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映画評「るろうに剣心 最終章 THE FINAL」

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「るろうに剣心」と私

「るろうに剣心」シリーズも4作目。

観ながら、そういや・・・と思い返してしまったのですが、よくよく考えると、私はこのシリーズとあまり相性が良くない。

まず、私は原作漫画「るろうに剣心」のファンである。
結局、この思い入れが、感想全体に関わってくるので、興味ないでしょうが、「『るろうに剣心』と私」という思い出話からスタートしたい。

「るろ剣」は、初めて、自分の意志で全巻揃えた漫画だった。
完結したのは、小学校の5年か6年のときだっただろうか。

当然、掃除の時間はホウキを振り回す。
それに飽きると、ホウキを振りかぶりながら階段から飛び降り、必殺技を叫んで、空想の敵を叩き落とす。
砂場で手ごろな、ちょっと固まった泥の塊にパンチし、粉々にする、「二重の極み」(拳が物体に当たった刹那に、若干拳を開くことによって、パンチの二連撃を食らわせるという技。なんのこっちゃ)ごっこにも興じていた。

小学生男子の知能ってのは、こんなもんである。

中学時代、これまた相似の時間。
友人の大崎くんに、ゴミ箱の蓋を盾のように持ってもらい、斎藤一(私)VS宇水(大崎くん)ごっこをしたこともあった。
宇水よろしく、ゴミ箱盾とチリトリで、私を翻弄する大崎くん。
私はそこに、牙突零式(簡単に言えば突き技)を叩き込む!

このへんの漫画のくだり、解説するのもめんどくさいので、「牙突」「牙突零式」「宇水」「ティンベー」「ローチン」「何が可笑しい!!」あたりでググってほしい。

ゼロ距離からの突きをお見舞いされた大崎くんは、吹っ飛んでしまい頭を黒板に強打。
そして、ゴミ箱の蓋は砕け散った・・・いや言い過ぎで、せいぜいひびが入る程度に壊れた。
先生からは大層怒られ、親からも叱られた。

黒歴史に直結することとしては、主人公緋村剣心のキャラ設定である。
普段は、「おろ?」が口癖な、一人称は「拙者」な平和主義者なのに、
ひとたびキレると、人斬りだった過去に戻ってしまい、慈悲心は失せ、一人称が「俺」に変化する。

普段は「剣心モード」。キレると、「人斬り抜刀斎」モードに転換するのである。

「か、かっこいい・・・」
普段は温厚なのに、枷が外れると、口調が変わるのかっこいい・・・。
「剣心がキレちまってる!」「剣心、戻ってきてぇ!」とか言われてみてえ・・・。

上京し、大学生になってもその憧れは消えなかった。
普段、私の一人称は「僕」であり、会話も、東京に合わせて福岡の方言を抑えながら喋っていた。
それが、妙に、私の心の中の「剣心」とマッチングしてしまったのである。

憧れが抑えられなくなってきたある日。
私はアイスホッケーサークルに所属していたが、試合のハーフタイムの作戦会議中、「俺の言ったこと聞こえんかったとかや?ちゃん集中せろやん!」と、だしぬけに叫んだ。
キレると、一人称は「俺」になり、普段消していた方言丸出しになるのが、カッコいい思ったんだろう。
無論、私の視線の先には、気になる女子マネージャーがいる。

これは大層評判が悪く、
「何を言っているかよくわからない。言いたいことがあるなら、ちゃんと伝わるようにしてほしい」
と、マジなトーンで指摘されたため、すぐやめた。

