20061201 ペンギンの雑学
「ペンギンは既に絶滅している」という記述に出くわした。よく読んでみると、我々が普通に呼んでいる「ペンギン$${^{*1}}$$」のことではなく、元々欧州でこう呼ばれていた北極圏に棲息する海鳥の名前だったようだ。このかって「ペンギン」と呼ばれた海鳥は乱獲によって十九世紀に絶滅してしまったので「既に絶滅している」ということだった。
ペンギンとは本来、この絶滅した北極のペンギンを指したので、「ペンギンは既に絶滅している」という主張は如何にも雑学的だが、雑学としては片手落ちもしくはかなり稚拙な部類になる。本当のペンギンは「北極のペンギン」であって「南極のペンギン」は後から付けられた名前だから本物じゃない、とでも言いたげである。南極圏のペンギン$${^{*2}}$$も北極圏のペンギンもどちらも「ペンギン」という名前で呼ばれていることは間違いないので、「ペンギンは既に絶滅している」という言い方は正しくない。
「北極のペンギン」の日本語名はオオウミガラス$${^{*3}}$$である。英語のペンギンの語源はウェールズ語の「pengwyn」のようだ。その成り立ちははっきりせず、「pen」が「頭」、「gwyn」が「白い」を意味すると言われることもあるらしい$${^{*4}}$$。それはニューファンドランド島$${^{*5}}$$に棲んでいたオオウミガラスを指していた。十六世紀からは、南極で発見されたオオウミガラスに良く似た鳥も「penguin」と呼ぶようになった。従ってオオウミガラスも南極の新種の鳥もともに「penguin」である。
1844年にオオウミガラスが絶滅$${^{*6}}$$してからは、「penguin」は次第に南極の新種の鳥専用の名前になって今日に至っているのだろう。「北極のペンギン」は、英語では「Great Auk$${^{*7}}$$(オオウミガラス)」と呼ばれている。ということは「penguin」はウェールズ地方の俗名だったのだろうか。それとも「Great Auk$${^{*8}}$$」は南極のペンギンと区別するために後にできた呼び名なのか。
一方、「南極のペンギン$${^{*9}}$$」は発見された当初から「penguin」と呼ばれ出した。それ以外の呼び名はない。従って「南極のペンギンは生息しているが、北極のペンギンは絶滅した$${^{*10}}$$」が正しい表現であり、雑学としても適切で印象に残りやすい。
*1 Penguin Group
*2 Chilly Willy's Sub-Arctic WORLD!
*3 魚津水族館|なんでも質問箱
*4 Online Etymology Dictionary
*5 Map of the Island of Newfoundland: Newfoundland and Labrador Heritage
*6 Extinct Animals The Great Auk
*7 The Great Auk, BirdCheck.co.uk
*8 Norfolk Museums & Archaeology Service: Bird Collections
*9 ピングー(PINGU)オフィシャルホームページ
*10 Norfolk Museums & Archaeology Service: Egg Collections