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日本アニメ史上最短で打ち切られた伝説のアニメ「ドンドラキュラ」

今回は日本のアニメ史に伝説を残した「ドンドラキュラ」をお届けいたします。

数々の伝説の残してきた「マンガの神様」手塚治虫
この作品でもまた伝説を残すわけでありますが
本作は「日本アニメ史上最短で打ち切られたアニメ」という
不名誉な記録を残した作品であります。
なぜそんな結末になってしまったのか今回は解説していきますので
ぜひ最後までご覧ください。


それでは本編いってみましょう。


本作は1979年05月から1979年12月まで
「週刊少年チャンピオン」にて連載された作品であります。

あらすじは
一家揃ってルーマニアから日本へ引っ越してきたドラキュラ伯爵
日中は棺の中で眠り、夜になると美女の血を求めて街を彷徨う誇り高いドラキュラでありながら日本との文化の違いでトラブルを起こしたり
どこかおっちょこちょいな主人公ドラキュラと
定時制中学校で学校生活を謳歌している愛らしい娘チョコラが
ひたすらドタバタする愉快なコメディ作品となっております。


本作は大ヒット作「ブラックジャック」終了後に連載されたもので
「ブラック・ジャック」の二番煎じを嫌った手塚先生があえて
前作とは正反対のスタイルで描いたギャグマンガです。

フランケンシュタイン、狼男、そしてドラキュラという老舗鉄板モンスターのスタンダード中のスタンダード、ドラキュラをモチーフに描かれた設定ですがホラー要素なんぞ微塵もない完全ギャグ漫画になっています。

ドラキュラのお約束ともいえる弱点をすべて兼ね備えた上で
ドジで短気で美人に弱く、
毎回血を吸うことに苦戦し散々な目にあうドラキュラ伯爵のドタバタ劇…
手塚作品でここまで全編コメディタッチで進むのは珍しいくらい
完全なコメディ、ギャグ漫画になっています。


手塚先生自身も本作を大変お気に入りで
めちゃくちゃご機嫌で描いていたことも「あとがき」から見て取れます。

「ドン・ドラキュラ」は、
ぼくの読者の評価やぼくの作品の中の位置づけは別にして、
こんなに描いていてたのしい作品はありませんでした。
これが半年の連載で終わってしまったのは「ブラック・ジャック」のあとの作品で、なにかにつけて比較されたからですが、
ぼく自身としては十分のって描いたつもりです。
こういうムードのコミカルなドタバタがぼくにはピッタリあうのですね。

(講談社 手塚治虫漫画全集「ドン・ドラキュラ」3巻あとがき より)

…というようにめちゃくちゃノリノリで描いていた事が分かります。
元々どんなシリアスな作品の中にもギャグをかましてくる手塚先生が
全編ギャグというスタイルが楽しくてしょうがなかったんでしょうね。

そんな手塚先生のノリ気とは裏腹に人気のほどはイマイチでした。
これはやはり手塚マンガの真骨頂はストーリーにあるので
コメディタッチではその魅力が上手く活かされるのは難しかったのだと思います。

確かに先生が言うように「ブラックジャック」と比較された面もありますが
藤子不二雄作品や赤塚作品のような日常設定を面白可笑しく描くスタイルは
そもそも手塚スタイルには合わないんですよね。

「バンパイヤ」のようにストーリー主体にしてモダンホラー要素を混ぜて
そこにコメディ要素を入れるスタイルならまた違った作品になったのかもしれないんですけど…全編コメディはちょっとスタイルとは違いましたね。


何よりも本編には「変身」要素がありませんでした。

手塚治虫と言えば「変態」「メタモルフォーゼ」ですから
それらがなかったのは「らしさ」が半減どころか手塚作品ですらないと
位置付けても決して大袈裟ではないと思います。

ドラキュラという世界の鉄板モンスターと言えど
やっぱり手塚治虫らしさと言えば「変身」「人形」「獣」「無性別」
ですからそのどれもが該当してない作品となると、そりゃあヒットは難しいと言わざるを得ません。

