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20051111 地球を温めるもの(2)

 大気中に温室効果$${^{*1}}$$気体である二酸化炭素がないと地球の温度は一体どうなるのか。

 大気がないと地球の表面は-18℃$${^{*2}}$$になってしまうらしい。実際には地球の平均気温は15℃ぐらいである。この差は温室効果気体すなわち大気中の二酸化炭素の存在によって生じている$${^{*3}}$$のだから、それがなければ地球は一面氷の世界になってしまう。これは果たして本当だろうか。地球上から二酸化炭素を全くなくしてしまうと言うことはできない話なので、本当になくなったらどうなるか確かめようがないが、想像だけはできる。

 そもそも気体が赤外線を吸収することで気体自身の温度はどれくらい上昇するものなのか。簡易的な実験$${^{*4}}$$がある。二つの透明な容器にそれぞれ空気と二酸化炭素を入れる。電球や温水などでこれらの容器を同時に温めると二酸化炭素の方が数℃温度が高くなる。これは二酸化炭素に温室効果があるからこうなるのだ$${^{*5}}$$と説明している。

 もう少し厳密に実験した結果がある。通常の実験$${^{*6}}$$では二酸化炭素がほんの少し含まれている空気と二酸化炭素100%とを比較しているので純粋に二酸化炭素の温室効果が判りにくい。こちらの実験$${^{*7}}$$では、温室効果の全くないヘリウム$${^{*8}}$$と二酸化炭素とを比較している。これならば気体の温室効果によって気体そのものがどれぐらい温まるものなのか理解しやすい。

 実験結果を見るとヘリウムの方の温度上昇が二酸化炭素よりも高い$${^{*9}}$$。一体どういうことか。これは実験そのものの考え方に不備があるわけではなく、比較の仕方の問題だろう。ヘリウムも二酸化炭素も同じ圧力にしたのかそれとも同じ質量にしたのか。こういう比較の場合はどちらを統一すればいいのか。気体分子ひとつ一つが赤外線を吸収するのだから分子の数を一緒にした方がいいだろう。ならば圧力を同じにすべきだ。温度と圧力が同じならば含まれる分子の数は同じ$${^{*10}}$$になる。実験ではヘリウムを上方置換$${^{*11}}$$、二酸化炭素を下方置換$${^{*11}}$$して容器にそれぞれの気体を入れている。もしかしたらこの時、十分に容器の中の空気が入れ替わっていなかったかも知れない。

 そんなことよりもこの実験は重要なことを示している。温室効果のないヘリウムが温度上昇している点である。赤外線を吸収しないのだから、赤外線では温められない。では、何故温度が上昇するか。容器から熱を直接受け取るからである。熱伝導$${^{*12}}$$によってヘリウムの温度が上昇した。気体は分子構造が簡単なほど温度が上がりやすい$${^{*13}}$$ので、件の実験で二酸化炭素よりもヘリウムの方の温度が高くなったのは、その性質が現れたからだろう。逆に二酸化炭素が空気よりも温度が高くなるという実験結果は、温室効果の違いではなく、容器の中の二酸化炭素の量が比較する空気の量よりも少ないためかも知れない。

 以上から想像すると地球が-18℃以上になっているのは、赤外線吸収の効果よりも大気が地面や海洋からの熱伝導によって温められその熱が大気に留まっている効果の方が圧倒的に大きいからではないか、ということである。つまり大気に二酸化炭素が含まれていなくても地球は極寒の世界にはならないのではないか。

 大気中の二酸化炭素の量が増えれば、赤外線を吸収するその性質によって大気の温度は上昇するだろう。しかしその度合いは非常に小さいような気がする。だからこのまま化石燃料を使い続けてもいいと言うことにはならない。資源枯渇の問題があるし、大気汚染の問題もある。

 もっと問題なのは、上記の実験の結果は二酸化炭素の温室効果のみだと説明し、化石燃料よりも二酸化炭素の出ない原子力の方がいいと思わせようとする人々が出てくる可能性があるということである。二酸化炭素の地球への影響は現時点ではまだ明確になっていない。これは誰かがそう予測している$${^{*14}}$$だけである。原子力発電で利用される放射性物質が有害であることは、六十年前に日本人は身をもって体験$${^{*15}}$$しているし、その後、世界$${^{*16}}$$各地$${^{*17}}$$で実証されている。

 どちらを選ぶのかは火を見るよりも明らかであるが、問題の本質は現状のエネルギー消費量を減らさなければならないということである。将来の環境破壊や資源枯渇などの危険性を低減させる方法はこれしかない。

*1 20050608 地球温暖化(4)
*2 20051110 地球を温めるもの
*3 Global Warming
*4 温室効果実験器について紹介します
*5 地球温暖化のしくみ | 学ぼう温暖化 | キッズ版 省エネ家電 de スマートライフ(一般財団法人 家電製品協会) 学ぼう!スマートライフ
*6 地球温暖化デモンストレーション実験器(温室効果ガスtype)
*7 実践事例 41.地球温暖化のしくみ~温暖化ガスの温室効果
*8 20051108 大気を温めるもの
*9 41_004.jpg ※「グラフ中Aの領域では、熱による分子全体での運動が支配的で、分子量の大きいものほど温度上昇が遅い傾向がみられる」という記述あり。画像は消失している。実験内容に不備があるため完全に消された可能性あり
*10 3-1-2 気体の状態方程式 ◆アボガドロの法則
*11 上方置換と下方置換
*12 4.熱の伝達
*13 Specific Heat (Japanese)
*14 Intergovernmental Panel on Climate Change
*15 20010524 模擬原爆
*16 チェルノブイリ
*17 19991001 臨界

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