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経営者が本当にやるべき仕事とは | ジェフ・ベゾスの教え

30代のためのスタートアップ・ノート」、第5回はAmazonのCEOジェフ・ベゾスの言葉から「経営者が本当にやるべき仕事」について考えてみます。

はじめに・ベゾスの言葉との出会い

以前に「アマゾンのすごいルール」という本を読んでから、頭から離れなくったフレーズがあります。

それは「善意は働かない。働くのは仕組みだ」という言葉でした。


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ふと、自分が会社を創業してCEOを務めていたときのことを振り返り、当時は社員に対してこんなことを思っていたような気がしました。

・自分の部署に限らず、自ら率先して他部署の仕事や問題にも積極的に取り組んでほしい

・求めていなくても、自分から会社がやるべきと思うことを提案してきてほしい

・指示しなくても、自分の頭で考えて、会社のためにベストな行動をしてほしい

その帰結として、
「結局、誰よりも頑張っているのは自分だし、自分がいなかったらこの会社は成り立たないのだな・・」
という思いに苛まれることも時折あった気がします。

しかし、「善意は働かない」という言葉を見たときに、当時の自分はかなり思い違いをしていたと理解できたのです。

「善意は働かない」の意味

上記に列挙したような事柄は、経営者なら一度は思ったり口にしたことがあるのではないかと思いますが、これは結局、「社員が勝手にがんばってくれる」ことに対する他力本願の思考に他なりません。

逆にいえば、「社員が勝手にがんばってくれないから、この会社はダメなんだ」ということを言っているに他ならず、これでは経営者の仕事や職責がなんなのかわからなくなってしまいます。

・社員が通常要求される以上の注意を張り巡らし、ミスや事故が起きたらすぐに気づいて、対応してくれる

・社員が通常考えられる以上の労働時間を勝手に働いてくれて、勝手に納期を間に合わせてくれる

・社員が自分の権限、責任以上のことを勝手にリスクを取ってやってくれて、事態を好転させる

スタートアップを立ち上げていくには、時にそういった献身的な社員の姿勢が会社を支えることも事実だと思います。しかし、そこで「ひとりひとりの社員の善意こそが会社の原動力だ」と考えてしまったら、経営者の思考停止、職務放棄と言われても仕方ありません。

なぜなら、そういった社員の「善意=通常要求されるレベルを超えたファインプレー」を前提にしてその会社の業務が成立している間は、その会社がオペレーショナル・エクセレンスに向かって成長していくことも、スケールしていくことも、可能性はゼロだからです。

言い換えれば、「成長しない会社」を自ら作り出している状態です。

アマゾンの注文が翌日に届くのは、倉庫係や配達員が毎日徹夜しているからでしょうか?
マクドナルドの卓越したオペレーションを支えているシステムは、社員が勝手に工夫してくれたものでしょうか?

これらの会社がオペレーショナル・エクセレンスを実現しているのは、社員の善意を前提にせず、スケールするための仕組みをマネジメント層が徹底的に考え仕組化した結果です。

経営者がやるべき本当の仕事

経営者の仕事は、営業することでも、採用することでも、業務プロセス一つ一つを指図することでもありません。創業期はそれ「も」やるべきであるだけで、それ「を」やるためにいるのではありません。

経営者にしかできない仕事は以下のことです。

① 市場を定め、顧客ターゲットを定め、プロダクトの方針を定める(意思決定)

② 戦略を立案する(会社がどのように動いて、どのように経営資源を使うべきかを立案)

③ 戦術を立て、再現性と拡張性のある仕組みづくりに取り組む(仕組化・組織作り)

④ 結果を見ながら、創意工夫を重ねて仕組みを改善・進化させていく(ことをチームに取り組ませる=マネジメント)

経営者の仕事は、戦略を立て、組織を作り、マネジメントする、この3つに尽きると思いますし、この他の仕事は本来他の人にやらせるべきことです。

経営者がこれをやってないのであれば、誰かが代わりにやっているか、誰もやっていないかです。
(かつ、経営者がこれ以外のことをやっているのなら、それは他の人がやるべき仕事を奪っており、「どうせトップが決めるのだから」という組織的な無気力を生んでいる恐れがあります。)

経営者が「自分ばかり頑張っている」と思ってしまうのであれば、それは「自分が本来やるべき仕事をしていない」状態であり、自ら組織に悪影響を及ぼしているサインと捉えるべきでしょう。

最後に

最後はベゾスを離れて、AppleやGoogle等多数のシリコンバレー企業の経営陣の「コーチ」として指導した、ビル・キャンベルの言葉を引用します。

どうやって部下をやる気にさせ、与えられた環境で成功させるか?独裁者になっても仕方がない。ああしろこうしろと指図するんじゃない。

同じ部屋で一緒に過ごして、自分は大事にされていると、部下に実感させろ。耳を傾け、注意を払え。

それが最高のマネージャーのすることだ。


(『1兆ドルコーチ』エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ他著 より)

組織内でのポジションが高まれば高まるほど、社内外からのフィードバックが入りづらくなり、独りよがりになってしまいがちです。

不思議なもので、初めてマネージャーになる時、部長になる時、役員になる時、社長になる時、その時その時、昨日までやっていた役割とはガラリと変わった職務に就くにも関わらず、「初めてやる仕事」に対するサポートや準備が行われることはほとんどありません

いくらそれまでに実績を上げてきた人物だったとしても、役割が変わっていることに本当に気付けているか、新しい職務について適切にこなせるかどうか、それらはやってみないとわからないことにも関わらず、です。

新卒社員がさまざまな角度からフィードバックを得て、自分が担うべき役割について理解することに比べて、経営トップというのは「自分が為すべき役割について最も自己認識を形成しにくい存在」と言えます。

ポジションの高い人ほど自己流に陥り、自分を「完成形であらねばならない」と誤った思い込みをして、自己成長ができなくなり、結果組織成長に限界を作り出してしまいがちです。

それが経営者の苦悩となり、時にメンタルを病んでしまうこともあります。

私は、経営者こそメンターやコーチが必要であり、進化する経営者は必ず自分を成長させるための仕掛けを作っているものだと思います。

「1兆ドルコーチ」とまではいかなくても、経験豊かで優れたコーチを見つけたいものです。

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