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バックパッカーズ・ゲストハウス(63)「不埒な競馬観戦の仕方」

前回のあらすじ:ずっと空き店舗になっていたゲストハウスのある雑居ビル1階に、ある日カレー屋が出来ていた。そこに住人のニキがいるのを見つけて入ってみると、『大盛り無料』『ビール一杯無料』という過剰なサービスを受けた。【これまでのお話https://note.com/zariganisyobou/m/mf252844bf4f2

 東京での生活が三ヶ月もする頃には、望み通りに倦んだものが溜まって来た。ひねり揚げとスイスロールのセブンイレブンセットか、ツナのパスタか、牛丼かカレー。どれかを一日二食くい。その辺をウロウロするかゲストハウスでゴロゴロするかして過ごした。彼女との電話は毎日した。

 五月の終わりに、東京競馬場でダービーがおこなわれると聞いて行こうと思っていたが、昼過ぎまで寝てしまって諦めた。それでも皐月賞を観覧しに行った時に儲かった記憶があったので、今からでも場外馬券を売る後楽園なら間に合うかと思い、大雨の中、電車に乗って向かってみた。

 後楽園の場外馬券場は私の想像を遙かに越える人が集まっており、その殆どがオヤジだった。雨に濡れている人が多いことも相まって犬のような匂いが漂っていた。

 リーチザクラウンという馬の名前が可愛いという、まったくのビギナー的な買い方で前回競馬に行った時のメインレースは外した。それでも今回も同じリーチザクラウンで勝負しようと思っていた。もし他の馬で勝負して、リーチザクラウンが勝てば、悔しいと思った。

 しかし、締め切り寸前で、何となく嫌な感じがして、結局買うのを辞めた。わざわざ後楽園まで行って、なにも買わずに中継だけ見て帰った。
 レース前には、カップラーメンの相場が四〇〇円と言って叩かれた当時の首相が出てきたり、北島三郎が国家斉唱をする姿が映された。北島三郎が出てきた時には、場外であるにも関わらず、後楽園に、「おおっ!」という歓声が上がった。その瞬間の熱気に、私は寝坊して本場に行かなかったことを悔やんだ。

 レースはスタートから終始二番手に付けていたリーチザクラウンが最後の直線でトップに立った瞬間に私は青ざめた。残り四〇〇メートルを切ったところで、内から来たロジユニヴァースという二番人気の馬がリーチザクラウンに並ぶと、私は買わなかったことで悔しい思いをしたくなかったので、ロジユニヴァースに声援を送った。
 そのままロジユニヴァースが交わし、リーチザクラウンが二着でレースを終えると、私はホッと胸をなで下ろした。

 それで手を出さなかった馬券分得をしたように気になって、前日、仰木たちの自炊グループが野菜炒めを作っていたのが旨そうで羨ましかったので、その日は、中華料理屋で晩飯に野菜炒めを食った。

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