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20050319 亀の飼育

 去年の夏、知人が地元の大学の先生の主催するセミナーに参加したらしい。その時に配られた資料の写しを貰った。カメ$${^{*1}}$$に関するセミナーだった。

 貰った資料の中にコンラート・ローレンツ$${^{*2}}$$という人が書いた「ソロモンの指輪$${^{*3}}$$」という著書の一節が載っていた。ソロモンの指輪とは、旧約聖書に出てくるソロモン王$${^{*4}}$$が持っていた指輪のことで、この指輪によって王はどんな動物とも会話ができたということになっているらしい。著書の内容は動物の行動学に関する内容$${^{*5}}$$のようだ。書名はソロモン王の話しになぞらえて付けられたと言う。

 動物が飼いやすいと言うのは、長く飼えるつまり死ににくい、ということではないとあった。長い期間というのは普通の感覚なら数年ぐらいのことだろう。長く飼えるからその動物は飼いやすい動物であると考えるのは間違いであるというのだ。その典型的な例はギリシャリクガメ$${^{*6}}$$だそうである。このカメにとって劣悪な環境でも抵抗力があるので数年は生きているらしい。飼い主は数年間も生き続けるので劣悪な飼育環境とはちっとも思っていない。しかしこのリクガメにとっては飼われだした時からゆっくりと死に始めていることになるというのだ。

 長い期間飼えるから飼いやすい動物であると考えが間違っているというのは納得できる。だが「飼われ出した時から死に始める」というのは言い過ぎだ。

 殆どの生物は生まれた時から死に向かっている。アメーバや珊瑚のように個体の死がはっきりと定義できない$${^{*7}}$$のは別として、大抵の生き物は最終的には必ず死ぬ。だから「飼われ出した時から死に始める」というのは、動物を飼うことを真っ向から否定するような表現である。

 ちゃんとした飼育環境なら一般の人でもギリシャリクガメを繁殖させたり、孵化させて育てる$${^{*8}}$$ことができるようだ。逆にどんな動物でも劣悪な環境であればどんどん弱って死んでいく。飼われ出してから死に始めるという表現は適切ではない。

*1 20041128 亀の冬支度(3)
*2 Konrad Lorenz - Autobiography
*3 4150502226.09.LZZZZZZZ.jpg
*4 旧約聖書 | ソロモン王の裁き
*5 獣医動物行動研究会ソロモンの指輪
*6 Testudo Gallery
*7 20020728 哺乳類の時間
*8 ギリシャリクガメの予測体重曲線

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