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20070203 人生の変化点

 数年前、書店のことを調べるために色々と近隣の書籍の取次店を尋ね回ったことがある。名古屋の鶴舞(つるま)公園$${^{*1}}$$の近くにJR中央線$${^{*2}}$$が走っている。この辺りは高架線になっており、このガード下に一軒の書籍取次店があった。

 訪ねてみると初老の男性が一人迎え出てくれた。話を伺うと、この取次店は雑誌を専門としていた。しかもその雑誌とは全国で販売されている物ではなく、名古屋近辺の風俗店情報を集めた雑誌であった。書店に行くと少年漫画誌ぐらいの厚さの風俗情報誌が平積みしてある。これを配達しているようだ。

 配達用のバンを書籍の倉庫代わりにして経費を節約するとか、配達経路を一筆書きになるようにして特に配達先が道路の左側になる様にして少しでも雑誌を動かす距離を短くするとかの創業当時の苦労話を教えて頂いた。現在は、事業規模が大きくなってきて安定しているらしい。税務署からは商売が個人商$${^{*3}}$$の規模ではないから法人化しろと言われているが、そんなつもりは全然ない。自分の息子は全くこの仕事を継ぐ気がなく、会社勤めをしている、と言ったこと迄話してくれた。

 すると突然、意外なことを口にした。「あんた、この商売継いでみんか。毎朝来て、暫く手伝って仕事を覚えてもらえれば、この店を譲ってもええよ」と言い出した。社長の提案にびっくりしたが、丁重にお断りした。恐らく、自分の息子と私とが重なったから発作的に出て来たのだろう。

 自分の人生が大きく変わる場面と言うのは突然やってくるというのがよく判った。

*1 20000202 青空麻雀
*2 鶴舞駅|JR東海
*3 個人事業と会社設立のメリット・デメリット

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