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20030118 YukawaとFermi(2)

 物理量を表す単位で唯一東洋人の名前が付けられたのは、微小な長さを表す単位で「Y(Yukawa)$${^{*1}}$$」しかない、ということを以前書いた。どれくらいの長さを表す単位かというと10のマイナス15乗メートルである。湯川秀樹$${^{*2}}$$の中間子理論が由来らしい。陽子や中性子は中間子をやり取りすることで互いを強く結びつけている。その力$${^{*3}}$$を核力と呼び、その力$${^{*4}}$$の及ぶ距離が大体これぐらい$${^{*5}}$$だという。電磁力は質量を持たない光子$${^{*6}}$$を交換することにより力が発生するのでどこまでも力が及ぶが、核力の場合、力を発生させる中間子に質量があるため極近い距離にしか作用しないと考えられている。

 英語で書かれたページでもこの「Yukawa$${^{*7}}$$」という単位の紹介があるので、一応、世界に知られた単位なのであろう。しかしこの「Yukawa」を紹介したページにも書いてあるように「fermi」と言う単位と同じ長さである。fermiとはローマ出身の物理学者Enrico Fermi$${^{*8}}$$に因む。世界的には「fermi$${^{*9}}$$」という単位の方が圧倒的に知られているらしい。

 最近は量を表すのに、ある現象に対して独特な単位を用いずにSI単位系と呼ばれる統一された単位系$${^{*10}}$$を使う風潮になっている。光の波長の長さを表すのによく使われる「オングストローム$${^{*11}}$$」もメートルに換算して使うようになった。気圧を表す「バール(ミリバール)」も圧力を表すSI単位の「パスカル$${^{*12}}$$(ヘクトパスカル)」もそうである。

 「Yukawa」や「fermi」も同様にメートルに換算して表す。いちいち「10の何乗」というのは面倒なのでSI単位系では10の整数倍乗を表す接頭語が用意されている。「k(キロ44$${10^3}$$)」「m(ミリ$${10^{-3}}$$)」「h(ヘクト$${10^2}$$)」「c(センチ$${10^{-2}}$$)」というのがそうである(肩の小さな数字は累乗を表す。「$${10^3}$$」は「10の3乗」。以下同様)。細かく接頭語を決めても煩雑になるばかりだから、乗数が$${3}$$または$${-3}$$より大きくなると$${1000(10^3)}$$または$${0.001(10^{-3}}$$の整数倍乗になっている。つまり「M(メガ$${10^6}$$)」「G(ギガ$${10^9}$$)」「μ(マイクロ$${10^{-6}}$$)」「n(ナノ10^-9)」のように乗数が$${3}$$の倍数になっている。

 「Yukawa」や「fermi」は10のマイナス15乗mなので、メートルmに「$${10^{-15}}$$」を表す接頭語を付ければよい。$${10^{-15}}$$は「f(フェムト)」である。従って「1Yukawa」「1fermi」は「1fm」となる。

 普段、「Yukawa」を使っていて今度から「fフェムト」を使おうということになると抵抗を感じるが、「fermi」を使っていればどちらも「fe-」で始まる言葉なので違和感なく「fmフェムトメートル」に移行できる。しかも「$${1}$$fermi」は「$${1}$$fm」と略して表記していただろうから、気にする必要も全くない。

 この接頭語の「fフェムト」はmメートルと組み合わせた時にうまく「fermi」と同じになるように決めた、という説があることを最近知った。本当にそんな事があるのだろうか。そうだとすると東洋人名唯一の物理量単位「Yukawa」は完全に無視されたと言うことになる。

*1 19991030 YukawaとFermi
*2 湯川秀樹
*3 JLC hep (Japanese)
*4 Nuclear Physics
*5 原子核構造理論の発展と現在--殻模型を中心として--
*6 ヒッグス粒子と質量
*7 yukawa
*8 Enrico Fermi | Physicist
*9 fermi
*10 国際単位系-計量研究所
*11 20010712 オングストローム
*12 20020606 ガリレオは何故「ガリレオ」なのか

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