これは決してこの作品を面白くないと批判しているのではなく
実際の手塚作品のヒット作を見てもらえれば分かりますが
手塚作品のヒットの要因には必ずこの「変身」「人形」「獣」「無性別」の要素が含まれています。(一部後年の作品を除く)
属性の違うものが混ざり合う危うさこそ手塚作品の面白さであり
そこに「生命讃歌」が混じり合うことで手塚作品が完成するわけですからその要素が欠けてしまうと純真な手塚作品とは違っちゃうよね、
という解釈になってしまうということです

これら検証については上記の記事を参照にしてみてください。
手塚作品を読み解く重要なキーワードを解説しており
手塚作品を100倍楽しめる記事になっております。


ちなみに
どうでもいい話ですが手塚作品の「バンパイヤ」がなんでオオカミ男なの?って思ったことありません?
「バンパイヤ」って普通ドラキュラでしょ…って
思ったのはボクだけではないはず(笑)
「バンパイヤ」の世界観もドラキュラ的な世界観でしたし
「アイエル」もドラキュラだし「ブラックジャック」のマントもドラキュラがモチーフだそうですし手塚先生ってかなりドラキュラ好きだったことが分かりますね。(はい余談でした)



ではやっと今回の本題、
「日本アニメ史上最短で打ち切られたアニメ」のご紹介いきましょう。

このアニメは1982年4月5日~1982年4月26日まで放映されました。

実に、たった4話で終了した「日本アニメ史」に輝く不名誉な記録を残した伝説の作品であります。

これは作品が面白くなかったということではなく
広告代理店が倒産したために止む無く放送中断となってしまった曰くの作品なのであります。
しかしそんな奇跡的なことが起きちゃうんですね。
今じゃまず考えられないことなのでおそらくこの記録は
「前人未踏の記録」として二度と破られることはないと思います(笑)

そしてオンエアはたった4話だけでしたが
元々26回放映の予定だったためフィルムとしては8話まで完成しており、
一部地域、地方局では幻の8話までオンエアされていた地域もありました。

これまで4話以降は幻の作品とされてきましたが
2020年5月に手塚治虫オフィシャル「youtube公式チャンネル」で
第5話の無料配信が公開されました。

今は残念ながら見ることができませんが、5話と言わずどうせなら全編公開してほしいですよね。

「ドンドラキュラ」全編無料公開!



…って言っても全部で4話しかないですからね(笑)

幻の未公開も併せて「全編完全公開!」って言っても8話しかないですから
ツッコミどころ満載で逆にめちゃくちゃ面白いですけどね。

「日本最短打ち切り作品」だからこそできる話題性。
これを利用しない手はないと思うんですけど…
「一挙全編無料公開!」
って4話しかないってめちゃくちゃ面白くないですか。
個人的にはめちゃくちゃ面白いし界隈ではプチ炎上しそうですけどね。


…ちょっとディスってるように感じられたかもしれませんが
実は結構、本編は面白いんですよ。
単なるカマセマンガじゃないって事が見れば分かります。

ドラキュラ伯爵役を内海賢二さんが担当しているんですけどこれがいい。

ドタバタコメディのコミカルな作品にめちゃくちゃマッチしてます。
内海さんってアラレちゃんのノリ巻き千兵衛さんのイメージがあるんで
アラレちゃんっぽい感じだと思えば分かりやすいかと思います。

こちらは公式サイトに1話のみ公開しておりますのでぜひご覧ください
【公式】ドン・ドラキュラ 第1話『ドラキュラ殺しがやってきた』


というわけで「ドンドラキュラ」お届けいたしました。

手塚先生が最も楽しんで書いた作品であり
ある意味で最も手塚治虫らしくない作品でもある本作
伝説のアニメと共にぜひご覧になってみてはは如何でしょうか。

こひ一度ご覧になってみてください。
それでは最後までご覧くださりありがとうございました。


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