酷暑の王子様
今年の異常な暑さを報じるニュースや知らせが多い。しかし、それをクーラーの効いた部屋でアイスを食べながら見ている私にとっては、正直実感がわかなかった。基本的に部屋の中から出ずに一生を終えたいという夢を昔から抱いてはいるが現実はそういうわけにもいかない。ネットショッピングだけでは解決できないことも世の中にはあるのだ。
しぶしぶ外にでようかと玄関ドアを開けたが、その刹那、爆速で舌打ちがでてしまった。暑い、というか熱い。ロウリュウかのような熱波に顔面を襲われた私には、不機嫌になる以外の選択肢がなかった。それゆえのノータイム舌打ちだった。こんな暴力的なサウナで、整うわけがない。
改めて暑さに関するニュースを調べていると、小中学校のプールが暑すぎて中止になったのだそう。なんでも水温が上がりに上がってしまったのだとか。
なにそれ、地獄の拷問かよ。
こんな異常気象が続く以上、部屋から出るという生き方を何が何でも避けていきたいという願いはより大きくなる。
そんなことを考えながらキーボードを叩いていたところ、足元を何かが這う感触があり、恐る恐る覗き込むとバカでかい蜘蛛だった。
「でかい蜘蛛」と聞いて皆さんが想像する蜘蛛のサイズがあると思うが、それの1.3倍くらいだと思ってくれてよい(なにせ"バカ"がつくほどである)。
暑さ問題を一瞬で解決するレベルで肝が冷えるほどギョッとしたが、実際、そのサイズの蜘蛛が自分の脚を這いあがってきたその時は意外にも冷静で、彼をみて私は一言「ふーん」とつぶやいていた。
続いて、まるで越前リョーマの如く、ラケットに代えてティッシュを手に持った私は、蜘蛛に対して「殺すつもりはない、共存しよう」と自分のパワーが制御できないアンドロイドのようにボソボソと声をもらしながら追いかけていた。
ようやく捕まえティッシュにくるんだ頃にはそれなりの汗をかいてしまっていた。いや、仕方ない。これも良い運動だ。なんだか妙に爽やかな気分だった。まるで王子様。
しかしながら彼を逃がしてやろうと玄関ドアを開けたその刹那、再び私を襲った熱波(ロウリュウ)に大きい舌打ちをしたのは言うまでもない。
イライラした気持ちと裏腹にそっとドアをしめて一言、「ふーん、あっちぃじゃん」。
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