見出し画像

「セルフケアテクノロジーズはなぜ睡眠市場に参入したのか」CEO・宮地俊充さんインタビュー

私たちZAKONE(ザコネ)は、睡眠業界を盛り上げるために生まれた、企業や個人をつなぐコミュニティです。こんにちは!ライターの小澤です。

ZAKONE MARKET REPORT前編では、SNSで話題のSleepプロテインについて迫りました。
https://note.com/zakone/n/na110222dec64

後編となる今回は、様々なキャリアを歩まれて睡眠市場でご活躍されているセルフケアテクノロジーズ代表取締役社長の宮地俊充さんに、人となりや人生観、どのようにして睡眠事業を始めるに至ったのかetc..インタビューを行いましたので、ご紹介させていただきます。

①宮地さんのキャリアについて

ーー様々なキャリアを歩まれていますが、まず最初のキャリアをエピソード含めて教えてください。
大学卒業後、公認会計士の資格に合格して監査法人に勤めました。当時は今とは時代が違って、深夜まで働くのが当然の時代でした。私は人より社会人になるのが遅かったこともあり、人一倍頑張らなきゃという気持ちが強く、自発的に死ぬほど働きました。その時は20代ですし、健康について考えたこともなかったです。
監査法人は過去の数字が正しいかのお墨付きを与えることが仕事なので、「もっと未来志向の仕事もやってみたい」と考え、1年でM&Aの会社に転職しました。

ーーM&Aの会社ではどうでしたか。
監査法人時代よりもさらに過激に働く文化がありそれこそ死ぬほど働きました。仕事の内容は新聞の一面に載るような事業再生やM&Aの案件が多く、この上ない環境でした。

ーー少し話が逸れますが、深夜までがつがつ働くことに抵抗はなかったのでしょうか。ヘルスケアの側面からも気になります(笑)
幼稚園からサッカーをやっていて、体育会系上がりなので、メンタルもフィジカルも困ったことはないです。

ー-M&Aの会社から起業するに至った経緯を教えてください。
M&Aの仕事をしている時に、ちょうどFacebookの「ソーシャルネットワーク」という映画をみて、こんなにIT業界って自由で楽しいんだと気づきました。そこからIT系のベンチャーの社長に何人も会って、2010年からEC系のベンチャーのCFOとしてジョインしました。大企業の場合は、年功序列でなかなか経営陣とは働けないですが、そのベンチャーは当時10名足らずの規模の会社だったので、社長と一緒に仕事をすることが出来ました。社長を身近に感じたことで、自分でも起業できるのではと思うようになりました。

ー-とてつもないスピードですね。最初の起業はどのようなことをされていたのでしょうか。
2011年11月にオンライン英会話の会社を起業しました。当時の自分の興味が英語・IT・金融だったので、英語をめちゃくちゃ勉強していたのですが、こういう風にすればもっと英語が習得できるんじゃないかというメソッドに気づき、それをネットサービスにしたのがベストティーチャーという会社です。様々ありましたが、3年目には黒字化して、5年目にSAPIX YOZEMI GROUPに会社を売却しました。

ー-会社を売却した後、また新規事業をしたいというお考えがあったのでしょうか。
この先どうしようかと色々模索していました。シリコンバレーに行ったりエンジェル投資家をしていましたが、やってみると自分は投資業は向いていないと気づきました。

ー-金融・IT・起業と様々なキャリアを歩まれている中で、なぜエンジェル投資家は向いていないと感じられたのでしょうか。
エンジェル投資家はサポーターとしての役割が大きいのですが、自分はプレーヤーとして自分でドリブルしてゴールを決めたいタイプなので、サポートに徹する気質が不向きだと感じるようになりました。

②セルフケアテクノロジーについて

ー-そこからセルフケアテクノロジーズを起業するに至ったと。
そうですね。そうした思いがありながら悶々としていたら、2020年の頭にコロナが流行り始めました。考えられないくらいのスピード感で世界が変わり、これは転換点だと思いました。社会活動が停滞し、情勢が変わる中で、これからもっと「健康」を見つめる方が多くなるし、自分も40代に入ろうとしていたのでセルフケアへの意識がありました。そこでヘルスケア事業をやろうと仲間と起業したのがセルフケアテクノロジーズです。

ーー先ほどのシリコンバレーのお話を踏まえると、アメリカでの起業も視野に入れていたのでしょうか。
当時はアメリカや海外での起業も考えていました。ただ治安が悪いのを目の当たりにしたり、今の自分の強みが行かせないと思い、日本で起業しました。

ー-セルフケアテクノロジーズではどのような事業を行っているのでしょうか。
まず、コロナ禍でジムにいけなくなってしまったので、オンラインフィットネスを立ち上げました。前の会社のオンライン英会話のノウハウを、オンラインフィットネスに生かせる部分もありました。最初から海外も見据えて、日本語版と英語版を同時リリースしました。ただ、緊急事態宣言があると会員さんが増えるのですが、コロナがおさまると会員さんが減るといった調子で、外部要因に左右されるビジネスだったので、難易度が高いと思いました。それで次はセルフバンクというヘルスケアアプリの開発を始めました。

ー-セルフバンクは事前予防に特化されているかなと思うのですが、どういった経緯で始められたのでしょうか。
デジタルヘルス分野には多くの有名なスタートアップがいますが、ほとんどのスタートアップはシックケア、つまり病気になった後に対処するサービスです。AI診療やオンライン診療、デジタル治療アプリですね。でも、予防の段階で止めることの方が本質ですし、そこで決定的なサービスがなかったのでチャレンジしようと思いました。社会的にも医療費の増大が問題となっていますし、そもそも医療費を増やさないように頑張る人たちがいてもいいのかな、と。