そんな話は山のようにあり、良くも悪くも、私に多大なる影響を与えた漫画である。

思い出の作品であり、何度も読み返したので、細かいところが気になってしまう、というのもあるだろう。

それをさしおいても、映画の方向性にも、問題があるように思えてならない。

「るろうに剣心」の違和感

私が感じる、映画「るろうに剣心」の違和感とは何か。

漫画原作の映画化(アニメの映画化ではなく)の場合、方向性は大きく2つ。

「実写化」志向か、「映像化」志向か。

「実写化」の場合、いわゆる、「漫画から飛び出してきたような」キャラ作りである。
悪く言えば、コスプレ大会。
容姿、髪型、衣装、喋り方、演出、全てが漫画(アニメ寄り)。
漫画というより、アニメの延長線上に近い。
この方向で、大成功しているのは、例えば「銀魂」。
ここまで振り切れば、もう特に異論はない。というフルスイング実写映画でした。
逆に、「実写化」路線で大失敗していたのは、「鋼の錬金術師」ですね・・・。
これは未だに許せない出来栄え。出演者ひとりひとりを呪いたくなる。

「映像化」の場合、漫画やアニメは精神的な参考にはなっているけど、より「生身の人間が演じて違和感がない範囲」に落とし込まれてくる。
演技テンションは落ち着いた方向になり、あくまで現実に近い、「リアリティ」を求める方向性。
「海街diary」がまさに映像化で、あれを「漫画の実写化」と表現するには適さない。
アクション要素が強い作品だと、「アイアムアヒーロー」は、映像化路線の大成功作だった。たまに見返すくらい、好きな作品である。

本作「るろうに剣心」と同じ少年ジャンプ系であえて分類すると・・・

「実写化」路線
銀魂 約束のネバーランド ニセコイ ジョジョ 暗殺教室

「映像化」路線
BLEACH デスノート (少年ジャンプではないけど)キングダム

という感じでしょうか。

別にどっちが優れているということはない。

「実写化」であれば、似てる・似てないが論点になりがちだし、
「映像化」であれば、漫画特有のキャラ造形や展開を、生身の人間や現実に置き換えた場合の不自然さが、マイナス要素になりがち。

一長一短であり、どっちかに寄せるか、うまくバランスをとるか、そこが大事でしょう。

そんな前置きがありつつ、じゃ「るろうに剣心」ってどうなんだろうと考えてみると、「実写化」と「映像化」のバランスがちぐはぐな気がする。

俳優陣は、「実写化」寄り。
佐藤健はじめ、皆さんよく似てらっしゃる。
過剰なコスプレではないけれども、要所で特徴を捉えた見事な「再現」。
今作とは関係ないですが、前作の包帯ぐるぐる男・志々雄真を演じた藤原竜也、素晴らしかったですね。

ですが、演出およびアクションは、「映像化」寄り。
漫画の特徴であった、叫びながら必殺技!うぉー!てな展開はないし、チャンバラしながらぺらぺら喋る、てのも無い。
跳躍にしても、ワイヤーを使いつつも、無理のある飛んだりはねたりはない。
地味とも思えるのですが、極力合成に頼らないスピード感あるアクションは、観ていて楽しい。

俳優は「実写化」だけど、アクションは「映像化」。
このバランスが、個人的に居心地が悪い。

あんなに漫画のキャラに似てるのに
同じような武器を使っているのに
生身のアクションなので、なんか地味に見えてしまう。漫画ほどの「映え」はない。

そんな戦い方なら、その武器のチョイス間違ってるんじゃないか。
その時点で、達人に見えないぞ。

例えば、江口洋介演じる斎藤一。
立ち振舞はかっこいい。
でも、漫画では大砲並の威力だった「牙突」は映像化には適さないので、もったいぶった、隙だらけの「突き」。
割に、ずーっとタバコを更かしてるので、ただのプロ意識が欠如している奴にしか見えない。
潜入捜査中にタバコ吹かすなよ、おい!

