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20001027 新生物

 生命保険の説明$${^{*1}}$$を読んでいると「悪性新生物$${^{*2}}$$」と言う言葉が出てくる。癌のことである$${^{*3}}$$。多くの文献で癌のことを「がん」と表記するのは「癌」が常用漢字以外$${^{*4}}$$だからだろう。こういう書き換えは生命保険の場合なら常用漢字以外を用いたことが契約者に対して説明不足であるとされないための方策でもある。それにしても平仮名の名詞が頻出する文は読みにくくて仕方がない。

 生命保険でいう癌は悪性腫瘍のことで、悪性腫瘍は「がん」と「肉腫」に更に大別されるようである。癌細胞は何らかの原因で細胞の遺伝情報が狂ってしまい激しく分裂して増殖し、更に転移して、最終的には個体を死に至らしめる場合がある。もともとは個体の一部の細胞であったものが原因となって、その個体の活動が維持できなくなるというのは何とも不思議なものである。

 この癌を悪性新生物と呼ぶのはどうしてか。「新生・物」か「新・生物」か。癌細胞はもともと正常細胞なのだから「新生した物」と言うのは何か変なような気がする。かといって「新しい生物」というのもどうかと思われる。新しい生物と言えば世界中の癌の研究所で使われている標本細胞に「ヒーラ細胞$${^{*5}}$$」と言う名の細胞があるらしい。1951年にアメリカのヘレン・レーンさんという女性の子宮癌から採取した細胞で、50年近く経った今でも研究室のシャーレの中で増殖を続けている。レーンさんは既に亡くなっているのでヒーラ細胞$${^{*6}}$$は一体何者と言えばいいのだろう。「新しい生物」と考えてもいいかも知れない。

 恐らく新生物という言葉自体はneoplasmの訳語として出来たのであろう。neoplasmのneoは「新しい」、plasm$${^{*7}}$$は「形成されたもの」だから「新生・物」と解した方がいいかもしれない。

 「新幹線」は、「新」の意味が薄れてしまい合成語ではなく「新幹線」という三文字の熟語になっている。同様に「新生物」という言葉も三文字熟語と見た方がいいだろう。

*1 がんの定義および診断確定
*2 ●特定疾病保険金のお支払対象となる疾病
*3 AFLAC アメリカンファミリー生命保険会社
*4 常用漢字表
*5 Sankei-news
*6 JCRB9004 [HeLa]
*7 20000529 プラズマ

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