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映画評「シャン・チー/テン・リングスの伝説」

「シャン・チー/テン・リングスの伝説」

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私の自慢の一つは、2008年の「アイアンマン」から、つい先日の「ブラック・ウィドウ」と本作「シャン・チー」まで、マーベル映画全26作品をすべて映画館で観賞しているということであります。(ドラマシリーズも全部見てるけどな!)

ということは、単純計算で、26作×1,800円=¥46,800は費やしている。
しかし、たぶん製作費換算すれば、26×100億=2,600億はどう少なく見積もってもかかっているはずなので・・・。
安い。
こんだけ長く楽しませてもらって、5万円くらいしか使ってないなんて。
安い。

そのマーベル映画シリーズも、「アベンジャーズ/エンドゲーム」で行くところまで行き切った感じがある。
サノス - 宇宙ゴリラ魔人ー と死力を尽くした戦いを繰り広げた結果、宇宙の生命の半分を救い、ということは全宇宙の生命と関係する物語。ということにになったのである。

そんなマーベル映画の最新作。
純粋な新ヒーロー登場ものとしては、2019年の「キャプテン・マーベル」以来。
さて、今度はどんな強者が仲間に加わってくれるんだろうと思いきや・・・

今回は、「カンフーの達人」だった。

ぶっちゃけ、「アベンジャーズ」にはいてもいなくても同じくらいの戦力な気がするが、こういう層の厚みが、マーベル映画シリーズの面白味である。

マーベル映画ファンとしては、当然、早速先週土曜日には見に行ったのですが、、、


※あ、ネタバレそれなりにします


この1週間近く、それなりに考えていたのです。
そんなわけないよな、、、俺が悪いのかな、、、何か見落としただろうか、、、。

でも、特に気が晴れなかったので言っちゃうと、個人的には、そんなに面白くなかったんですよねぇ・・・。

見どころの一つである、序盤中盤のカンフーシーン。
バスの車内でカンフー。香港のビル、吹きさらしな竹の足場の上でカンフー。
楽しい。
もろにジャッキーチェンで楽しい。
が、香港映画の楽しさって、危うさと表裏一体だったわけで、「香港映画なら撮影中に人が死んでも気にしなそう」という偏見ベースで、すれすれなアクションに魅了されていたのである。
格闘クオリティは高いんだけど、CG合成もばっちりされてるし、安心・安全な撮影を心がけているはずなので、あんまりワクワクしない。
あと、そのカンフーてのも、唯一無二の強さってより、雑兵軍団ナンバー2には普通に負けそうな程度の仕上がりなのである。
「カンフーの達人」改め、「カンフーの達人『級』※当社比」くらいの強さ。

重大な問題はですね、今回の主人公の独自アイテムである、「テン・リングス」。
波動を打てたり、飛んで行ったり、足場にもなったりする、左右5個ずつの魔法の腕輪。
もともとはシャン・チーの親父(トニーレオン)のものだったんだが、結局はシャン・チーのものになって戦いを繰り広げるのですが、

この「テン・リングス」てのが、いったいどんな歴史背景があるものなのか、まったく説明がない。
誰が作ってるのか。何で出来てるのか。能力は。弱点は。
謎に包まれたまま、映画は終わる。

これが、「シャン・チー」って登場人物を好きになるには、もうちょっと時間がかかりそうなポイントで、
「Made by 俺」なアイアンマン・スパイダーマン
「俺の、大切な宝物!」なキャプテン・アメリカやソー

と比べていくと、どうしても思い入れが生まれない。

なんかよくわからん武器を、謎に覚醒した主人公が使いこなして、強いのか弱いのかよくわからん必殺技で、敵を倒す。
カタルシスに欠けるぞ。

でも、今回の悪役と言って良いだろう、主人公の親父トニーレオンが、東洋系の寡黙だが内に秘めた野望を燃やすおっちゃんを演じてて、それは凄く良い!

~シャン・チーの親父 = 「シュー・ウェンウー/マンダリンと呼ばれた男」~

魔法の腕輪により、1000年の寿命を与えられた男。
かつてはこの世のすべてを手に入れようと、腕輪とともに、東へ西へ、戦いに明け暮れた。
時に現代。
虚しさすら感じなくなってきたそんな時、ある女性と運命的な出会いをし、恋に落ち、子どもにも恵まれ、家族が出来た。
腕輪はもう要らない。
私は、愛する者たちと共に、限りある時間を過ごしていきたいのだ。
しかし、1000年の悪行は容易には振り払えず、妻は殺されてしまう。
絶望し、再び腕輪を手にする男。
闇の世界に戻ってしまった男は、子どもたちとは疎遠になり、またしても一人ぼっちになってしまう。
肥大する組織とうらはらに、ひとりぼっちな日々。
そんなある日、男に腕輪が囁く。
「お前の女は死んでいない。囚われているだけだ。」
腕輪の魔力に魅入られた男は、促されるままに、闇の門の封印を破ることを決意する。
それが、魔物からのまやかしであることに、彼が気付かないはずもないのに・・・

ええ話や・・・。

話の展開としてすごいのは、上記の私の長々とした文章に書いた展開が、映画内で全部説明されてはない、ということである。
印象的なワンカットたちと、トニー・レオンのたたずまいでそれを伝えていく。
こいつを主人公にしたほうが楽しそうだ。そういうキャラが脇にいる面白さも捨てがたいし、まぁこれくらいのほうが良い匙加減なのか、、、と考えることにするけどさ。

というわけで。

言っちゃえば、
・カンフーは達人未満だし
・使ってる武器はいったい何なのかよくわからんし
・親父のほうが魅力的だし

ということで、キャラ萌えとしては、少し劣ってしまう、新ヒーロー「シャン・チー」。

これからのマーベル映画シリーズの要になることは間違いないので、今後に期待したい。きみ、もっとがんばりたまえ。


追伸
本作、ハリウッド映画に珍しく、主人公は中国系アメリカ人だし、登場人物もほぼ全員アジア系。
主人公も、その相棒も、世間一般的な美男美女ってわけでは・・・ない。
筋骨隆々なイケメンアジア人でもないし、たぶん25歳くらいの設定なのに若々しくもない。相棒の幼馴染の女性も・・・まぁそんな感じ。

そんな中、「シャン・チー」を褒めてる人に、

昨今のルッキズムに侵されている人には、違和感あるかもしれないけどぉ~
私みたいなぁ~、ルッキズムから脱却した進歩的な人間にはぁー、とっても魅力的に見えましたけどねぇ

みたいな文章書いてる、ロサンゼルス在住のライターがいて、

むしろ失礼だろ!

と思いました。

追伸2

やっぱり、トニー・レオンがべらぼうに上手い映画だったなぁ。
こういうおじさんになりたい。

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