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メキシコでコロナウイルス下におけるメンタルヘルスケア教育を受けてきたことについて

会社の教育の一環で、メンタルヘルスケア教育を受けてきました。収入も職も全く安定していないメキシコにおいては、6月から全面的なシャットダウンは段階的に解除を始め、社会保険省のプロトコルを遵守すれば、操業開始できるようになったんですね。

アクティブな国民が多いのか、私は在宅勤務で満足しているものの、同僚からも、「早く働きたい〜」とか「会社に行きたい」とか、そういうふうに言ってる人も多かった。


ただ、そんなにメキシコは明るい状況ではないと思う。

肌感覚だと、コロナなんてどうでもいい!っていう人と、気をつけよう!と気を張っている人、そんな感じの人が、ざっくりと多いと感じる。

ただ、どっちも怖いなということもあり、メンタル面でやられてしまう、という人が出てくるという懸念もある。

最悪はそれが犯罪や暴力に結びついてしまうこと。
実際に、この自宅待機期間中に離婚率は増えたとか。


メキシコのうつ病の現状

下のデータは(データの採取日は記載がなかったが)メキシコ人の精神疾患要因のグラフです。グラフの見方はおそらく縦軸が人数(母数がサイトに全く記載されていないので参考にならないが)、横軸が精神疾患、左から うつ病、持続性抑うつ障害、そううつ病、恐怖症、社会的恐怖症、広場恐怖症、不安障害、パニック障害となる。青は女性で、赤が男性である。

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データがメキシコ国民の母数に対する参考になるかはさておき、精神疾患へのケアの重要性が社会的にも問われているということが、メキシコ保健省としても訴えている。

UNAM大学(メキシコ国立自治大学)の2019年の調べでは、100人に15人のメキシコ人が鬱状態である、というデータもある。

さらにはこんな記事も…。

Depresión: en 2020 será la principal causa de discapacidad en México
うつ病:2020年 メキシコにおいて主要な疾患となるだろう

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メキシコ政府は結構わかりやすい図式を公表してくれてますね。出典元はUNAMです。全訳はしませんが、この図から言いたいのは、精神疾患が増えている、ということです。


つまり、「超陽気で、悩み知らず」なラテンアメリカ人というイメージはもう捨てましょう。(笑)

これから伸びていくメンタルヘルスケア

以上のデータから、社会として、もちろん会社でも家庭内でも、いかにメンタルヘルスケアが重要ということがわかります。

上記はもちろんコロナ前のデータです。コロナウイルスで鬱になる人、精神的に病んでしまう人は確実に増えてますよね。だからこそ、国としても、実際に社会保健省の「業務再開におけるガイドライン・プロトコル」にメンタルヘルスケアに関する項目は明記されています。

身近で、受動的にできるケアとしては、会社で訓練、教育を受けるということですよね。(なかなか国として、資料を公表しても、能動的に取りに行く人のパーセンテージは低いと思うので)

実際に、国も会社がわざわざメンタルヘルスケア費用を全額負担しないように、補助をつけてくれています。(しかし悲しいことに、企業や個人に対する支援金などはありませんが)

それくらい、国を上げて取り組んでいかないといけないテーマになっていることは自明なんですね。確実にここの分野は伸びる、というか人類が必要としているわけです。(カウンセリングやメンタルケアの分野をAIができるとは全く思えないので)


実際にメンタルヘルスケアトレーニングを受けてきた

自分がいる会社でも人事部から受けれるということで受けてきました。(半ば強制的でしたが。笑)

教育時間は6時間の超長丁場。正直な感想、長すぎて6時間ぶっ通し集中力維持できませんでした(笑)。

トレーニングの中身はこんな感じ。

1. 自己紹介
2. イントロダクション
3. 目的説明
4. コロナウイルスの現状
5. 笑いを用いたロールプレイ(拍手しながらリズムに合わせて踊る)
6. コロナウイルスで何を失いましたか?
7. エモーションについて
8. 今私たちに必要なもの (紙とペンとインクを用いたロールプレイ)
9. 再熟考するということ
10. ニューノーマルにおける業務について
11. 衛生措置について
12. 大事なもの(紙とペンを用いたロールプレイ)
13. 歌
14. 不安度チェックテスト
15. 終了

途中、なに!?っていうよくわかんないトレーニング(歌とか踊るとか)もありましたが、驚いていたのは私日本人だけであって、メキシコ人の同僚は割と普通にこなしてました。文化の違い…。