緋村剣心(佐藤健)、斎藤一(江口洋介)、四乃森蒼紫(伊勢谷友介)、刃衛(吉川晃司)、瀬田宗次郎(神木隆之介)、志々雄真(藤原竜也)、そして本作の悪役、雪村縁(新田真剣佑)。

それでも、このあたりの主要キャラは、まだいいのです。
ちゃんと見せ場の尺がとられているし、多少の違和感は物量アクションで乗り切れる。

でも、可哀想なのが、志々雄真や雪村縁の「部下格」の構成員。
「十本刀」というか「同志」というか、「withB」「オメガドライブ」な面々。

主役や、そのライバル、ボスや大ボスより、純粋な力量が劣る分、漫画では多彩な風貌や武器や必殺技を与えられていた。

志々雄真の「十本刀」であれば、
関西弁を喋る金髪の鳥頭であったり、
筋肉だるま格闘坊主であったり、
盲目のデアデビル亀野郎だったり。

本作の敵・雪村縁の「同志」であれば、
全身を装甲で覆ったイカレ格闘野郎
ひ弱だけど卑怯にも暗器(隠し持った武器)で翻弄するイカレ「オカマ」(差別用語ではない)
牙のように研いだ歯と常人の倍の長さの腕&鉤爪で戦うイカレ「ヴェノム」もどき
そんな、個性豊かな中ボスおよび噛ませ犬の皆さん。

これが、キャラは「実写化」。アクションは「映像化」。
この狭間に落とし込まれるとどうなるかというと、待っているのは、悲劇的な弱体化である。

へんてこりんな風体のやつが、へんてこりんな武器を振り回す。
でも、漫画並みの一芸は封じられているので、よくわからんうちに、単純な力量の差でやられてしまう。

実写化名残の見かけ上の存在感と、映像化志向のための弱体化。

見かけは派手で、存在感あるくせに、その割には戦い方は地味で、結局弱い。
弱くなったのに、台詞や人物背景は漫画と同じなので、威勢と恨みつらみだけは一丁前。

この狭間が、居心地と後味が悪い。

悲しいぜ。

そう考えると、漫画のストーリーを忠実になぞる映画「るろうに剣心」シリーズにおいて、主要キャラを中心に、1VS多数。1VS数名。という、映画オリジナル展開の乱闘が多いのは、このあたりに課題があるんだろう。

主要キャラにアクションをさせたい。見せ場を作りたい。
でも、「リアルなアクション」を志向しているので、必殺技の応酬で凄さを表現することはできない。
となると、1VS1で戦わせると、どうしても絵面が地味になってくる。
そこを押し通るためは、敵味方入り乱れての、合戦的見せ場になってしまう。ただの推測ですけど。

以上、私がどうしても感じてしまう、相性の悪さ。

「るろうに剣心 最終章 THE FINAL」/感想

いろいろ考えてみると、主人公緋村剣心を演じる佐藤健が、作品のバランスを悪化させてる原因のように思う。

ハマりすぎてるんです。

大勢登場するキャラクターの中で、佐藤健だけが、ほぼ唯一、「実写化」と「映像化」を両立している。つまりは、「体現」している。
もはや、「してしまっている」レベルである。

長髪・赤髪・ほほに十字傷・小柄で・柔らかい印象で優しいが・過去は無慈悲な人斬りで・そんな過去の後悔と向き合う・剣術の達人。

こんな複雑なキャラクターを、容姿と雰囲気とアクション、すべての面で成立させている。

他の役者の力量不足とかでは決して無いのに、これと比べてしまえば、緋村剣心以外のキャラクターが、地に足ついていないように見えてしまい、なんなら緋村剣心が浮いてしまっているようにも感じる。

それでも、破綻せずに作品が成り立っているのは、過去作も含めて、「最大の敵役」が、うまくはまっていたから。
第一作は、武田観柳(香川照之)・鵜堂刃衛(吉川晃司)
第二・三作は、志々雄真(藤原竜也)

そして、本作「るろうに剣心 最終章 THE FINAL」で、宿敵・雪代縁を演じるは、新田真剣佑!

