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小説がかけるからといって、ゲームシナリオが書けるワケではないお話

オリジナルの小説を書いたり、二次創作して頒布したりしている方もいるでしょう。しかし、小説がかけるからといって、ゲームシナリオが書けるワケではありません。
ゲームを知らないゲームシナリオライターのお話も、ここでします。
※本職さんにケンカを売っているワケでも、自分の方ができるという話でもありませんので、くれぐれも勘違いなさいませんようご留意願います。

今回は『なぜ書けないのか』の部分にスポットを当てていきます。

・自分の立ち位置について

ゲームプランナーですが、ゲームシナリオを書くことはもちろん、あがってきたゲームシナリオから必要な要素を抜き出したり、矛盾やおかしなところがないかをチェックするお仕事などしていました。

先に書きますが、自分は小説が書けません。
キャラセリフは書けますが、ト書きが書けません。

これはあくまで自分の考えですが、情景描写はゲーム画面で表現されるし、キャラの心情はセリフや声優さんの演技、キャラの表情などで回収される、そして、それらをどう受け取るか、どう思うかはユーザー次第だから、です。

もちろん、シナリオを書く上で演技指定があればその旨は書きますし、こういう背景で、こういう演出でやって欲しいと要望があれば、シナリオ中に記載します。

プロアマ問わず、情景描写、キャラの心情を書ける方はすごいと思っています。語彙力の違い?見えている世界が違うのか…?(恩田陸さんの蜜蜂と遠雷はいいぞ…)
※小説は書けないよりも書けた方が幅も広がるので、勘違いされないように…!!

そんな感じで今まで奇跡的に生き残ってきましたが、プロジェクトによってはきっと、通用しないでしょう。ノベルゲー作れって言われたら、たぶん相当苦戦します。たぶん無理かも。ほんと、むずしくてこわい業界です。

・小説は書けるのにゲームシナリオは書けないのはなぜか

たまに小説を出していらっしゃるライターさんや、個人で小説書いてます!!という方とお仕事をしたことがありますが、どっぷりゲームの世界に浸かった側からすると、違うなと感じることがあります。それはなぜか。

1:無から有を生み出すのと、すでにあるものを発展させるのは違う

オリジナルでお話を生み出すことができるのは、ものすごい技術です。(自分は不得意ですし、作っても個性がありません。薄っぺらいです)
すでに存在しているものを、どう発展させるかよりも大変です。

しかし、ゲームシナリオの場合、そのどちらの技術も必要になります。

シナリオをイチから作る、というオーダーであれば無から有を(といっても、実際には企画書を通すためにある程度のベースがあったりします)。

ゲームのサブイベントや、ソシャゲのイベントのように、すでに設定やらが完成しているものでシナリオを作成する場合は、それらをどう生かして、どう守って作っていけばよいか、発展を求められます。

無から有の場合、創造主は書き手になるため解釈違いは発生しないでしょう。(クライアントのオーダーから外れるなどはありますが)

すでにあるものを発展させる場合は、存在している設定やストーリーの流れなどを把握しなくてはなりません。
この把握が、ネックとなります。
※ゲームプランナーがシナリオに関わる場合は、主に発展が求められます。

2:キャラ解釈が違う

例えば、ソシャゲのイベントのシナリオをお願いするとします。

ゲームの本編が第一部と第二部に分かれているものがあったとして、キャラAが第一部では自己中心的な振る舞いをしていたが、第一部の終盤で改心するできごとが起きる。
第二部では、そんな自分を反省し都度、自身をおさえようと努力する。

とした場合、キャラAは第一部、第二部で、印象が変わります。
おそらく言動も変わるでしょう。
こういったキャラはこの時系列で!という指定でお願いすることがあります。

時系列は第二部で、としたさいに、第一部のキャラであがってくることがあります。
なぜなら、書き手には第一部のキャラの印象が深く残っているから。

これの解決策は、書き手がどれだけキャラを把握できるか、自分の中で咀嚼できるかになります。

恐ろしいことに必要な資料を渡しているにも関わらず、口調や一人称すら違うものがあがってくるケースもあります。

このケースは「このキャラはこういうキャラだ」と、さわりだけ確認して自分の中に存在する別キャラをそのキャラに当てはめたのでは?と、推察します。
(資料が膨大すぎてそこまで確認する時間がない、というのもあるかもしれませんが)

求めているのは、お願いしたキャラであって、書き手の中に存在する別キャラではないのです。

3:ゲームを知らないから

いくら優れた情景描写をしようが、繊細な心情描写をしようが、ゲームは画面に映るものしかユーザーに見せられません。

どれだけすごい描写を書いても、マップは限られますし、演出も開発費やスケジュールなどによって制限が出てきます。

小説ならト書きで回収されるべき内容が、ゲームではセリフで回収されることも多々あります。(表現できないので!!)
それらをどう見極めるかは、脳内でゲーム画面を想像し、実際に動かしてみるほかありません。

では、それをするのになにが必要か。
ゲームをプレイして、ゲームとはこういうものだ、というイメージを掴む必要があります。
そして、ゲームの表現にあわせたシナリオに落とし込む。

たとえば、ドットのゲームなら大量の兵士、とかの表現もしやすいが、3Dだと描画負荷の問題でNG、ADVなど立ち絵表現なら専用の一枚絵が必要=工数捻出ができるか?など、知っているのと知らないとでは、大違いです。
表現できないものがあがってきた場合は、表現できるようなものにライターさんに調整依頼することもあります。

・余談

過去にADVゲームでとある外注ライターさんにお願いしたときの話です。
このときは、選択肢によってお話が多少分岐するストーリーでしたが、あがってきたものは選択肢が一切存在しないものでした。

なぜか。
ストーリーは最初から最後まで一本道だと思っているから。
確かに、世に出ている小説は選択肢はありません。

ラチがあかないので打ち合わせで話をするも「選択肢によってお話が分岐する」というのが、理解できないようでした。○○のゲームのように、といっても話が通じません。
ようやくわかったのは、この外注ライターさんはゲームをプレイしない、知らないということでした。

話が通じないワケです。

本プロジェクトは一瞬関わっただけで、その後、どうなったのかはわかりませんが無事、世には出たのでなんとかなった(なんとかした)のでしょう。

・まとめ

本を出して活躍していても、オリジナル小説を毎日アップしているような人でも、求められている仕事ができるかどうかは別のお話です。

運動神経がとてもいい人なのに、泳げない、自転車がこげない、一輪車に乗れないなど、そんなイメージです。

キャラの解釈方法はひとそれぞれですが、脳内で勝手にキャラが会話を始められるくらいまでキャラ像ができていればいいのかな、とは思います。

・学生と新人に伝えたいこと

・自分のように小説は書けないし、本もあまり読まないけれど、運よく生き残っている人間もいます。ゲーム業界はそれだけ特殊です。どこに縁があって、運が転がっているかもわかりません。

・もしゲームシナリオやキャラセリフを書いてキャラが違うなど言われた場合、なぜ違うのか、どうして違うものになってしまったのか、その原因を探ってみてください。
それをするだけで、キャラの解釈が深まりますし次に書くときの力になります。

(何度指摘しても直さない、学ばない輩も何人か見てきました…。こうなって欲しくはないのです)

・ゲームに携わる以上、ゲームについては知っておいた方がよいです。
新作は必ずプレイしろ、トロコンしろなどは言いません(自分もやってないので)
イメージの共有や、言語化するさいに、プレイしたゲームを例としてあげると伝わりやすいことが多いです。

応援されると生きる気力がわいてきます! もう少しがんばります!!