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20051027 飛行機の虹とブロッケン

 飛行機から見える虹と言えば雲の中に出る虹$${^{*1}}$$がよく知られている。ただし私は見たことがない(※2005年執筆当時)。雲の上を飛行している時、雲に自分の乗っている飛行機の影が映るとその周りに丸い虹が出る$${^{*2}}$$らしい。

 これは「ブロッケンの妖怪$${^{*3}}$$」と同じ現象である。ブロッケンの妖怪とは山頂などで濃い霧に自分の影が映った時にその影に周りに丸くぼやっとした虹が見える現象$${^{*4}}$$を言う。ドイツのブロッケン山$${^{*5}}$$でよく見られたのでこういう名前が付いたらしい。日本語では御来迎(ごらいごう)$${^{*6}}$$などという。霧も雲も見る位置の違いによって呼び名が違っているだけで全く同じものである。従ってブロッケンの妖怪と飛行機の虹とは同じ現象である。

 普通の虹$${^{*7}}$$とブロッケンの妖怪の虹とはでき方が本質的に違う。普通の虹は空中に浮かぶ水滴の中で太陽の光が反射と屈折する事によって現れる$${^{*8}}$$。太陽光には七色の元となる様々な光が混ざり合っている。色によって屈折のし方が少しづつ違うので色が分かれて虹ができる。ブロッケンの方は屈折ではない$${^{*9}}$$。光の散乱$${^{*10}}$$による。光の散乱とは光が色々な方向に曲げられる現象をいう。空気中に浮かぶ水滴が光の波長$${^{*11}}$$と同じぐらいの大きさだと、光は水滴の中に入り込まず水滴自体によって散乱される。散乱のされ方は光の波長で異なってくる$${^{*12}}$$。そのため色が分かれて見える。

 虹でもブロッケンでも色の環がその場所にあるわけではない。観測者から見るとそこに環があるように見えるだけである。従って飛行機の周りの虹は、地上からは飛行機の影が見えることはあっても周りの虹は見えないし、普通の虹でも虹の向こうからは見ることはできない。

*1 20001224 雲の中の虹 kumoniji01.jpg
*2 The City DSC01878.jpg
*3 Brocken Spectre as seen from Valle del Bove (Valley of the oxen) on Mount Etna, Sicily, September 11. 2003
*4 なぜなぜ科学しんぶん 1996年9月/なぜなぜ科学しんぶん195号
*5 Harz National Park / Über uns
*6 御来迎(ごらいごう)! ブロッケン現象(ブロッケンの妖怪)と霧虹
*7 20001211 虹(2) niji05.jpg
*8 虹の成因のシミュレーションと過剰虹について
*9 ブロッケン現象の原理
*10 20040716 空の赤
*11 光電子分光の為の予備知識 光は波?
*12 ブロッケン現象の原理 角度依存性の例を図示

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