私は、新田真剣佑になら抱かれても良いし、マッケンが望むなら、抱いても良い。アズ・マッケン・ライクで対応したいほど、憧れている。

アクションの半ば、マッケンが上着をばっと脱ぎ捨てると・・・。隆々とした両腕があらわになるシーンなんか、もぉー、サイッコーなの!

惜しむらくは、今回の2部作ストーリー構成が、マッケンに結構向かい風であること。

「るろうに剣心 最終章 THE FINAL」は、6/4公開予定の、「るろうに剣心 最終章 THE BEGINING」との2部作構成。

緋村剣心の過去とか、雪代縁が剣心をなんで恨んでいるのか。そのあたり、「THE FINAL」でも触れられるけれども、ドラマとして成り立つのは、「THE BEGINNING」を待たねばならない。

「THE BEGINING」の内容は、「THE FINAL」では、フラッシュバックといえば長すぎるし、感情移入する回想シーンとしては、短すぎる。そんな、帯に短し襷に長し的にしか触れられない。

「THE BEGINNING」を観ないことには、本作「THE FINAL」って、どうにも片手落ちな作品なのである。

結果、「THE FINAL」単体で観ると、マッケンの雪代縁の魅力が全然伝わってこない!

大好きな姉を、緋村剣心に奪われ、更に殺されてしまうという、恨み。天誅ならぬ「人誅」に至るまでの、深く粘着質な恨み。
本作だけだと、そのあたりが端折られすぎていて、ただのシスコンマッチョにしか見えない。

計画がうまくいっていると、「ねえさん・・・」
邪魔が入ると、「ねえさんんん!」
神谷薫(武井咲)に姉を思い出してしまい、悶ながら「ねえさん、、、ねえさん、、、」

前作の志々雄真の見事な漢っぷりと比較すると、なよなよしていてめんどくさい。

というか本来、原作漫画でも、剣術や敵の強さとしては、前作の志々雄真が強さとしては最強。
雪代縁ってのは、
一芸に秀でた仲間たちに、剣心本人ではなく、周囲を嫌らしく襲わせるという、精神追い詰め型

自分が戦うときには、見慣れない剣術スタイル(日本の剣術と大陸の技術の融合)で翻弄しつつ、最終的には道徳的優位を盾に、緋村剣心を追い詰めていくという敵だったのでした。

ただ、前回語ったように、雪代縁の「同志」である仲間たちは、その一芸を奪われているので、ただのちょっとだけ強い奴ら。
それに、雪代縁の最大の武器「道徳的優位」も、映画の構成上はいまいちわかり辛く、彼自身も結局真正面から戦ってしまうので、持ち味が活かせてないように思います。

ほぼ余談ですが、雪代縁の「同志」のひとりである、鯨波兵庫が、私はとても好きだった。
隻腕の巨人。自称「武身合体」。
片腕にアームストロング砲やグレネードランチャーを装着して戦う、イカレ武士崩れ。

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食事をサービスしてくれた定食屋に、お礼を言ったその直後、アームストロング砲で砲撃し粉微塵にするという、逆恨み爆発な狂人っぷり。最高の咬ませ犬である。

詳しくは映画を観ていただきたいですが、再三申し上げたような弱体化の煽りをうけ、何がしたいのかよくわからん奴に成り下がってしまっていました。

とか言いつつ、絶対次作である、「るろうに剣心 最終章 THE BEGINING」も観ます。
本来、2つでひとつな、2部構成。

予告編を見た感じ、「X-MEN」における「「ローガン」のように、血しぶきアリなハードモードのようで、期待が膨らむ。
登場する敵役たちも、「比較的」並の人間レベルなので、今までの中で、一番「実写化」と「映像化」のバランスがとれているかもしれない。

緊急事態宣言が終わって、映画館に行けるようになったら、ぜひ。

なんだかんだ言いましたが、好きな映画シリーズです。過去作好きは、特に気にいると思います。

しかしあれですね。

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