利になってしまうのである。では、経営環境の変化に対応できなくなったメーカーはどのようにして生き残るべきか。
その答えは、「マイクロモノづくり」にある。
大手メーカーの開発部隊であれば、事業部全体で数百人という規模などは当たり前にある。その数百名の事業部を、5人単位の開発ユニットに分割するのだ。
メンバーも、エンジニアだけではなく、チームリーダー1人、エンジニア2名、デザイナー1名、マーケティング兼販売担当1名とする。
そのスモールユニットに対して、シードマネーということで、極めて小さな開発費を割り当てる。そこから生み出された全く新たなコンセプトの製品を、社内で決めた一定のボーダーラインの条件さえクリアしていれば、既存のクラウドファンディングサイトにアップしてゆくのだ。(既存のクラウドファンディングサイトには大手メーカーの投稿を制限しているサイトもあることに注意。)
クラウドファンディングサイトに掲載されて、運良く、製品の試作品にファンドがあつまり、コンセプトが受け入れられれば、数百名のファンが付く。そのファンから寄付された資金をもとに、本格的な商品化のための試作を行い、完成時には販売という形ではなく、寄付に対する「お礼」という形でユーザーに対して配布するのである。
惜しくも、ファンが目標に届かず、金額も目標金額に届かなかったプロジェクトは市場が無いと判断し、プロジェクト自体を停止するか、もしくはコンセプトさらにブラッシュアップして次の機会を与えれば良い。
これまでのメーカーの組織体系であれば、イノベーティブな製品は、担当レベルから上長に提案された段階で、「そのようなマーケットが無い」、「マーケットが小さすぎる」などという理由でお蔵入りしていたものだ。
しかしながら、すくなくとも、数百という少数のファンが付けば、そこにはマイクロな市場が存在することは証明できるし、まかりまちがって、数万単位のパトロンが現れれば、そこにはメーカーでも十分に参入する価値のある市場があることが証明されるのだ。メーカーはそのプロダクトを正式の製品として販売する体制を構築すればいいのだ。
このように意味出された製品は、これまでのそのメーカーの製品とは全く異なる、新しい製品コンセプトのものになる可能性もある。そう、製品開発に全くあらたなイノベーションを起こす可能性を持つわけだ。
この手法は実際、アメリカの小規模なメーカーでは採用されている。実際にadonitという米国のメーカーは、この手法を用いて、マーケティングを行い、4,975人から、$168,532の寄付を集めることに成功した。
この手法はテストマーケティングの生きをはるかに超えて、adonit社の主力製品を市場に知らしめることに成功した。
Jotを開発したadonitはもともとiPad関連のプロダクトを製造する小規模な文房のメーカーだった。
iPadを持っている方はスタイラスをお持ちおもちかもしれないが、スタイラスの先の太さに気がついたかもしれない、通常の太さのスタイラスだと、スタイラスの先は5-7mmであるこれでは細かい絵や、文字などを描くことがかなり困難なのである。なかなか描けないのである。この会社の開発したJotはペン先が2mmということで、iPadをつかってデザインをしているクリエーターに広く受け入れられたのだ。
この事例からもわかるように、こうすることにより、メーカー側は予め売れ筋の製品がわかり、在庫のリスクから開放される。同時に、クラウドファンディングで巨額の寄付を集めることに成功されれば、各種のメディアからも注目されそれだけで、広告効果をえることができるのである。
また、小ユニットから生み出される製品は、これまでそのメーカーが扱ってきた製品のラインアップから完全にはずれる、ある週のイノベーティブなコンセプトの製品になるかもしれない。
少人数の5名のチームからなる少ユニットの開発チームは、メーカーに所属しながら、文字通りベンチャー企業のようにワイガヤの会議をくりかえし、「ワクワク」を共有しながら製品開発をおこなうことができるのだ。
それは、メーカーの中の「イヤイヤ」を積み重ねる開発手法とは異なり、連続して「ワクワク」を生み出すことができる。
そのような開発組織を構築することに成功したメーカーは、社内の意識も大きく変えることが出来るだけでなく、これまで意見を潰されてきた若手エンジニアの斬新なアイディアをよりダイレクトに製品に反映させることが出来る。
クラウドファンディングによってファンがつくか、つかないかが製品化の重要な指標になるため、在庫が売れ残るリスクはこれまでの数分の1もしくは数十分の1に軽減されるのだ。
マイクロモノづくりを学び実践するための学校
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