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少女たちが直面する現実。映画「17歳の瞳に映る世界」

そういえばNYって終電ないんだなーと、観ててくだらないことを考えた。

STORY:
17歳の少女オータムは、近くの危機妊娠センターで自身が妊娠10週目を迎えていることを知る。
彼女が住むペンシルベニア州では未成年が親の同意なしに中絶手術を受けることが禁止されていた。
やむなく、オータムはインターネットで見つけたいくつかの方法で中絶を試みるが失敗。
アルバイト先でオータムの異変に気づいた従姉のスカイラーは、仕事場から金を盗んでオータムと共に未成年でも自分の意志で中絶することが認められいるニューヨークへ向かう。
長距離バスでの移動中、2人は若い男性に話しかけられた。スカイラーはしつこく口説いてくる男性にうんざりする。
ニューヨークの産婦人科で再度検査を受けたところ、オータムは既に妊娠18週目に入っていることが判明、翌日まで手術を待つ羽目になる。
2人は地下鉄に乗ったりゲームセンターで遊んで時間を潰すが、オータムは紹介された病院でまたしても困難に直面することになる。

ものすごいざっくり言うと「17歳の少女が中絶手術のためにNYへ向かう」という、「マッドマックス 怒りのデスロード」ばりにシンプルなストーリーである。

しかし、最初から最後まで徹底して描写がリアル。
なんだかドキュメンタリーを観ているような気持ちにさせられる。

途中、オータムが病院に行かずに子供を中絶しようと薬を大量に飲んだり、自分のお腹をアザができるほど殴り続けるシーンがあって思わず目を背けそうになった。

17歳で妊娠って、もし自分だったらどんな気持ちになるんだろうか。
その頃の僕には、大した秘密なんてなかった。
点数が一桁のテストの答案用紙や友達から借りたAVを隠すとか、せいぜいそれぐらい。
オータムが抱えた不安はそんなものとは比べ物にならないだろう。
自分が同じような状況だったら、と思うとそれだけで不安な気持ちになる。
女性であれば、なおさらそれを強く、身近に感じるはず。

加えて、この作品に出てくる男って徹底してクソ野郎ばっかりなんですよね。
オータムの父親をはじめ、ライブ中のオータムに罵声を浴びせた同級生(明瞭には描かれなかったけど、こいつが子供の父親だったりするのだろうか)、オータムとスカイリーを見て電車の中で股間をまさぐる男。

スカイリーがナンパされた男にキスされながら影でオータムと手をつなぐシーンなんて、男の勝手さと女性の生きづらさが凝縮されていた気がする。
スカイリーは序盤からバイト先でお客さんに連絡先を聞かれたり、店長にちょっとセクハラめいたことを言われたりで。
キレイな人にはそれはそれで色んな悩みがあるんだろうな、と思わされた。

オータムが病院で質問を受け、答えていくに連れて子供ができた秘密が明らかになっていくシーンは観てて辛いものがありましたが、かなり惹きつけられてしまった。
序盤から言葉少なく、誰にも頼ることなくお腹に宿した命をどうするか決めたオータムの心が解けていくような雰囲気。

この時、病院のカウンセラーがオータムに質問を投げかけ、答えを4択に絞ります。「一度もない、たまに、時々、いつも」。

この映画、原題はそのセリフそのまま「Never Rarely Sometimes Always」なんですね。
こっちの方がセンス良いなーと思いました。まあ原題だから当たり前だけど。

この4択の質問の投げかけで、オータムの心情がどんどん見えてくる演出と彼女の顔だけをワンアングルで捉えたカットは素晴らしかった。
画面から目を反らせませんでした。

結論として良い作品ではあったんですが、土日に観る映画としてはちょっと暗すぎるかもしれない。笑
心に余裕があるときに鑑賞することをオススメします。

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