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20011203 大きく見える太陽と月

 地平線に近い太陽や月は大きく見える$${^{*1}}$$。そう見えるだけであって実際には殆ど同じ$${^{*2}}$$である。それを実証する方法として五円玉を手に持って腕を一杯に伸ばして穴から太陽や月を覗くと高い時でも低い時でも穴にすっぽりと入って見えるらしい。子供の頃に学習漫画$${^{*3}}$$で読んだことがあるような気がするが実際に比較したことはない。

 何故大きさが違って見えるのか。空にある時はその大きさを比較する物がないので小さく見えて、地平線に近づくと山や建物などとその大きさを比較できるので大きく見える。そんな説明で子供の頃は納得してしまったが、よく考えると全く説明になっていない。

 空にある時は比較する物がないので小さいも大きいもないのだが、こう説明される。更に山や建物があると比較できる物があるので大きく見えるというのも納得しがたい。比較する物があるとどうして大きく見えるのだろうか。小さく見えることはないのだろうか。そもそも何に対して「大きい」「小さい」なのだろう。何れにしても太陽や月が大きく見えたり小さく見えたりする錯覚の様子を記述しているだけで、どうしてその錯覚が起きるのかの説明になっていない。

 記憶があやふやなのだが、地平線ではなく水平線近くの太陽や月も普段より大きく見えたような気がしてならない。水平線には比較する物がない場合が多いので、空にある時と同じ大きさに見える筈である。ところがビルの谷間から林や森の隙間から昼間の太陽を見ても大きく見えたことはない。太陽や月が高い時に比較する物があっても大きく見えない。どうも「比較説」はおかしい。色々と説$${^{*4}}$$があるようだが、簡単に納得できる説明がなかなかない。

 月に行った時に太陽や地球はどういう風に見えるだろうか。月の地平線に近い$${^{*5}}$$時、地球は大きく見えるような気がする。

 地平線が関係しているような気がしてきた。太陽や月が天頂にある時はそれがどれくらいの距離にあるのかさっぱり想像できないので眼球の網膜$${^{*6}}$$に投影された像をそのままの大きさとして脳が認識するだろう。ところが太陽や月は地平線や水平線の向こうに沈むので、地平線や水平線に近づけば少なくともそこよりは遠い位置にあることが判る。つまり距離感がつかめる訳である。

 網膜に投影される太陽や月の像は天頂にある時と同じなのだが、地平線の遙か向こうにあるものが天頂にある時と同じ大きさなので、視覚によって距離をつかんできた経験から「空にある時よりも(遠くにあるから)大きくなっているはず」と脳が認識するためではないだろうか。例えば五円玉の穴から覗くと穴一杯の大きさになっている風船が頭上10mにあるとする。この風船が上昇しながら膨らんで常に五円玉の穴と同じ大きさになるとする。風船が空に上って自分から遠くなっているということが立体視によって感知できれば、風船が大きくなっていると認識するだろう。実際に大きくなっているのだが、網膜に写る像の大きさは同じ筈である。全くの無背景で風船の位置が全く想像できない時は常に同じ大きさに見えるに違いない。視角が一定$${^{*7}}$$でそれ以外の情報がない場合はこの錯覚は起きない。

 空にある太陽や月が元となる大きさであって、地平線近くにある時が空にある時よりも大きく見えるとするべきである。空にある時は比較する物がないから小さく見えるのではなく、太陽や月までの距離がつかめないので見たままの大きさにしか見えないということである。

 地平線がある程度遠くにないと、この錯覚は起きないだろう。地平線が遠いということを知らない人にもこの錯覚は起きない。恐らく赤ん坊や小さな子供は地平線近くの太陽や月は大きく見えていることはないと思う。星の王子様$${^{*8}}$$も夕日や地平近くの赤い満月$${^{*9}}$$を大きく感じることはないだろう。

*1 素朴な疑問集
*2 朝夕の太陽は、昼間の太陽より大きい?
*3 学習漫画 なぜなぜ理科学習絵文庫
*4 Moon FAQ for HTML #002
*5 Earth - Apollo 11
*6 20000828 目玉
*7 地平線の月は、なぜ大きく見えるのか
*8 『星の王子さま』公式ホームページ
*9 なぜ月は、地平線近くにあるとき、大きくオレンジ色に見えるのですか?【その他】

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