※デジタルヘルスとは
人工知能(AI)やチャットボット、IoT、ウェアラブルデバイス等、最新のデジタル技術を活用して、医療やヘルスケアの効果を向上させること

ー-事前予防の領域で事業展開する中で、課題感等あれば教えてください。
医療費で自己破綻する人が多いアメリカと比べると、日本は国民皆保険があることで、病気になって治療するところからヘルスケアが始まるんです。「病気になるまで自発的にセルフケアしない」文化ができてしまったことが問題だと思っています。

ー-なるほど。確かに病気になって初めて健康に向き合うという国民性はありますね。そんななかで、セルフバンクの特徴やSleepプロテインをリリースした経緯を教えてください。
セルフバンクは運動・食事・睡眠の3つの機能を具備したスーパーアプリなんですが、実際にアプリをリリースしてみると、3つの機能のうち睡眠機能の使用割合がほとんどでした。これなら睡眠にもっと特化していこうという話になり、Sleepプロテインの開発を始めました。

ー-数ある食品の中でプロテインと組み合わせた経緯を教えてください。
睡眠改善の方法は、生活習慣改善か睡眠薬のどちらかになりがちです。もちろん生活習慣改善ができればいいのですが、現実的にはなかなか難しいです。寝る前にお酒を飲むのをやめたり、スマホを見るのをやめられる人はほぼいません。眠れない状態が続いて、生活に支障をきたすまでいってしまうと、睡眠薬の出番ですが、睡眠薬には抵抗がある人が多いです。生活習慣改善と睡眠薬という両極端の選択肢しかなかった中で、「食でセルフケアする」という新たな手段として登場したのが「ヤクルト1000」でした。
僕らの開発したSleepプロテインは、ベースフードの発想に近いです。普段食べているパンとかパスタにビタミンやミネラルが入っているなら手軽でいいじゃんと同じで、30-40代の健康意識の高いビジネスパーソンなら飲んでいる人も多いプロテインに睡眠サポート成分を足したらいいのでは、というのが出発点でした。

※ベースフードとは
ベースフード株式会社が提供する1食で1日に必要な栄養素の1/3がすべてとれる完全栄養食で、必要な栄養素がブレッドなどに含まれているもの

③睡眠・ZAKONEについて

ー-睡眠に力を入れるようになったきっかけは、睡眠に元々興味があってことなのか、アプリの内容をみて手ごたえを感じたのか、どちらなのでしょうか。
睡眠に最初から注目していたわけではありません。オンラインフィットネスとヘルスケアアプリを運営する中で、健康=運動×食事×睡眠という公式が見えました。運動はジムがいくらでも街中にありますし、食事はダイエットが大人気です。一方、睡眠はそれほどソリューションがなく、可能性を感じました。

ーー睡眠が運動や食事と比べて伸びていない原因はどういったところだと思いますか。
運動と食事はダイエットと結びつくことが多いですが、なぜそうなったかカラクリをお話しします。体重計を一家に一台置かせたのが革命でした。受験の時の偏差値のように、体重が何㎏だったかを手軽に数値化できるのでダイエットがヘルスケアで最大の産業に育ちました。後は、お腹が出てるとか足が太いというようにビジュアルで可視化されるのも大きいです。一方、睡眠は主観によるところが大きく、数値化もビジュアル化もしにくいので、問題を強く認識したり改善を実感するのが難しいのです。

ー-とても興味深いお話ですね。可視化が重要なんですね。セルフケアテクノロジーズさんは儲かっていますか?
セルフバンクは他のサービスにつなげる為に無料で行っています。今の収益の柱はSleepプロテインです。睡眠ビジネスは、枕・マットレス・サプリなどの物販と、健康経営などのコンサルやセミナーに分かれるのですが、後者のコンサルのみで価値を感じてもらうのは難しいと思います。経営陣や人事部は意識が高くても、サービス受益者である社員さん自身が睡眠の重要性を強く認識できていないからです。前者の物販は、睡眠課題がそれほどなくてもとりあえず手に取ってもらえます。

ー-大変勉強になります。その収益の柱のSleepプロテインの課題感等はいかがでしょうか。
一定程度の手ごたえは感じていますが、まだSleepプロテインに対する世間の評価は半信半疑かなと思っています。先行しているヤクルト1000も宅配で販売開始した時はまずまずでしたが、ヤクルトレディが対面で根気強く啓蒙したことがヒットに繋がったと言われています。なので、Sleepプロテインの良さを分かってもらうためには啓蒙活動が重要だと考えています。

ー-コロナ禍を経てヘルスケアに着目されて、参入されたとのお話でしたが、コロナの感染状況が以前と比べると落ち着いて来ているような気がしています。事業参入時と現在で睡眠の変化があれば教えてください。
コロナの状況が落ち着いてきても、世の中の睡眠改善に対するニーズが全く落ちていないのが驚きでした。むしろ睡眠改善のニーズがどんどん世の中に広まっていくイメージを持っています。

ー-最後にZAKONEに入会いただいた経緯を教えてください。
最初のきっかけは、弊社のプレスリリースを見たZAKONEの小澤さんにお声がけいただいたことです。入会を決めた理由は、睡眠の分野は運動・食事と比べて、現状では重要性が認知されていません。睡眠の大きなうねりを作っていくために、多くの企業と一緒になって啓蒙していきたいと考えていました。今すぐマネタイズするのではなく、啓蒙を重視しているところも惹かれました。

ー-ZAKONE内で期待していることを教えてください。
筋トレとサウナの文脈での引き合いが多いので、そこの部分はご一緒できればと思います。また、今後はアスリートの支援も行っていきたいので、スポーツ関係でもご一緒したいと考えています。

以上宮地さんへのインタビューでした!続編もお楽しみに!

(インタビュアー・執筆:小澤 昂志)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?