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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【4月6日㈬~4月12日㈫】

2年前はオンラインのみ、去年は7月に時期をズラして開催されたカンヌ国際映画祭ですが、今年は例年通りの時期、5月17日から始まるそうで、明日14日、日本時間の午後6時頃、ラインナップが発表されます。日本でも既に劇場で特報がかかり始めているバズ・ラーマン監督の『エルヴィス』、5月27日からやっと公開のトム・クルーズ『トップガン マーヴェリック』の上映はすでに発表されていますが、是枝監督が韓国で撮った新作はコンペ入りするのか?とか、デヴィッド・リンチの新作が出る、というの噂はホントなのか?とか、興味は尽きません。

日本映画が各部門にエントリーされた場合、昨年の『ドライブ・マイ・カー』と同様、監督やキャスト、関係者がカンヌ入りするのは間違いないと思いますが、帰国時の隔離等の措置の緩和を受けてか、バイヤーとしての参加を決めている同業者の方も今年は多いと聞いています。私も思い切って行っちゃおうかな…、という気持ちが無いワケでもなかったのですが、まだちょっと様子見。かれこれ2年半近く海外に出かけていないため、トラブル対処能力が著しく低下しているのは確実。何かイレギュラーなことが起こったら、乗り越えられる自信がないのも、今回参加を見送った理由の一つです。

30年以上この仕事をしてきて、出張中数々のトラブルに見舞われてきました。その大部分は移動にまつわること。航空便の遅延や欠航、ストライキに伴って予定の変更を強いられた頻度は割と高いし、目的地の空港に到着したはいいけど、荷物受け取りの際に、実は自分の乗った便に荷物が一緒に乗ってなかった…という経験を数えたら片手では足りません(ターンテーブルでは、自分のスーツケースが出てくるか、毎回ドキドキします)。

そうしたトラブルが起こった場合、皆さんもご承知かと思いますが、海外では待っているだけでは、何も解決しません。自ら積極的に行動を起こさないと置いてけぼりを食うだけ。以前の私なら、そんな事態に陥った際は“火事場の馬鹿力”で乏しい語学力もなんのその、その状況を打開すべくトラブル・シューティングに邁進したものですが、今はそんなパワーが出るかどうか疑わしい。自分の乗るはずだった便が欠航になったら、モタモタ、モジモジしてるうちに振替便を一番後回しにされてしまいそう。

CANCELの赤い文字が見えますでしょうか?欠航だらけの掲示板。

かつての私は、今思い返せば結構頑張ってました(笑)。例えば直近のトラブルは2019年、コロナ直前の10月、カンヌのテレビ番組見本市MIPCOM出張の際の往路。関東地方を台風が直撃の予報で、当日成田空港に行くのも困難になりそうだったので、前日成田のホテルに泊まりました。が、翌日当初のヘルシンキ行きは欠航。12時間後のロンドン便に振り替えてもらったけど、それも欠航。最終的に深夜発の上海行きに乗って、上海からロンドン便に乗り換えてヨーロッパ入り。その便も遅延したけど、何とかギリギリ間に合ってロンドンからニース便に乗り継ぐはずが、手荷物の中に入っていたシェービングクリームがセキュリティに引っかかってアウト~ッ!目の前でゲートが閉まってしまいました。それでも、次の便に乗れて最終的には予定の15時間遅れでカンヌ入り。諦めず、その都度空港のカウンターで交渉したおかげです。

最大(最長)のトラブルは何かというと、忘れもしない2010年4月、やはりカンヌで行われているテレビ番組見本市MIP-TV出張の際の復路、アイスランドの火山噴火の影響でヨーロッパの多くの空港が封鎖されてしまったための、ロンドン足止め一週間です。カンヌでの仕事を終えてニースからロンドンに移動。一泊して翌日、帰国便に乗るつもりだったのですが、ヒースローに到着すると異様なほどの混雑で何だか様子がおかしい。やっとのことで入国し、市内に入るために乗ったヒースローエクスプレスの、車内のテレビ画面を見て事態を把握しました。火山が噴火してる!!

その日のうちに空港は全面閉鎖。贅沢にも“ロンドンに寄って、ウエストエンドでミュージカル(「リトルダンサー」でした)を観る”なんて余興を入れてしまったため、一泊して翌日帰国のはずが、一週間もロンドンに滞在するハメに陥ってしまいました。当時は、まだ海外用携帯電話はレンタルしていた時代。街中のインターネットのWifi環境も整備されていなかったので、午前中はホテルの部屋にこもって、固定電話からなかなか繋がらない航空会社の窓口に何時間も電話し続けて、その時点の状況を確認。午後はやることが無いのでロンドンの代表的な公園に出かけて行って、公園内をグルグル走って制覇する、という孤独でお金のかからないアトラクションを実行していたのでした。

これを観たかったために…。今となっては良い思い出ですが。

ホテルが特別に安い料金で連泊させてくれたり、一度二度しか会ったことのない友人の友人(ロンドン在住)に、ご飯に付き合ってもらったり(「必要なものありますか?」と聞かれて、「小分けした洗濯洗剤」と答えたのを良く覚えてます。一箱買いたくなかった。笑)、人の優しさに触れた一週間でもありました。同じタイミングで東京便に乗り継ぐ他の経由地に足止めを食らってしまった同業者も多く、パリに足止めを食らった親しい同業者とは携帯でやり取りし、パリの私の友人を紹介してあげたりして、励まし合ったりもしました。その同業者は、私の友人のアパルトマンを訪ねるなり「爪切り貸してください」と言ったらしい(滞在が長引くと、私の「洗濯洗剤」もですが、思いがけないものが必要になる、と知りました)。この辺りのことは、去年6月の当通信でも触れていますので、よろしければお読み下さい。

段階的に空港閉鎖が解除になり、帰国便の予約が取れたのが確か4日後。先が見えてホッとしたので、コッツウォルズに遠征して村々を走って巡ったりもしました。帰国出来ず原田知世さんのライブに行けなかったのは悔しかったなぁ。でも、アイスランドでレコーディングした「eyja」というアルバムのツアーに、アイスランドの火山噴火のために行けなかった、という符号の一致には運命を感じずにはいられません…(言ってろ)。

何の話か良く分からなくなりましたが(笑)、ただでさえトラブルが起こりがちな海外渡航なのだから、早く心配のタネ(戦争も!)が無くなることを祈らずにはいられない…という無理矢理なオチでどうでしょうか。来月カンヌに行かれる皆さん!どうぞお気をつけて!!

texte de Daisuke SHIMURA







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