全部のトレーニング内容を話すのも長くなるので、ざっくりと感想だけ言います。



・なぜ今ニューノーマルといわれているのか、なぜこれを受け入れないといけないのかということが感情的動的に説明されていて、ウイルスの感染から自分や身の回りの人を守ることの大切さが主なメッセージだと感じとれた。伝えたいことが全体の教育のなかでも明確だったので、これから意識し続けないといけないことが各で理解できたと感じた。


・新しいことを学んだという感覚はないにせよ、ニューノーマル化でコロナウイルスとともに共存していくために何をしたらいいのか、というアクションの意識づけになったと思う。

・講師の方々の説明は非常にダイナミックでエモーショナルなやり方だった(劇団員なのかなという)。そのため頭に入ってきやすかった。事例をビデオとアニメーションで説明されていた。

・参加者が積極的に意見を言えるような雰囲気をつくっていて、参加者全員が発言、意見を言う場になっていた。(当てられるまで私は発言せず、改めて文化の違いを感じた)

・国民性か、参加者は特に恥じらいもなく、発言、ロールプレイにも積極的に参加していた。(主張を否定するとかそういう姿勢でなく、まずは参加者全員が主張者の意見を受け入れる、理解する、ということが自然と行われていた)

・6時間近くの教育は、私は集中力が2時間超えたあたりで途切れてしまった。
新しいことを学ぶという教育ではなかったため、やり方によっては時間を短縮できると感じた。正直、自分のその日の業務の方が気になってしまった。

・日本人的感覚(私の感覚)としては、教育のアプローチの仕方が、感情に訴えて、理解を促し、意識させるということだったので、エモーショナルなメキシコ人には合っていると考えられる。(日本人はどちらかというと、正しい情報をもとに理論的に理解するという人が多いと感じる)

・ロールプレイについて
視覚的、動的なアクションをすることで、考える機会を与えてくれたように感じた。感覚的にこのトレーニングの目的が理解できるようになっていて、読んで〜頭で理解して〜というプロセスじゃなく、動いて〜受け入れて〜頭で理解する〜行動させる〜、こういうプロセスが含まれていたんだと気づいた。


こんな感じでした。


トレーニングの効果

はっきりと目に見える形で効果は現れないが、学んだ行動、意識しないとやっていけないことが自然と習慣化していく、そういうことが結局のトレーニングの効果として現れてくると思う。

前述したとおり、特に新しい学びはなく(唯一、自宅待機期間で離婚率が増えたということは新たに知ったこと)、もう自分もすでにやっていることでもあったので、自分の変化に置き換えると、あんまり無いのかなという感じでした。

私、日本人的には能動的に考える機会を与えてくれたと思いました。日本人としての意見を主に質問されてて(唯一の日本人参加者だった)、客観的・一般的意見した言わせてくれなかったという愚痴はあるけど、改めて日本人の考え方を考察する機会にはなりました。

メキシコ人的にも同様で、新たな学びは無いにせよ、意識できていなかったことを意識し始め、徐々に習慣化していく、そういう動きが見られると思います(実際に意識し始めていて、ゴーグルしてなかった人がし始めたりとか)。



コロナ下のメンタルヘルス

思っていたメンタルヘルストレーニングではなかったが、中身としても身体を動かしたり、声を出して笑ったり、受動的だけど、ポジティブになれるようなことをさせてくれました。

失業や収入が減った、犯罪が増えたなど、ネガティブなことが多く、塞ぎ込んでしまう人は多いはずで、社会の中で誰がそういった人をサポートするかというと、行政が直接介入することはできない。毎日行く会社だからこそ、ソーシャルなケアをすることができるのかなと感じました。じゃないと、誰もする人がいなくなっちゃう。会社ってある意味、道徳を教えたり、メンタルヘルスケアをする場としてもいいのかなと思いました。性善説だけど、会社ってそんなに悪い人、いないよね。

やっぱり不安が募る日々だし、「お酒飲んで忘れよう!」とか「踊りに行こう!」「旅にでよう!」とか簡単にできない昨今だからこそ、社会でケアしていかないといけない問題だなと感じました。


以上、長々と書きましたが、日本とメキシコだと事情も違うし、アプローチの仕方も違う。比較的エモーショナルな人が多いからこそ、喜怒哀楽も激しい。受けたトレーニングを日本人に対して同じように使えるとは思えないけど、本質的に言いたいことは共通して、伝えないといけないこと、そしてメンタルケアの重要性は学べたのかなと思います。

それでは。

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