20061120 温暖化係数(2)
地球温暖化係数$${^{*1}}$$とは何か。温暖化係数$${^{*2}}$$とは二酸化炭素の温暖化効果を「1」とした時、大気に含まれるそれ以外の微量の気体物質がその何倍の効果を持っているかを示した物である。二酸化炭素が温暖化の原因であることを前提$${^{*3}}$$にしている。
六フッ化硫黄の係数は二酸化炭素のそれの二万倍$${^{*4}}$$もあるそうだ。六フッ化硫黄は高電圧装置の絶縁ガスや半導体製造用のエッチングに用いられる$${^{*5}}$$。二酸化炭素の影響で仮に地球の大気の平均気温が$${0.1\degree C}$$上昇するとする。温暖化係数が二万倍だとすると、全ての二酸化炭素が六フッ化硫黄に入れ替わると大気の温度が$${2000\degree C}$$も上昇すると考えればいいのか。
これは極端な例なので、そんな筈はないと思いたくなる。大気中の六フッ化硫黄の濃度が二万分の一でも現状の二酸化炭素の温暖化効果と同等と考えればいいのか。最近の地球の平均気温の上昇が二酸化炭素の濃度の上昇に因るとする。ここ百年間の日本の平均気温は大体$${1\degree C}$$程度上昇$${^{*6}}$$している。一方、二酸化炭素の濃度は$${70ppm}$$ぐらいの上昇$${^{*7}}$$である。ppmとは百万分の一を意味する。
六フッ化硫黄$${^{*8}}$$が百年前にあったかどうか判らないが、現在の濃度が百年間における上昇分だとすると、$${150ppt}$$ぐらい$${^{*9}}$$である。$${ppt}$$は一兆分の一$${^{*10}}$$だから$${ppm}$$の百万分の一になる。従って百年間の六フッ化硫黄の濃度上昇は二酸化炭素のそれの五十万分の一で、六フッ化硫黄の温暖化係数は二万倍だから、掛け算して$${1/25}$$、二酸化炭素で$${1\degree C}$$上昇したと考えるから、六フッ化硫黄では$${0.04\degree C}$$上昇したことになる。実際には大気には両方が混ざっていて、百年間で$${1\degree C}$$上昇しているのだから、「二酸化炭素で$${1\degree C}$$上昇した」から「六フッ化硫黄で$${1/25\degree C}$$」と考えるのは変だが、大気中における六フッ化硫黄の効果が二酸化炭素に比べて小さいならこのように大雑把に考えていいだろう。
とは言え、こういうことなのだろうか。どうもしっくり来ない。そもそもそれぞれの気体で比較している「温暖化の効果」の定義はどうなっているのか。大気中の気体の温暖化の効果は「放射強制力$${^{*11}}$$」という数値で説明されているらしい。単位は$${W/m^{2}}$$。地球の熱の放射収支を変動させる力である。気象用語のようだ。圧力とか温度、質量のような気体そのものの性質ではなく、地球の大気に含まれた状態での性質を表す。二酸化炭素は火星$${^{*12}}$$や金星$${^{*13}}$$の大気にも存在するが、火星や金星の大気に含まれている二酸化炭素に対してこの数値は一切使えない。
地球温暖化係数はどうも「単なる決め事$${^{*14}}$$」のようだ。温暖化対応政策の目安であって物理定数でもなんでもない。この係数を用いて得られる科学的知見は何一つない。つまり前述の計算も全く無意味なのである。
*1 20061119 温暖化係数
*2 環境省 報道発表資料?平成11年3月31日?「地球温暖化対策の推進に関する法律の施行期日を定める政令」及び「地球温暖化対策の推進に関する法律施行令」の閣議決定について
*3 20051111 地球を温めるもの(2)
*4 data0108big.gif
*5 フッ素系事業の展開
*6 気象庁 | 20世紀の日本の気候
*7 「地球温暖化」でアジアの気候はどう変わるか?(変わりつつあるか?)
*8 Sulfur Hexafluoride, SF6
*9 都内の六フッ化硫黄の濃度傾向について
*10 ppm、ppb?濃度を表す単位
*11 IPCC第三次評価報告書(2001年) (01-08-04-14) - ATOMICA - 07.gif
*12 20040724 火星の夕日
*13 20050602 温室効果(2)
*14 地球温暖化のメカニズムとGWP
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