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20060930 蛸畑(2)

 北斎漫画$${^{*1}}$$を見ていたら、里芋と大蛸とを組み合わせた絵$${^{*2}}$$が出てきた。

 家の近くに「蛸畑$${^{*3}}$$」という地名がある。不思議な地名なので調べた$${^{*4}}$$ことがあった。蛸が里芋畑を荒らすと言う伝説$${^{*5}}$$からできた地名という説がある。このことは「小治田之真清水$${^{*6}}$$(おはりたのましみず)」という江戸時代に尾張藩で作られた尾張の歴史を著した本に載っているらしい。

 蛸畑の挿絵$${^{*7}}$$が北斎漫画の挿絵$${^{*2}}$$と構成というか組み合わせがほとんど同じなのだ。里芋畑$${^{*8}}$$に$${^{*9}}$$、それに驚く男二人。蛸が里芋畑を荒らすというのは全国的な伝説だったのか、北斎が名古屋の伝説を漫画にしたのか。

 北斎の絵$${^{*2}}$$の下の方には解説があった。「膽(きも)が芋に成る」と書いてある。「膽」は常用漢字では「胆」と書く。里芋と蛸との挿絵にどうして膽が関係するのか。最初は全く判らなかった。

 何か手掛かりはないかと探している内に「肝が菜種になる$${^{*10}}$$」という表現を見つけた。非常に驚くという意味である。驚きの度合いを野菜への変化に例えている。ということは芋になるのも驚きを表しているのではないか。

 「膽が芋に成る」とは、驚いている男達に関する説明なのである。二人は里芋畑に現れた大蛸に「肝を潰していた」のだ。「肝が芋になる」は江戸時代の言い方なのか。今度は「肝が芋になる」を調べてみた。すると中国語の文献$${^{*11}}$$にこの言葉が出てきた。「俚言集覧$${^{*12}}$$」という太田全斎$${^{*13}}$$という人が書いた江戸時代の俗語辞典$${^{*14}}$$に掲載されているらしい。結局、web上では「肝が芋になる」の正確な意味は判らなかったが、肝を潰すと同じと考えても間違いないだろう。

 重要な臓器が取るに足らない物、即ち芋になってしまうぐらい驚く。これは地口にもなっていて「きも」と「いも」とを掛けているのだろう。そして漫画では芋畑の芋にも掛けてある。

*1 山口県立萩美術館・浦上記念館 作品検索システム 絵本の世界 目次
*2 satoimo_tako.gif
*3 愛知県名古屋市緑区鳴海町蛸畑
*4 20010829 蛸畑
*5 蛸畑の話
*6 名古屋再発見 コラム「地名が語る愛知の地形」第1部 国名の由来 - 第3話 尾張の国
*7 月刊グリ - いまむかし - 2004年2月号(55号) 尾張名所図会附録 三巻 五十五頁
*8 サトイモ(里芋)
*9 20010812 蛸
*10 慣用句辞典 きは~きゆ
*11 見證日本之魅力
*12 俚言集覧(りげんしゅうらん) 5. 言語一般 日本語の構造 日本語史と方言
*13 日本国語大辞典第二版オフィシャルサイト:日国.NET
*14 Web日本語|辞典の歴史

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