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20060102 初夢

 初夢$${^{*1}}$$は一月二日の夜の夢だという。そう言う話しは雑学として昔から何度でも耳にしていた。なぜ二日なのか変に思っていたが、今まで特に調べようともしなかった。初夢$${^{*2}}$$などどうでもいいと思っているからである。

 以前、一日の始まりについて書いた$${^{*3}}$$。一日の始まりは、現代の感覚なら南中時刻$${^{*4}}$$の対極である「真夜中」か日出の「朝」となるだろう。ところが「夕方」を一日の始まりとする考え方もある。これは私にとって違和感があると書いた。

 一日の終わりから考えると、夕方を一日の始まりとしても全く不思議ではないことに気付いた。今日から明日へは連続しているので、今日が終わればその瞬間に明日が始まる。一日の終わりを夕方もしくは日没とするのは普通の感覚なので、一日の始まりを夕方もしくは日没にするのも普通の感覚となる。

 「初夢は一月二日の晩の夢」という言い伝えができたのは江戸時代だろう。江戸時代における元日の始まりはいつからか。

 これは大晦日の終わりから考えるべきだ。大晦日は庶民にとって一年の区切りであって諸々の事柄の締め切りであったろう。特に借金返済の期限となっているので、暮の迫った年内中は年の始まりよりも関心が高いはずだ。大晦日にはそこら中で借金の取り立てが行われていた$${^{*5}}$$に違いないが、これは大晦日当日の何時まで続いたのか。

 全くの当てずっぽうだが、日没で打ち切られたのではないだろうか。つまり大晦日というのはその日の夕方までで、その夜からは新年元日が始まったのではないか。一日の始まり、一年の始まりは夕方からなのである。従って除夜の鐘も真夜中ではなく夕方には鳴り出したのかもしれない。初詣もこの時刻に開始されたかもしれない。

 昼間に活動して眠るのは一日が終わってからである。生活に基づいて暦を考えれば当然こうなる。その日の仕事が夕方で終わって、就寝し、日出とともに起き活動が始まる。こう考えると一日は連続しているのではなく、眠っている時間というのは本来は空白の時間とすべきかも知れない。暮らしを基本とすれば夕方に区切りができるので、眠っている間を敢えて一日に入れるとすれば、前の日ではなく次の日になるだろう。

 つまり一年の最初に眠る時間帯は、現代風に言えば十二月三十一日の17時頃から一月一日の7時頃までだが、おそらく江戸時代にも大晦日から元日にかけては色々と行事があって寝る時間が短くなっていただろう$${^{*6}}$$。そうなるとちゃんと眠るのは、現代式でいう一月一日の17時頃から一月二日の7時頃までになる。この時間帯は夕方を一日の始めとする方式で言えば「一月二日の晩」となる。少なくとも現代風の一月二日の晩を指しているのではないと思われる。

 これが「一月二日」の由来ではないか。そうなると「かって、一日の始めは夕方からだった」とする説の妥当性が高くなってきたような気がしてきた。

*1 はつゆめ 0 【初夢】 - goo 辞書
*2 20040208 七福神
*3 20000817 一日の始まり
*4 質問のこたえ1-8:国立天文台
*5 世間胸算用 5巻 | 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
*6 江戸東京博物館:トップページ 初夢とは、いつ見る夢のことか。(2004年12月)

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